「大学院ルート+ミニ税法」から大手税理士法人へ! 就職活動や実務はどんな感じだった?


税理士試験の合格発表まであと少し。

合格発表を控えるなかで、また結果を受けてから「大学院進学」を考える方は例年少なくありません。

そんな大学院を目指すにあたっての不安として、「就職活動はどんな感じなのかな?」「実務でうまくやっていけるのかな?」という声が多くあります。

採用活動も活発になっていく時期なので、現役大学院生のなかにも気になっている方はいるかもしれませんね。

そこで今回、大学院修了後に大手税理士法人に就職されたMさんにお話を伺いました。

唯一受験した税法科目も比較的ボリュームの少ない「酒税法」だったというMさん。

大学院進学やミニ税法受験に関心のある方は必見です!

大学院+酒税法にチャレンジして税理士に!

――税理士試験に合格するまでのご経歴を教えてください。

Mさん 実は最初に勉強を始めたのは「公認会計士試験」でした。

2011年の秋、大学1年生のときに予備校の会計士講座に申し込みました。

ただ、すぐには合格することができず、大学3年生のとき(2013年)、力試しに税理士試験の簿記論・財務諸表論を受験してみたんです。

そうしたらビギナーズラックで簿記論に合格することができ、これをきっかけに「税理士」も将来の選択肢として視野に入れはじめました。

とはいえ、その後は財務諸表論になかなか合格できず、かといって公認会計士試験にも合格できず、「さてどうしたものか」と思っていたのですが、ちょうどアルバイトで勤めていた会計事務所に大学院を修了して税理士試験の科目免除を受ける方が就職されたんです。

その人に「大学院に進むのもいいと思うよ」と言われ、大学院ルートで税理士になることを考えるようになりました。

そのときにはすでに気持ちも会計士より税理士に向いていました。

というのも、アルバイト先の会計事務所は会計士の方が経営していたので、監査業務と税理士業務の両方を経験できたのですが、それぞれの業務を通して「会計士は自分には向いていないかもしれない」と感じていたんです。

どちらかというと会計士は会社から独立して意見を述べる立場ですが、税理士は会社に寄り沿ってアドバイスをする存在。

私にとっては、経営者の方や経理部の方と一緒に考えたり悩んだりするほうが向いているように感じました。

そこで、その人が通われていた大学院を紹介してもらい、2016年4月に入学しました。

そして大学院入学後、2年生のとき(2017年)に財務諸表論に合格し、修了した2018年に酒税法に合格しました。

――悩みに悩まれての今があるのですね。大学院生活と税理士試験の両立は大変ではなかったですか?

Mさん 私が通っていた大学院では、ある程度学生の状況を考慮してくれたので、そこまで大変なことはありませんでした。

受験する必要のない学生には、1年生から修士論文を書き進めるような指導をするのですが、受験を控えている人には直前期を除いて指導してくれます。

思っていたより理解があり、メリハリをつけて両立することができたと思います。

――それはよかったですね。税法科目は「酒税法」を受験されたのですね。受験者数が少ない科目だからこそ合格するのが難しいと聞きます。

Mさん そうですね。いわゆる「ミニ税法」といわれる科目ですが、100点を取るくらいの勢いがないと合格できないと思います。私も3回受験しました。

1年目は1月から勉強を始めたのですが、財務諸表論と並行していたため時間があまりとれず、不合格となりました。

2年目は1年目に追いつけなかった理論もしっかり覚え、自分でも手ごたえを感じていたのですが、不合格でした。自己採点では複数校の解答速報のボーダーラインを超えていたのですが…。

3年目に「自分がダメなら誰がうかるんだ!」というレベルまでもっていき、ようやく合格することができました。

酒税法も他の科目と同様に10%前後の合格率ですが受験者数自体が少ないので、そのぶん合格者も少ないんですよね。

就職活動のポイントは「入ってから自分の魅力をいかに発揮できるか」

――就職活動も大学院に通いながらされていたのでしょうか?

Mさん そうですね。酒税法の勉強と並行して就職活動をしました。

就職活動では、いわゆるBIG4といわれる税理士法人(PwC、デロイト トーマツ、KPMG、EY)も、中堅の税理士法人も、幅広く見るようにしていました。

説明会に行ったのはBIG4を含めると10社ほどです。

市販のノートで「就活ノート」を作り、説明会に行ったときに聞いた話や自分のアピールポイントなどをメモしていました。

◆就活ノート(説明会のメモ)

――BIG4から中堅まで幅広く見ていたということですが、そのなかでもBIG4を目指そうと思った経緯はありますか?

Mさん  はじめは「大学院で科目免除+ミニ税法」なので、どうせ受けても無駄だと思っていました。

ただ、大学院教授にBIG4でシニアマネージャーをされている先生がいて、「受験科目が酒税法だから採用しないわけではない、結局は「人」をみて採用しているから受けてみなよ」と言われたんです。

その言葉が自信となって、BIG4を真剣に目指そうと思いました。

――実際の就職活動はどうでしたか?

Mさん もちろん厳しい意見を言われる場面もありました。法人税法や消費税法の知識が重宝されるなか、受験科目が酒税法なので「ちゃんと実務でやっていける?」と心配されたこともあります。

ただ、そういった厳しい質問に「できない」と答えるだけではダメで、「入社してから勉強する」という意志を見せることが大切だと思います。

私は公認会計士試験を受験していた頃からコツコツと諦めずに続けることが自分の強みだと思っていたので、その力を活かして会社やクライアントのために頑張ることをアピールしました。

その結果、実際に内定をもらうことができたので、「受験科目や合格科目が何か」というよりは「入ってから自分の魅力をいかに発揮するか」を伝えられるかがポイントだと思います。

◆就活ノート(自己分析)

苦労はしたけれど、「ここに入ってよかった」

――実務に就かれた後に苦労することはありましたか?

Mさん 正直なところ、実務では結構な苦労がありました。

特に入社1年目は、先輩たちが話していることを聞いてもわからないことだらけ。あとから急いでネットを見て確認する、といった感じでした。

入社したばかりの頃に先輩に言われたのは、「月曜日から金曜日に働いて、土曜日は勉強しよう、日曜日に休む」ということです。

これは新人全員が言われているようなことだったのですが、私の場合は特に、休日を使ってでも勉強する必要がありました。

たしかに振り返ると、月曜日から金曜日にあった出来事のうち、自分がしっかり理解して対応できたことはそんなに多くなかったと思います。

受験していない科目の知識を実務に就いてから取り入れる大変さは、かなり実感しました。

――どのように勉強し、克服していったのでしょうか?

Mさん 働いてからは専門学校に通っていないので、ほぼ「独学」状態です。

そのため、法人税法を勉強しようにも、どこから手をつければいいのか…という悩みはありました。

ただ、下手に市販のテキストを読むより、個人的には条文そのものを読むほうがいいと思います。

テキストはわかりやすいのですが、講師の先生など誰かの解説があってこそ理解できる部分もあるからです。

改正があれば国税庁のホームページで解説も見れるので、それもあわせて読みながら、条文ベースで勉強していました。

条文を読むこと自体は、大学院で税法に関する修士論文を書く際に、その読み方を学んだので、あまり抵抗がなかったですね。

大学院に行くかどうか悩まれる方も多いと思いますが、大学院に進むことによって得る強さは、こういったことなのかなと思います。

――大学院のよさの1つですね! 最後に、もうすぐ採用活動も活発になる時期。会計業界への就職を目指す読者にメッセージをお願いします。

Mさん 会計事務所は入ってみないとわからない部分が多いです。特に規模が大きくなればなるほど、配属先によっても仕事や職場の雰囲気が変わってきます。

私自身は今も苦労することが多いですが、説明会で話を聞いたときより職場の風通しがよく、「ここに入ってよかった」と思うことが多いです。

これから就職活動をされる方のなかには、私のような経歴の方もいるかもしれませんが、興味のある会計事務所があるのであれば、まずはチャレンジしてみてほしいと思います。頑張ってください!

――励みになるメッセージをありがとうございました!


この記事を読んだ人にオススメ

河合塾KALS講師が教える 税理士になるための「大学院ルート」のいろは

【税理士試験科目免除】大学院教授が直伝! 3ステップで攻略する「研究計画書」

税理士受験生のための大学院体験記
① 息子の中学進学をサポートしながら、ハードな日々でも2回目の青春を謳歌♪
② 働きながら通信制を修了! 「早めの行動」と「積み重ね」が大学院を楽しむカギ☆
③ 在学中に第4子を妊娠! 家族総出で乗り切った2年間
④ “30歳で独立開業!” 夢を叶えるために選んだルート

もっと!大学院ルートを知りたいなら、こちらもオススメ☆

『会計人コースBOOKS 大学院ルートで税理士になる!』

会計人コース編集部・編
定 価:1,870円(税込)
発行日:2020/09/29
A5判/144頁
ISBN:978-4-502-36301-6

ご購入はこちらから


関連記事

ページ上部へ戻る