公認会計士 菊池諒介
はじめまして! 公認会計士の菊池諒介と申します。私は本業で生命保険のライフプランナーをしながら、公認会計士の社会貢献活動を推進するNPO法人「Accountability for Change」(以下、AFC)の理事を務めております。
「会計士の社会貢献活動を推進するNPO法人」と聞くと、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか? また、「プロボノ」という言葉を聞いたことはありますか?
プロボノとは「職務上の専門的な知識や経験、技能を、社会貢献のために無償もしくはわずかな報酬で提供するボランティア活動」のことで、私たちのNPOでは、会計人材としての専門知識や経験を活かして、プロボノをはじめとした社会貢献活動を推進しています。
そう聞くと、「超絶意識の高い聖人君子の集まりなのでは⁉」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、私たちはしっかり想いを持ちながらも、私たち自身が楽しみながら活動をしています。
「プロボノ」を経験することで、会計士にはどんなメリットがあるの?
もし、社会課題やソーシャルセクターに対して、「イメージが沸かない」「ピンとこない」といった会計士の方々であっても、プロボノ活動を通じて多くのメリットが得られると私は考えています。
ソーシャルセクターは上場企業等と比較すると小規模な組織がほとんどですが、年商数千万〜数億円規模で活動を拡大している団体もどんどん増えてきています。
こうした団体の経営陣と信頼関係をベースにつながり、社会課題の現場に触れ、自己の専門能力を駆使して100%相手のために支援を行うことは貴重な経験となるでしょう。
何より、価値提供に対して心からの「ありがとう」は最高の報酬です。
また私自身、ソーシャルセクターの経営者の方々と接する機会をいただいて驚いたことが、「社会課題解決に対する経営陣の熱量」と、「ビジネスパーソンとしてのレベルの高さ」です。
圧倒的な熱量で極めて戦略的に社会課題解決に取り組む社会起業家の方々と接することで、会計士側がプロボノで提供するもの以上の学びが得られることも多いと思います。
公認会計士試験に合格すると、多くの方がファーストキャリアとして監査法人へ就職しますが、その後のキャリア設計の自由度が非常に高いことが会計士の大きな魅力です。
しかし、その幅広さゆえに自身のキャリア選択に悩んでしまう方も少なくありません。
そんな会計士業界において、早い段階から高い志を持つ同業の先輩や社会起業家の方々とつながりを持ち、活動を共にすることは大きなメリットになり得ます。
社会課題やソーシャルセクターに興味関心をお持ちの方はもちろん、「自分の視野を広めたい」「何となく刺激が欲しい」「社外のつながりを持ちたい」といった皆さんにも、ぜひ「会計士プロボノ」を体験していただきたいです。
「会計士プロボノ」って、具体的にどんな支援をしてるの?
会計士プロボノとして、具体的には財務計画の策定や会計ソフトの導入支援、支援先NPOの監事就任、認定NPO法人(公益性や規模など一定の要件を満たすNPOに認められた制度。寄付者が税制優遇を受けられるなどのメリットがあります)取得の支援などを行っています。
AFCは20〜30代の公認会計士が中心となっていますが、若手であっても「体系的な会計知識を学んでいる」という点で、NPOなどのソーシャルセクターに貢献できることはたくさんあります。
修了考査を終えて、さらなるステップアップを目指してAFCに参画してくれた方々はもちろんのこと、合格1〜3年目の準会員世代も、積極的にプロボノ活動に取り組んでいます。なかには、大学3年次に合格して、社会人になる前から活躍してくれているメンバーも。
加えて、はじめてのプロボノ現場には、先輩メンバーと同行で関わるなど、安心してチャレンジできる環境を整えています。
AFCでは、監査法人に勤める会計士はもちろん、私のような事業会社勤務の会計士など、多様なキャリアを歩む会計士たちがプロボノ活動をしているため、さまざまな経歴の仲間と協働できることも醍醐味の1つです。
プロボノにチャレンジするにあたり、大切なことはスキルや年次よりも、「主体的に取り組む姿勢」や「報・連・相(報告・連絡・相談)をしっかりする」といった人間性であると私たちは考えています。
「忙しくて本業と両立できるか心配…」という声を聞くことも多いですが、関与度合いは個人の裁量で調整できますし、似たような境遇で上手に両立している既存メンバーに相談してみるのも良いかもしれません。
「会計士プロボノ」活動をしてみませんか?
AFCのミッションは「専門性を活かした社会貢献活動を通じて、ソーシャルセクターの健全な発展に寄与するとともに、次世代の会計プロフェッショナルの育成を目指す」ことです。
国連の提唱しているSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)をはじめ、資本主義偏重で発展してきた現代社会に、警鐘を鳴らす動きが着実に拡大してきています。
社会課題に取り組む起業家や専門家も珍しくなくなってきていますが、世界中から投資マネーや優秀なビジネスマンが流れ込むビジネスセクターと異なり、こうしたソーシャルセクターが発展していくためのマネーや人材といったリソースはまだまだ充分とは言えません。
「素晴らしい活動をしているのに、資金力に乏しく拡大できていない」「会計報告や財務計画が脆弱なため、資金を集めることができない」等々の課題に対して、私たちはまず、「専門性を活かしたボランティア活動(プロボノ)」として、会計人材に関わってもらうことを推奨しています。
また、AFC独自の企画として、支援先団体への見学ツアーや、社会課題に取り組む会計士たち同士のネットワーキングを目的としたイベントや研修等の企画も行っています。
AFCでは、公認会計士向けに団体説明会や既存メンバーと交流できる機会やイベントを定期的に開催しています。
ご興味を持っていただいた方はぜひ、団体HP(https://www.accountability4change.com)をチェックしていただけたら嬉しいです。
<執筆者紹介>
菊池諒介(きくち りょうすけ)
プルデンシャル生命保険株式会社 東京第三支社
コンサルティング・ライフプランナー
公認会計士
1級ファイナンシャルプランニング技能士
2010年公認会計士試験合格。約3年間の会計事務所勤務を経て、「自身の関わる人・企業のお金の不安や問題を解消したい」という想いで2014年、プルデンシャル生命にライフプランナーとして入社。MDRT(下記参照)5年連続入会の他、社長杯コンテスト入賞や長期継続率特別表彰など、社内表彰多数。2016年より会計士の社会貢献活動を推進するNPO法人Accountability for Change理事に就任。趣味はフットサル、カクテル作り、カラオケなど。
MDRTとは
1927年に発足したMillion Dollar Round Table(MDRT)は、卓越した生命保険・金融プロフェッショナルの組織です。世界中の生命保険および金融サービスの専門家が所属するグローバルな独立した組織として、500社、70カ国で会員が活躍しています。MDRT会員は、卓越した専門知識、厳格な倫理的行動、優れた顧客サービスを提供しています。また、生命保険および金融サービス事業における最高水準として世界中で認知されています。