12月18日に令和2年(第70回)税理士試験結果が公表されました。
財務諸表論は、受験者数8,568人、合格者数1,630人で合格率は19.0%(昨年は18.9%)と昨年同様、2年連続で高い合格率でした。
とはいえ、令和3年(第71回)の試験に再チャレンジされる方も多いと思われます。
そこで、会計人コースWebでおなじみの穂坂治宏先生(税理士)に、来年の試験に向けた勉強のヒントをお伺いいたしました。
令和2年(第70回)の出題内容と合格率
――今年の問題の印象と合格率について、先生はどのようにご覧になっていますでしょうか?
今年の第1問は、第66回、第67回の第1問をやっていれば、ほぼそのままの知識で80%は解答が可能という、近年にはみられない特徴がありました。
しかし、以前平成29年度に合格率29.6%という非常に高いときがありましたが、今回の合格率はそこまでではありませんね。
最近の試験で一度出ているから対策をしていなかった受験生も多いのではないでしょうか。
今回の出題内容と合格率から、基礎的な論点については、直近の出題の如何を問わず、まんべんなくおさえておくことが重要だと感じています。
令和3年(第71回)に向けて、当面どのように勉強すべき?
――では、令和3年(第71回)の試験に挑む受験生は、当面どのように勉強していけばよいでしょうか?
① 過去問をよく研究する!
このような出題があった以上、特に理論の過去問はしっかりみておく必要があると思います。
また、その際には「出題のポイント」もあわせて確認して、試験委員の先生が何を「基礎」と考えているかも把握してください。
② 理論は大きなテーマを意識する!
今年の第1問は「利益概念」、第2問は主として「資産・負債の定義」からの出題でした。
受験生は個々の会計基準に意識が行きがちですが、ワンランク上の大きなテーマを意識して勉強するとよいでしょう。
そこで重要になってくるのが概念FWですが、これは後ほどお話します。
③ 計算は早めに総合問題に取り組む!
本試験の第3問は、見た目よりも解きにくい、ミスをしやすい問題のように感じます。
これに対応するには、個別問題を解くことよりも早めに総合問題に取り組むほうがよいですね。
そして、総合問題を解くなかで、間違えた問題について個別問題に戻って知識を再確認するとよいでしょう。
概念FWはどう学習していく?
--先の質問で指摘されている概念FWは、抽象的で勉強しにくいですが、どのように勉強していけばよいでしょうか?
概念FWは、第68回(平成30年)~第70回(令和2年)と3年連続で異なる試験委員による「原文」が出題され、基礎的にも試験的にも極めて重要です。
とはいえ、漫然と読んでもなかなか理解できないと思います。
そこで、
① 「第1章 財務報告の目的」と「第2章 会計情報の質的特性」は、意思決定有用性を軽く押さえて、「第3章 財務諸表の構成要素」と「第4章 財務諸表における認識と測定」を中心に学習する。
② 現在の多くの会計基準は概念FWがベースになっているので、個々の会計基準との関係性も意識して学習する。
ことを心がけてはどうでしょうか。
理論の克服方法は?
――理論は苦手という受験生も多いと思いますが、アドバイスをいただけますか。
理論に苦手意識がある方の原因の1つが「穴埋め問題」だと思います。
単純な規定の穴埋めが本試験で出題されると、その対策にあらゆる会計基準の穴埋めを想定することになり、その分量に嫌気がさしてしまう方も多いのではないでしょうか。
財表の理論は、会計基準等の文章や文言を覚えるのではなく、理解して、できるだけ短く言える(書ける)ことが大事です。
イメージは、「筋道をたどって、納得して記憶に残す」感じです。
本試験の論述も、その延長でほとんど対応できます。
丸暗記は、応用がきかず、解答要求と異なる解答をする危険性が高いですね。
ですので、超短答問題(短い問いに一言で答える問題)で、まず重要論点の理解を深めて、そこから肉付けしていく、という勉強方法がオススメです。
※ 超短答問題は、ぜひ下記をご参照・ご活用ください。
ツイッター:https://twitter.com/bokironkousi
ブログ:http://bokiron.livedoor.biz/
―お忙しい中、どうもありがとうございました。
<お話を聞いた人>
穂坂 治宏(ほさか・はるひろ)
税理士 受験指導に情熱を燃やすカリスマ講師
これまで簿記論・財務諸表論の合格者を多数輩出。主な著書に『新なるほど合格塾 日商簿記3級』、『同・2級商業簿記』、『同・2級工業簿記』(中央経済社)、『税理士財務諸表論 穂坂式つながる会計理論』(ネットスクール)などがある。