就職・転職活動を始めるなら今! 税理士業界の現状と“自分に合った職場”の見つけ方


キャリアコンサルタント 出川 雅人

税理士試験を受験された皆さん、お疲れ様でした。

試験が終わってゆっくりしたいとお考えでしょう。そう思われるのは当然です。

しかし、税理士業界へ就職や転職を考えている方は、すぐにアクションを起こされることをお勧めします。税理士業界で求人数がピークを迎えるのが、税理士試験の直後なのです。

ところが税理士業界の就職情報は必ずしも多くありません。そこで、税理士業界への就職・転職を目指される方のために最新の情報をお伝えしたいと思います。

【税理士業界の現状は?】大規模法人の主軸は「コンサルティング」に

医療業界には、総合病院もあれば、眼科、耳鼻科、脳外科などの専門分野に特化した病院もあります。また、地域に密着したクリニックもあります。同じように税理士業界も規模や仕事内容に大きな差があります。

まず、「税理士事務所」と「税理士法人」の違いから始めましょう。わかりやすく言うと、税理士が1人で開業しているのが税理士事務所、複数の税理士が共同で設立するのが税理士法人です。

2002年の税理士法の改正で、税理士法人の設立が認められるようになりました。以降、税理士法人は数が増え、規模も急速に大きくなっています。2000年には最大手でも200人程度でしたが、最近では1,000人を超える法人も数社あります。

法人規模の拡大によって、少人数では到底扱いきれなかったボリュームの大きな仕事、たとえばM&Aや組織再編に伴うデューデリジェンスやIPOなども増えてきました。また、国境をまたぐ国際税務や移転価格なども拡大の一途をたどっています。規模が大きくなった税理士法人では、記帳代行・税務申告から、付加価値の高いコンサルティングに仕事の軸足が移ってきたのです。

大都市ほどこの傾向が強く、首都圏の主要駅近くにオフィスを構える税理士法人の多くはコンサルティングを主なサービスとしています。こうした税理士法人は慢性的な人手不足ですが、一方で、後継者がいない税理士事務所も数多くあります。

【情報はどう入手する?】就職説明会・求人サイト・事務所ホームページを活用

TACなどの受験対策校では、毎年夏・冬に就職情報誌を発行しています。掲載されているのは比較的規模の大きな税理士法人が中心ですが、タイミングが合えば就職説明会への参加をお勧めします。1日で数社の情報を収集することができます。

その他には、一般的な求人サイトやハローワークにアクセスする方法もあります。一般的な求人サイトは、都市部にある比較的規模の大きな法人が中心ですから、個人事務所や地方に勤務したいとお考えの方は、ハローワークのサイトを見てみるのもよい方法です。

また、どのような仕事をしているのかを見極めるために、その法人のウェブサイトをご覧になってみてください。多くの法人は提供しているサービスを公開していますので、確認しましょう。個人事務所などは公開していないことも多いので、そのときは所長の経歴をチェックしてみましょう。所長の得意分野がその事務所の提供しているサービスとほぼ一致します。

ちなみに、各求人情報には「応募資格」が記載されています。この応募資格、完全に合致しないと採用されないのでしょうか? たしかに、一部の超大手法人では、かなり厳格に運用されています。ただ、「人柄」を中心に採用している法人も多いですから、まずは応募されてはいかがでしょう。その場合には、不足している要素を埋め合わせる経験や能力・スキル、そして熱意などをプレゼンすると評価されることがあります。

【採用プロセスは?】コロナでリモート面接が増えている

税理士業界も、一般的な企業と同じように、「書類審査に通ると面接がある」というプロセスです。企業と異なる点としては、適正検査をする法人はとても少ないです。

応募書類は「履歴書」と「職務経歴書」です。「手書き」と明記されていないかぎり、デジタルで作成したもので問題ありません。職歴のない方は、税理士を目指した理由や志望動機を明記した「自己経歴書」を準備するのも1つの方法です。評価されないことも考えられますが、マイナスにはなりません。書類に貼る写真は、できればフォトスタジオで撮影してもらいましょう。

現在は、新型コロナウィルス感染症が流行し、ある程度の規模以上の税理士法人ではリモート面接も増えています。リモート面接の場合には、予行演習をしましょう。背景が明るいと顔が暗くなりますので、どのように映るのかを確認するだけでも価値があります。特に目線について、モニターのどのあたりを見ると面接官を正視しているように見えるのか、ぜひ確認してみてください。

また、小規模の税理士事務所の場合には、あっという間に内定が出て、その場で入社を迫られることがあります。よほど気に入っている場合を除いては、「家族と相談したい」などと理由をつけて即答は避けることをお勧めします。即答は、ミスマッチによる短期離職の可能性を高めます。ミスマッチを避けるためにも、一緒に働く方々に事前に会わせてもらえるようにお願いするのもよい方法です。

【自分に合った就職先とは?】どんな仕事をしたいか考えよう

あなたは「税理士」として、どのような仕事をしたいですか? 就職活動を始める前に、ぜひ真剣に考えていただきたいです。まずは、ここを固めましょう。

ただ、仕事内容がわからないと選びようがありません。税理士の仕事は、あなたが考えている以上に多岐にわたっています。税理士の仕事を知るためには、たとえばTAC校舎にある「THE PROFESSIONALS 税理士の仕事」を入手する、またはTACキャリアエージェントのサイトにアクセスして情報を入手することをお勧めします。

◆記事執筆者提供

その次に、「やりたい仕事」ができる税理士事務所や税理士法人を探しましょう。志望動機は明確です。「自分のやりたい仕事ができるから」です。

そして、そこで働いている方々や代表者との相性がよいかどうか、そして経営方針に共感できるかを考えてみましょう。判断基準は、規模でも法人名でもありません。あなたに合った就職先を探してみましょう。

〈執筆者紹介〉
出川 雅人
キャリアコンサルタント
伝統的な日本企業での海外駐在、外資系企業、ベンチャー企業を経て、TAC株式会社に入社。米国公認会計士講座責任者などを担当した後、TACプロフェッションバンクに出向。人材紹介コンサルタント、公認会計士/税理士業界の就職情報誌および就職イベントの企画・制作・運営に約15年間携わる。大学経営学部の4つのゼミでの就職指導にも7年間従事。


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