【公認会計士試験 短答式】本番で最高のパフォーマンスができる! 超直前期の過ごし方


井上 修
(福岡大学准教授・公認会計士)

いよいよ令和4年公認会計士試験(第Ⅰ回短答式試験)が近づいてきました。

短答式試験は丸一日をかけた長い戦いですが、これまでの勉強時間と比べると「ほんの一瞬の出来事」です。

公認会計士試験は純粋な競争試験。いくら十分な知識が備わっていたとしても、その力をうまく発揮できなければ、期待する結果は得られません。これはとても怖いことです。

勉強不足で合格できなかった場合は、「次に向けてやるべきこと」がはっきりしているので、気持ちもすぐに切り替えることができます。

しかし、「ちょっとしたミス」でこれまでの勉強時間を棒に振ってしまった場合は、一生悔いが残りかねません。

だからこそ、これからの超直前期(本番2~1週間前)は、「試験当日に最高のパフォーマンスをすること」を目標に過ごすようにしましょう。

1.無理な追い込みは厳禁!

当然のことのように思えるかもしれませんが、これから試験当日までに重要なことの1つが「体調管理」です。

公認会計士試験の場合、超直前期に極端な追い込みをすることは禁物です。

もちろん、「無理をしてでも追い込まないといけない!」という方もいるでしょうし、たった1日の試験くらい徹夜しても乗り切れるという話もあるかもしれません。

ただ、合格するためには、「もう勝負は決まっている」と考えることも大切です。

決して、「諦めるのか?」という話ではありません。

長い時間をかけて勉強してきたのであれば、合格に必要な知識は蓄積されています。

超直前期は、「これまで勉強したことの強化」と、「暗記すれば解ける論点の確認」に徹しましょう。

2.私が受験生時代にやったこと

⑴ 間違いノートを見直す

本試験でパフォーマンスを最大化するためには、「ケアレスミスをなくすこと」が何よりも重要です。

とはいえ、勝手にケアレスミスがなくなることもないですし、本試験では慎重になるから大丈夫なんていうこともありません。

どのようなケアレスミスをしてしまうのかをはっきりさせ、それを常に意識していないと未然に防ぐことはできないのです。

私は受験生時代、ノートにケアレスミスを記録していたのですが、毎日それを見ては、1つひとつケアレスミスを読み上げていました。特に超直前期は、ケアレスミスを見直す時間を多く取るようにしました。

⑵ 本番と同じスケジュールで生活する

超直前期は極力、本番のスケジュールを意識して過ごしていました。

1週間前になったら、受験科目をその試験時間分、「本番」だと思って集中して勉強します。

これは特に問題演習である必要はなく、テキストを読むなどでもかまいません。

ここで身につけるのは、「本番で集中する」という姿勢です。

時間を計り、そのなかで集中力を最高潮にする練習をすることで、モチベーションも大きく上がりました。

このとき、「何をどれだけ食べたり飲んだりすれば集中できるのか」も試し、試験当日の食べ物や飲み物、摂取する量やタイミングも決めていました。そうしたことで、すべての神経を本試験に充てることができたと思います。

そして2日前になったら、過去問を使って本番をシミュレーションしました。食べ物や飲み物、時間配分、科目間の過ごし方など、決めておいたことを実践し、本番の雰囲気を一度体験することで大きな自信につなげていました。

⑶ 自己暗示する 

なんだかあやしい話(?)になってきましたが、私は毎日、鏡の前で自分の顔を見ながら、「俺はうかる、俺はうかる、俺はうかる・・・」と10回唱えていました。

言葉に力を込めて、夜寝るときも朝起きたときも、頻繁に唱えます。

私は、本番に向けてモチベーションや気持ちが勝手に高まるものではないと考えています。むしろ、どんどん不安になってモチベーションが下がることもあるでしょう。

そこで、意識的にこの「謎のおまじない」を自分自身に言いきかせていました。

3.問題を見切る「勇気」をもつ

自信をもつことは、精神的に落ち着くためだけではなく、本試験で適切なタイムマネジメント(時間配分)をするためにも重要です。

模擬試験や答案練習などで、タイムマネジメントの練習はたくさんやってきたでしょう。そのため、「第○問を△分で…」といった具体的な方法を述べるつもりはありません。

ここでお伝えしたいのは、「問題を見切る勇気をもってほしい」ということです。

これは、自信がないとなかなかできません。本番になると、一度とりかかった問題にどうしても熱く意地になってしまい、無駄に時間を使ってしまうことも多いです(結局、正解にもならないことも…)。

もし合格レベルにいるのであれば、自分ができない問題は周りも解けません。

ある程度解いたところで「難しい」と判断した問題には見切りをつけ、すばやく気持ちを切り替える必要があります。

しかし、自信がなければ、「他の人は解いているのではないか、これを解かないと合格しないのではないか」と考え、結果として時間を消費してしまいます。

なかなか解けない問題に時間を使うことは、本来解ける問題に使う時間をも犠牲にしています。

「自分に解けない問題は、他の人も解けない」と自信をもって、戦略的にタイムマネジメントをしてください。

4.新しい問題には挑戦しなくても大丈夫

とはいえ、自信はどうすればつくのでしょうか?

それは、「やる範囲を決めること」です。

公認会計士試験では膨大な試験範囲をカバーしなければなりません。しかし、人間の脳のキャパシティは限られているため、全範囲を完璧にして本試験に臨むことは絶対に不可能です。

そこで、超直前期には手元にある教材のみを使って勉強し、新しい問題には挑戦せず、これまでの学習内容の「確認」に徹してください。

私は、最後の最後までとっておいた「暗記すればいい論点」以外は、繰り返し使用してきた教材のみを使い、ひととおり解いたら物理的に遠ざけるなど、どんどん目の前から消していくようにしていました。

そうすると本試験前日には、手元にケアレスミスノートくらいしか残っておらず、「やるべきことはすべてやったんだな」と、実感をもつことができました。

「自信」とは抽象的なものです。それを目に見えるかたちにするためにも、意識的にゴールを決めるようにしましょう。

〈執筆者紹介〉
井上 修(いのうえ・しゅう)
福岡大学准教授・公認会計士
慶應義塾大学経済学部卒業。東北大学大学院経済学研究科専門職学位課程会計専門職専攻、同大学院経済学研究科博士後期課程修了。博士(経営学)。研究分野は、IFRSと日本基準の比較研究、特別損益項目に関する実証研究。福岡大学では「会計専門職プログラム」の指導を一任されている。当プログラムでは、現役の大学生が多数、公認会計士試験や税理士試験 簿記論・財務諸表論に在学中に合格を果たしている。本プログラムから2018年は10名、2019年は5名、2020年は6名が公認会計士試験に合格。


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