松井 元
(税理士)
働きながら勉強されている方は、とても忙しい環境に身を置いているといえます。私自身は、勤めていた会社を辞めて会計事務所に転職すると同時に勉強を始めました。
この記事では、働きながら勉強時間を確保しなければならない環境で、どのようにスキマ時間を使って勉強したかをお伝えします。
まず普通に勉強時間を確保することが大事
資格試験は勉強時間を確保できる人が有利なので、まず普通に勉強時間を確保することが大事です。それがあってこそ、スキマ時間が有効に使えます。
とはいっても、社会人が勉強時間を確保するためには、何かを犠牲にしなければなりません。
週末に趣味に打ち込んでいた人であれば、その時間を勉強に充てる必要があり、平日飲みに行くことが多い人であれば、それを止めて勉強しなければなりません。
1日の中でどのように勉強時間を確保するか、基本的なスケジュールを立てる必要があります。私の場合は、以下のように立てていました。
早起きして勉強するようにしたことと、仕事は定時で切り上げて就寝まで勉強するようにしたことがポイントだったと思っています。
勉強時間の確保には環境選びも大事で、残業が少ないとか、上司が受験に理解がある職場を選ぶことで、勉強できる環境を整える必要があります。
実務経験を積むことはもちろん大事ですが、合格するまでは、仕事よりも試験勉強に重点を置いたほうがよいと私は考えます。
スキマ時間はこんなにある
基本的なスケジュールは実行するとして、他の受験生のなかには、学生など比較的時間がある環境にいる人もいることを忘れてはいけません。合格するためには、そういう人たちにも勝たなければならないのです。
そのために、スキマ時間を確保することがものを言うのです。
私は、勉強時間を計測して見える化することで、勉強の起爆剤にしていました。
具体的には、ストップウォッチで勉強した時間を計り、Excelに記録して振り返ることを習慣にしていました。1週間の目標を定めて、毎日の勉強時間を見える化させることで、目標を達成しようとするようになります。
勉強できる時間を見つけたら、すかさずストップウォッチを取り出してオンにし、勉強を止めたらオフにする。そして、Excelに時間を記録するようにしていましたが、そこでわかったのは「スキマ時間の多さ」です。ある1日の測定結果は、以下のようになりました。
3分、16分、15分、6分、4分、60分、45分、4分、68分、20分、32分
ある程度長い時間もありますが、30分以下のスキマ時間も結構あります。このスキマ時間を合計すると「68分」となり、その1日だけで1時間以上の勉強時間を捻出できているのです。仮に毎日このようにスキマ時間を確保できたら、1年間で300時間以上になります。
1回1回のスキマ時間はわずかですが、そこでSNSを見たりするのと、勉強するのとでは、長い目で見たときに大きな差になるのです。
スキマ時間の見つけ方
まずスキマ時間を見つけるにあたって大事なこととして、「勉強の順位を一番にもってくる」ということがあります。わずかな時間をもったいないと感じることで、スキマ時間が見つかるようになります。私の場合は、以下のようなスキマ時間がありました。
・朝食を食べてから出発するまで ・電車の待ち時間や移動時間 ・仕事の休憩時間 ・約束に早く着いたときの待ち時間 ・夕食からお風呂に入るまで ・その他随時できた時間 |
本試験が近くなると、信号待ちしている時間にもテキストを開いたりしていました(今思えばここまでよくやったと思います)。
人それぞれ生活パターンは異なりますが、必ずスキマ時間はあるので、それを見つけるためにも勉強の優先順位を上げてください。私は予備校のウェブ講座を受けていたので受験仲間はいなかったのですが、自分が休んでいる間にもライバルは勉強しているかもしれないと思うと、いてもたってもいられませんでした。
何を勉強するか決めておく
スキマ時間で何を勉強するか、決めておくことも大事です。隙あらば勉強するというスタンスで、時間ができたときにサッと動けるようにするためです。私は、朝にその日のスキマ時間の使い方を決めていました。
たとえば、私が税理士試験で受験した3科目それぞれのスキマ時間の使い方は、以下のとおりです。
●簿記論…テキストの見直し、個別問題を解く ●財務諸表論…理論マスターの暗記、個別問題を解く ●国税徴収法…理論マスターの暗記 |
理論と計算で比べると、理論にスキマ時間を使うことが多かったです。計算は机に向かわないとできませんが、理論は座っていないときでも暗記できるからです。どこへ行くにもテキストを持ち歩いて、すぐに開けるようにしていました。
短時間で効果のある勉強法
スキマ時間はその名のとおり短い時間なので、これまでやったことがないことを勉強するのには適していません。新しい内容はしっかりと長い時間にやるべきで、スキマ時間はあくまで復習のために使いましょう。一度勉強した内容を確認する作業は、経験上、短い時間でもたしかな効果があると実感しています。
ここまで社会人の方に向けて、スキマ時間を使った勉強法についてお話しさせていただきました。社会人になってからの勉強は、学生時代の何倍も大変です。この記事の内容をぜひ試していただき、限られた時間を有効に使えるようにスキマ時間をかき集めてみてください。
(執筆者紹介)
松井 元(まつい・はじめ)
静岡県三島市の松井会計事務所に勤務する税理士。理系出身で元エンジニア。5年弱かけて簿記1級、税理士試験3科目(簿記論・財務諸表論・国税徴収法)、大学院での税法論文の執筆を経て税理士登録。ブログ「はじめろぐ」で税理士試験の勉強方法、大学院での論文の書き方も発信している。kindle本『大学院での税法論文の書き方』執筆。