【税理士試験】「守・破・離」で合格! マネから始める必勝パターン


※ 本記事は、会計人コース2019年11月号「「守・破・離」で合格!  マネから始める必勝パターン」を編集部で再構成したものです。

税理士 畠山 亮洋

はじめに

税理士試験の勉強は、会計学や税法など専門的な内容を習得していかなければなりません。そのため、最初から自己流で勉強すると、すぐに行き詰まります。一方で、テキストや問題集に書いてあることを暗記しても、本試験では通用しません。試験に合格するためには、問題の解き方やルールを覚えたうえで、自己流の必勝パターンを完成させる必要があります。

つまり茶道や武道などでいう「守破離(しゅ・は・り)」です。

1.守る:基本をそっくりそのまま真似する

2.破る:基本をアレンジして自己流の方法を試す


3.離れる:自己流の方法を取り入れ必勝パターンを完成させる

最初は、徹底的に真似をします。主にテキストの内容、問題集の模範解答、講師の解き方、合格者や成績優秀者の解き方などです。自己流の考えは一旦置いて、基本の解き方や考え方を素直に真似して受け入れるようにします。そうすれば、答えにたどり着けるようになります。

基本をそっくりそのまま真似して答えにたどり着けるようになったら、自分の考えを取り入れはじめます。自分に合っている方法、自分にとって確実な方法、自分にとって効率のよい方法を模索します。

最後に、自己流の方法を何回も何回も繰り返し訓練することで「必勝パターン」を確立します。勉強方法や問題の解き方はたくさんありますが、大事なことはいかにして自分のものにするかということです。

勉強ができる人の真似をして型を身につける

私の税理士試験1年目は簿記論、財務諸表論、消費税法の3科目受験でした。1月から勉強を始めたというのもあり、1年目が一番大変でした。勉強方法もよくわからず、これでいいのかと疑問に思いつつ、ひたすら問題集を解いていました。問題集を何回も解いていると、当然同じ問題なら解けるようにはなります。私はこれを「できる」と勘違いしていました。しかし、答案練習期で「できない」ことが露呈します。

「解いたことがある問題なら解けるけど、解いたことがない問題は解けない」

税理士試験の勉強をしていてつまずいた瞬間でした。問題集ばかりやってきたのがいけなかったと思い、今度はテキストをひたすら読みますが一向に点数は上がらず、不合格確実ラインにいました。特に簿記論は壊滅的でした。

受験1年目は大原の全日制に通っていたのですが、そのクラスには、同じ時期に勉強を始めて、同じテキストを読んで、同じ問題集を解いているのに、抜群にできる成績優秀者たちがいました。

思い切って、どうやって問題を解いているのか聞いたところ、簿記論の計算用紙を見せてもらえました。これに衝撃を受けました。主にT勘定を使って問題を解いていて、計算用紙がキレイにまとまっていたのです。集計すれば自己採点も完璧にできるくらいの計算用紙だったのです。もしやと思い、他の成績優秀者にもお願いして計算用紙を見せてもらうと、全員がT勘定を多用して計算用紙がキレイにまとまっていたのです。私の計算用紙はというと、断片的に数字をなぐり書きしているので、どこに何を書いているのかわからない状態でした。

早速、私も真似をしてT勘定を使おうとしましたが、うまく使えませんでした。T勘定とは仕訳をまとめた図のことです。T勘定をうまく使えないということは、仕訳が切れず、簿記の仕組みを理解していないということになります。成績優秀者と比較することで、私は簿記を理解していないと気づくことができました。そして、この発見を機に勉強の取り組み方が変わりました。テキストや問題集に書いてあることを漫然と覚えるのではなく、どの問題もひたすらT勘定を使って問題を解くようにしました。T勘定を使って解くということは、簿記を理解することにつながると気づいたからです。

できる人の真似をしてから、「なぜT勘定を使うのか」「どうやったら使えるか」「自分にしっくりくるか」などを考えるようになりました。

こうして、自分の頭で考え自分の言葉に置き換えるという過程を経て、はじめて使える知識として自らの血肉となります。これが勉強の本質なのでしょう。

そして、ただ答えを合わせるのではなく「どうしてこの答えになるのかという背景」を考えながら勉強するようになりました。これが理解するということだと思います。

この「理解する」ことを疎かにして、ただ単に答えを合わせることを目的に勉強してしまうと、同じことを問われている問題でも表現が違うだけで解けなくなります。答案練習期で散々な目にあった私のように。そして、もちろん本試験は、いつも勉強しているテキストや問題集とは違う表現で問われます。

私の勉強は、成績優秀者の真似をすることによって、「答えを合わせることが目的の勉強」から「理解することが目的の勉強」に変わりました。

結果として成績はどんどん上がっていきました。

私の場合、勉強ができるようになったのは、勉強ができる人の真似をしたのが一番の近道でした。

自分に合っている解き方や勉強方法を見つける

基本を身につけたら、次は自分に合っている解き方や勉強方法を見つけましょう。

自分に合っている解き方や勉強方法は個人によって異なりますので、こればかりは色々な方法を試してみるしかありません。残念ながら、万人向けの「これだけやればOK」みたいな必勝法はありません。自分に合っている解き方や方法といっても、奇抜なことをする必要はなく、王道を自分なりにカスタマイズするのがいいでしょう。

私は簿記論の場合、成績優秀者の真似をして始めたT勘定が一番しっくりきました。T勘定を使わないで問題用紙に直接書き込んでいく方法もあります。こちらのほうが早く解けるのですが、私には合いませんでした。かなりの確率で集計ミスが起きました。時間がかかっても確実に集計していく方法のほうが合っていたようです。

他にも

「問題の解き方」
「計算用紙の使い方」
「最初に行う確認事項(単位や会計期間などのチェックなど)」
「第1問・第2問・第3問の解答順序」
「各問に費やす時間」
「素読みに費やす時間」
「時間がかからない問題・得意な問題の分析」
「時間がかかりやすい問題・苦手な問題の分析」
「時間をかけてはいけない問題の分析」

など自分に合っている方法、自分にとって確実な方法、自分にとって効率のよい方法を、色々と試しながら探しました。税理士試験は勉強期間が長い試験です。自分に合っているかというのを日々考えながら正しい方向に努力しましょう。

自分の方法を確立する

自分に合っている方法が見つかったら、あとはひたすら練習あるのみです。私は簿記論の場合、色々と試した結果、T勘定が一番合っていたので、どんな問題でもT勘定を使って解くようにしました。T勘定を使う必要がなくても、ひたすらT勘定を使って解いているうちに強力な武器になりました。どこに何を書いているのかわからなかった計算用紙の使い方も、自分なりの方法を決めて何度も繰り返し練習しました。

「どんな問題でも同じように解く」ことを繰り返すことで、「反射で解く」「体が覚えている」状態まで仕上げます。こうした勉強の積み上げにより、自分だけの必勝パターンが確立します。

しかし、勉強方法や解き方などの技術がどんなに優れていても、それだけでは合格することはできません。本試験で合格点を獲るためには、心・技・体すべて必要です。

私は1回目の試験は、心の準備が不十分でした。2回目の試験は体の準備が不十分でした。3回目以降でようやく心・技・体すべて整えて勝負できるようになりました。それでも、1年に1回という制限がかかる試験で最高のパフォーマンスをするのは非常に難しいことでした。

本試験を冷静な状態で受験できればいいのですが、試験中は極限状態です。本試験で100%の力を出すのはまず不可能と思ったほうがいいでしょう。そのような状況でも一定の精神状態を保つため、自分なりのメンタルコントロール術を準備しておくと大きなアドバンテージとなります。私は、「試験当日は何も勉強しない」「周りは一切見ない」「ボックスブリージングで呼吸を整える」などでメンタルコントロールをしていました。これも自分だけの必勝パターンのひとつです。

「どんな問題でも同じように解く」だけでなく「どんな状況でも同じように解く」ことができるように、自分だけの方法を確立しましょう。

正しい方向に正しい量の努力をする

正しい方向に正しい量の努力をする。それこそが合格への近道です。

私の場合、簿記の仕組みを理解しないまま、ひたすら問題集を解いていた時期、1日15時間以上勉強していましたが、結果が伴っていませんでした。それは、正しい方向に努力をしていなかったということです。どれだけ時間をかけても、結果が伴わなければ意味がありません。そこで、私は正しい方向を模索し、自分に合っている勉強方法を見つけることができました。

そして、勉強方法だけ覚えても不十分です。合格者の多くは「反射で解く」「体が覚えている」状態まで勉強しています。そうした勉強の量を積み上げていくことにより、合格にたどり着けるのだと思います。

勉強に魔法はないし、一発逆転もありません。コツコツ積み重ねた人だけが自分の解き方や勉強方法を確立し、それが必勝パターンとなるのでしょう。

(執筆者紹介)
畠山 亮洋(はたけやま・あきひろ)
フリーランスの税理士。食品メーカーで営業、税理士法人で管理職を務めたのち独立。
現在は、主に若手ベンチャー企業と外資系企業のサポートに従事。税務業務のみならず、業務フローの構築や、会社の仕組みづくりなど、クライアントと一緒に築き上げる仕事に力を入れている。
趣味はイラストとウェイトトレーニング。マッチョ大会に出ようとしており日々マッチョ化。

※ 本記事は、会計人コース2018年9月号「「守・破・離」で合格! マネから始める必勝パターン」を編集部で再構成したものです。該当号はこちらからお買い求めいただけます。


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