税理士受験生が繁忙期を乗り切る5つの学習ポイント


松山智也
(税理士)

税理士試験受験生のなかには、働きながら勉強をしているという人がたくさんいます。そして、働きながらの受験生にとって大変な学習時期が、この3月~4月の繁忙期です。この時期をいかに乗り切るかで、税理士試験の合否が決まってくるといっても過言ではありません。 

かくいうわたしも、働きながら税理士試験を受験していたので、この繁忙期の勉強には色々と苦労しました。わたしは、簿記論以外の4科目(法・所・消・財)に働きながら合格したのですが、繁忙期の勉強を工夫したことが合格につながったのだと思っています。それほど、この時期の勉強は重要なのです。 

今、合格に向けて頑張っている受験生の皆さんには、ぜひこの繁忙期をうまいこと乗り切って、合格をつかんでほしいと思います。 

そこで本記事では、繁忙期に苦しむ受験生の参考になるように、繁忙期の学習ポイントを5つご紹介します。 

繁忙期の学習ポイント5

① 計算メインに学習しよう

時間の有効活用という面からみると、この時期には計算を中心に勉強するべきです。なぜならば、貴重な計算練習の場をムダにしないためです。 

計算問題は、理論問題よりもはるかに多くのパターンがあります。細かい論点を挙げていけばキリがなく、できるだけ多くの問題に触れ、実際に問題を解いておけばおくほど有利になります。なので、普段からの小テストや定期テストでの計算問題は計算練習のための貴重な場なのです。 

しかし、計算の勉強が足りておらず、基本的な知識さえ身についていなければ、そのせっかくの練習の場を有効に活用することができません。特に、試験本番までに総合問題を解く機会は限られています。計算については、日頃から1回1回のテストに真剣に取り組むことが、本試験に備えての大切な準備となるのです。

② 理論暗記は範囲を広げすぎない

一方、理論勉強は必要最低限で大丈夫です。勉強方法としては、講義で新たに学習した理論にだけ集中して一時的に暗記するという方法です。 

具体的にいうと、講義では毎回新しい理論を学習するかと思いますが、その講義後の1週間は、その理論だけに集中して完璧に暗記するのです。そして、次の講義でまた新たな理論を学習したら、その新たな理論だけをまた1週間集中して暗記します。 

これをただ繰り返していくだけです。これなら勉強時間が取れない人でも、なんとか続けることができると思います。

この方法では、古い理論はどんどん忘れていってしまいますが、一度しっかりと暗記ができていれば、覚えなおすのも難しくはありません。繰り返し覚えるのは、繁忙期を過ぎてから(ゴールデンウィー クあたり)でも十分間に合います。 

逆に、勉強時間が取れないなかで、色んな理論をつまみ食いしてしまえば、すべて中途半端な暗記に終わってしまうばかりか、覚えなおしにも時間がかかってしまい、効率はかなり悪くなります。 

③ 業務と結びつけて勉強しよう

所得税法の受験生にとっては、この繁忙期は、逆に知識習得のための絶好の機会として利用することができます。仕事で出てきた事例を勉強に活かしたり、講義で学んだ知識を使って仕事に取り組んだりと、ものすごい相乗効果となります。

また、所得税法の受験生ではなくても、税理士試験の科目は、どれも仕事と何らかの結びつきはあるはずです。普段から勉強と仕事とを意識的に結び付けるようにしておくことで、勉強効率をどんどん高めていくことができるのです。 

④ 勉強スタイルを崩さないようにしよう 

予備校に通われたり、通信講座で学習されている方で、繁忙期は授業をまったく受けず、あとでまとめて補講を受けるという人もいらっしゃると思いますが、あまりオススメはしません。毎週必ず授業を受けるという勉強スタイルは続けたほうがよいでしょう。平日に授業に出られないなら、土日に、それも無理ならスキマ時間に、ネット配信でもよいので、授業は必ず1週間以上遅れずに受ける べきです。 

なぜならば、繁忙期が終わった時期には、補講を受けている場合ではないからです。その時期には応用問題が増えたり、模試が始まったりで、各時期に即した勉強が必要となってきます。そんなときに、過去の補講に時間を取られていたら、他の受験生にどんどん差をつけられてしまいます。 結局その差は縮まらず、本試験を迎えることになってしまいます。 

繁忙期の勉強は、授業への出席を最優先として、とにかく授業進度に遅れないようにだけ最低限の努力をしましょう。

⑤ 初学者と経験者では勉強方法を変えよう 

【初学者】

この時期は、まだまだ新しいことを勉強する時期なので、基本的な知識の定着に力を入れるべきです。これからどんどん応用問題が増えていくなかで、やはり大事なのは基本的なことです。それがおろそかになっていれば、応用問題は解けるはずもありません。 

また、1年以上勉強している経験者と張り合うためには、基本問題をどれだけ正確に解けるかが重要となります。一発合格を狙っているなら、とにかく基本問題を繰り返し勉強し、完璧な知識を身につけることです。

【経験者】 

この時期は、ひたすら計算練習とテキストの読み込みを繰り返すべきです。一通りの知識は、すでに学習済みなので、あとはどれだけ問題演習できたかが鍵となります。 

そして、ここで重要なのがテキストの読み込みです。経験者は、基本的な知識は十分身についているかもしれませんが、滅多に出てこない細かい論点については、まだあやふやな部分も多いはずです。テキストを読み込むことで、細かい論点までも網羅的にしっかりと勉強し、繰り返し問題演習することで知識はどんどん深まっていきます。初学者との差をつけるためにはこういった積み重ねが大事なのです。 

〈執筆者紹介〉
松山 智也(まつやま・ともや)
税理士
2011年に京都大学経済学部を卒業後、大阪市内の会計事務所に勤務。 2016年の税理士試験合格後、2017年にまつやま税理士事務所を開業。フットワークの軽い税理士 として伊丹市を中心に活動。中小零細企業の開業・会社設立サポートを得意とする。

※ 本記事は、会計人コース2018年3月号「ムリしないで合格る勉強術 ムリしないで勉強と付き合う方法」を編集部で再編集したものです。


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