合格後の実務にも活きる! 税法受験生にすすめたい『法規通達集』の使い方


加藤久也
(税理士/名城大学大学院非常勤講師)

【編集部】
税理士試験の税法科目受験生の皆さんは、『法規通達集』(中央経済社刊行)をご存じでしょうか。
ちまたでは「黄色い本」などとよばれている、その名のとおり各税法の「法規通達集」です。
こちら、「なんとなく聞いたことはある」「仕事で目を通したことはある」という方は多くいらっしゃると思いますが、受験勉強で使っている方はそこまで多くないのではないでしょうか。
ただ、法規通達集を「使ったほうがいいですか?」「どのように読めばいいですか?」といった声も編集部に寄せられます。
そこで今回、大手専門学校で受験指導のご経験もある税理士の加藤 久也先生に、『法規通達集』の必要性や使い方について、解説していただきました。

こんにちは、税理士の加藤 久也です。

私が税理士試験の受験生だった頃は、各税法の『法規通達集』は勉強の必須アイテムでした。

それがいつからか、『法規通達集』をまったく参照しない受験生に出会うようになり、「それは英和辞書なしに英語を学ぶようなものではないか」と、衝撃を受けました。

本記事では、私の経験も踏まえながら、受験勉強における『法規通達集』の活かし方を紹介します。

1.『法規通達集』とは

『法規通達集』には、その税法に関連する法令や通達などが多く掲載されています。

以下に、『消費税法規通達集』を題材に、目次の一部を紹介します。

受験に必要な法令および通達も、すべて網羅しています。

消費税法
消費税法の別表第三等に関する法令
消費税法施行令
消費税法施行規則
消費税法関係告示
消費税法基本通達
消費税申告書様式等
消費税法等の関係取扱通達等
租税特別措置法(抄)
……
国税通則法(抄)
……
◆中央経済社「国税の法規通達集シリーズ」

2.『法規通達集』の3つの使いドコロ

私は税法科目の受験勉強を始めるとき、その税法の『法規通達集』を購入し、常に持ち歩いていました。

先ほど、『法規通達集』を参照しない勉強を「英和辞書なしに英語を学ぶようなものではないか」といいましたが、『法規通達集』は英和辞書と違い、「わからないことを調べる」といった使い方はしません。

それでは、どこで『法規通達集』を活用するのか、具体的に解説していきます。

(1)教科書や問題集に条文番号が登場したら

教科書や問題集を使って勉強しているときに条文番号を目にしたら、その条文を『法規通達集』で確認してみましょう。

このとき、マーカーで色をつけていきます。カッコの部分を塗らない、または別の色にしておくことで、あとから読みやすくなります。また、覚えにくい条文には、特別な印をつけておくとよいでしょう。

私は受験生時代、専門学校の授業を受けながらこの作業をしていました。

◆マーカーをひいた例

この作業を行うと、教科書や問題集の記述に条文とほぼ同じ部分があることに気づくでしょう。

教科書や問題集は条文をもとに再構成されているため、ほぼ同じ部分があるのは当たり前です。

「それなら、わざわざ条文を読む必要はないのではないか」と思う方もいるかもしれません。

しかし、ほぼ同じ記述ということは、それだけ重要ということであり、繰り返し読むことは無駄にはなりません。

むしろ、教科書や問題集だけではなく『法規通達集』でもう一度、条文を確認できることに意義があると考えましょう。

(2)理論が覚えられないときに

理論問題集などを使って理論暗記をしていると、「覚えにくい」と感じることがあると思います。そんなときは、『法規通達集』で条文を確認しましょう。

理論問題集は受験生が覚えやすいように工夫されていますが、それがかえって理論を覚えにくくしていることもあります。

そのような場合は、条文どおりに覚えるほうが効果的です。本試験では、条文どおりに記述した答案がバツになることはありません。

(3)ときどき読み返してみる

折に触れ、パラパラと『法規通達集』を眺めてみましょう。

⑴で『法規通達集』がマーカーで埋められていき、達成感が生まれることと思います。努力を続けるためには、「よく頑張った」と思えるように、自分の努力の成果を目に見えるかたちにすることも大切です。

逆に、マーカーで塗られていない部分も気になってくるでしょう。気になったら、その部分を読んでください。

それにより、新たな発見をしたり、1回目に読んだときとは違ったことに気づく場合もあります。すべてが1冊にまとまっているので、気になることは『法規通達集』で確認しましょう。

また、『法規通達集』を読んでいるうちに、上下左右の条文に目がいき、ついつい読んでしまうこともあると思います。『法規通達集』では、関連項目についてすぐ確認できるので、知識を1つひとつ積み上げることができます。

3.「条文を確認する習慣」を受験生時代に身につけよう

税理士試験の受験勉強で「条文を確認する習慣」をつけると、税理士の業務にも役立ちます。

実務を行ううえで疑問が生じたとき、私もいきなり条文を確認することはしません。税務通達、国税庁が公表するQ&A、実務書などを参照し、法令の要件とその適用について検討します。

たしかに税務通達、国税庁が公表するQ&A、実務書などはわかりやすいです。ただ、記載されている事例と事実関係が異なることもあります。そのように、疑義が残るときは必ず法令を確認するようにしています。

このとき、受験勉強で「条文を確認する習慣」を身につけていれば、長文で書かれた難解な条文にも抵抗がなくなり、マークしながら確認できるようになります。

税理士試験合格はゴールではなくスタートです。合格するための努力は、無駄なく税理士としての仕事に役立つのです。

おわりに

『法規通達集』は合格のための必須ツールです。私はそう断言します。

試験に合格するという目的を達成するためには、専門学校の「理論問題集」を使って理論を暗記すれば十分だ、という方もいるかもしれません。

しかし、受験勉強のときから条文に触れることは、試験に合格することだけではなく、税理士になってからの業務に役立ちます。

ぜひ受験勉強で『法規通達集』を活用していきましょう!

<執筆者紹介>
加藤 久也(かとう・ひさや)

税理士/名城大学大学院非常勤講師(消費税法担当)
1991年、富山大学理学部卒。1991年~1995年、株式会社日立製作所に勤務。1998年、税理士試験合格。2000年、税理士登録。2002年、愛知県春日井市に加藤久也税理士事務所開業。税理士業のほか、1998年~2019年に名古屋大原学園、2016年より名城大学、2019年より愛知淑徳大学にて非常勤講師を務める。2017年より東海税理士会税務研究所研究員、2021年より同研究所副所長に就任。2019年より日本税法学会所属。著書に『ワークフロー式消費税[軽減税率]申告書作成の実務』(共著、日本法令)がある。


受験生にオススメの『法規通達集』

『消費税法規通達集〈令和3年8月1日現在〉』

編 者:日本税理士会連合会・中央経済社
定 価:3,740円(税込)
発行日:2021/09/09
A5判/1024頁
ISBN:978-4-502-83125-6
ご購入はこちらから

『法人税法規集〈令和3年7月1日現在〉』

編 者:日本税理士会連合会・中央経済社
定 価:6,380円(税込)
発行日:2021/09/09
A5判/2448頁
ISBN:978-4-502-83066-2
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『所得税法規集〈令和3年7月1日現在〉』

編 者:日本税理士会連合会・中央経済社
定 価:6,160円(税込)
発行日:2021/08/24
A5判/2016頁
ISBN:978-4-502-83045-7
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『相続税法規通達集〈令和3年7月1日現在〉』

編 者:日本税理士会連合会・中央経済社
定 価:4,620円(税込)
発行日:2021/08/05
A5判/1296頁
ISBN:978-4-502-83087-7
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