ココが間違い!
会社法上、自己株式について、剰余金の配当を行うことができない。また、剰余金の配当の額に10分の1を積み立てると、準備金(資本準備金および利益準備金)の合計額が資本金の4分の1を超過するために、残りの要積立額を算定する必要がある。
【間違った解説】
(借) その他資本剰余金 11,000
繰越利益剰余金 33,000
(貸) 仮払金 40,000
資本準備金 1,000
利益準備金 3,000
(省略)
【正しい解説】
(借) その他資本剰余金 9,750
繰越利益剰余金 29,250
(貸) 仮払金 38,000
資本準備金 250
利益準備金 750
(注1)仮払金:
{10,000株(発行済株式総数)-500株(自己株式数)}×4千円=38,000千円
(注2)準備金の残りの要積立額:
100,000千円(資本金)÷4-{16,000千円(資本準備金)+8,000千円(利益準備金)}=1,000千円
∴ 配当金の10分の1(=3,800千円)ではなく,1,000千円を積み立てる。
(注3)資本準備金:
1,000千円×25%(財源割合)=250千円
(注4)利益準備金(解答の金額):
1,000千円×75%(財源割合)=750千円
(注5)その他資本剰余金:
9,500株×1千円+250千円=9,750千円
(注6)繰越利益剰余金:
9,500株×3千円+750千円=29,250千円
チェックポイント
会社法453条において、自己株式に対して剰余金の配当をすることができないと規定している。また、会社法445条4項と会社計算規則22条1項・2項において、資本金の4分の1に達するまで、剰余金の配当の10分の1を準備金として計上しなければならないと規定し、「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」62項に基づき、資本剰余金と利益剰余金の混同を避けるために、その他資本剰余金から資本準備金へ、また、繰越利益剰余金から利益準備金へ、それぞれ積み立てる。
〈執筆者紹介〉
加藤 大吾(かとう・だいご)
早稲田大学大学院会計研究科非常勤講師・公認会計士
2003年早稲田大学政治経済学部経済学科卒。2005年公認会計士登録。東京CPA会計学院にて公認会計士講座(簿記)・日商簿記検定講座の講師業務の傍ら、監査法人にて監査業務にも従事。2015年より早稲田大学大学院会計研究科非常勤講師。著書に『税理士試験 簿記論・財務諸表論 総合問題なるほど解法ナビ』(中央経済社)がある。
本連載は、会計人コース2020年3月号別冊付録「読んで考えて総復習 間違いだらけの計算問題」を再編集したものです。