衝撃!電卓を使わずに計算スキルを上げる方法


堀川 洋
(堀川塾塾長)

常に“アイドリング”状態に

普段の生活や学習、スポーツでも、「精神的なON・OFFといった気持ちの切り替えが重要だ」ということをしばしば耳にします。たしかに、他のことをすることで緊張がほぐれたり、新たな発想が生まれたりします。しかし、大きな目標や課題があるときには、気持ちを完全なOFFの状態にするのではなく、常にアイドリング状態にしておくことも重要です。

このように考えると、毎日少しでも勉強を継続することが理想です。しかし、実際には、なかなか集中した勉強時間というのが用意できないことが、受験生の悩むところでもあります。

そこで今回は、通勤通学などのスキマ時間に効果のある勉強法、しかも計算力がアップする方法をご紹介します。

電卓いらずの計算スキルアップ術

① 固定概念を捨てよう

まず第一に、「学習は机に向かってするものだ」という概念は捨てましょう。驚くことに最近は、小学生が小型タブレットやスマートフォンの画面上で国語や算数を勉強しています。また、電車の中でも、スマートフォンを見ていない乗客のほうが少ない、といっても過言ではありません。となれば皆さんも、デジタル化された環境を利用しましょう。

② 問題の[資料]を読み、計算要素をチェック

まず問題の[資料]を読みながら、計算に必要な事項(たとえば日付や金額)をチェックします。このときペンを持っていれば、計算に必要な事項をマークしましょう。

③ 頭の中で算式を組み立てる

実際の試験では、マークした計算事項を計算用紙に記入し、電卓を入れて解答することになりますが、さすがに電車の中など移動中の学習では、それは不可能です。しかし、頭の中で算式を組み立て、直ちにその過程が正しいかどうかを解答・解説で確認することは可能です。これで考え方が正解であればよいわけですし、誤っていればミスした箇所をあとで確認すればよいでしょう。

実際にチャレンジ

たとえば、次の貸倒引当金の計上に関する資料を見てください(税理士試験の問題です)。


問題例 受取手形と売掛金に関する事項

(1) 得意先A社に対する営業債権は、前期において回収に重大な問題が生じたため、貸倒懸念債権に区分していた。同社は令和○年1月に二度目の不渡手形を発生させ、銀行取引停止処分になった。A社に対する営業債権の当期末残高は受取手形7,600千円及び売掛金3,160千円である。なおA社の社長個人が所有する不動産に担保を設定しており、担保設定時の時価は10,430千円、期末現在の時価は8,120千円であった。

(2) 得意先B社に対する売掛金は、当期に入ってから回収が滞り始めたため、B社との取引を停止するとともに、その全額を手形で回収していた。しかし回収した手形については、その後支払期日が再三延期されており、回収について重大な問題が生じる可能性が高いと判断された。B社に対する受取手形の期末残高は5,200千円である。なおB社からは3,000千円の定期預金証書を担保として受け入れている。


いずれも基本的な事例ですが、発生している事実は、A社が「二度目の不渡手形の発生」、B社が「回収に関する重大問題の発生に対する懸念」です。これらを正確に読み取り、計算の要素になる債権額と担保の金額をマークすれば、計算に関する事項は準備できたことになります。

電卓を入れなくても、マークした事項を頭の中で算式に組み立て、その過程を解答・解説で確認すれば、これだけで学習成果は十分に上がります

移動中や待ち時間に計算事項のチェックをしても、机の前で同じ問題を解いたとしても、学習成果に大きな差はありません。どこでどのように計算問題を解いても、理解が不足しているところは間違えるし、正しい知識が身についていれば正解を導き出すことができるはずです。

しかも、スキマ時間&机の前で、同じ計算を2回行うという「計算問題の解き直し」をしていることにもなるので、結果として効果的な学習をしたことになるのです。

「読解力」が重要!

理論暗記をスキマ時間に行うのは、もはや常識です。しかし、電卓を使わずに「資料を読んで計算に必要な情報だけをマークする」勉強方法は、はじめて耳にするかもしれません。

特に受験をストイックに考えている方ほど、この計算問題への取り組み方は邪道に思えるかもしれません。しかし、計算問題というのは、いかに膨大な問題文から迅速に必要事項を探し出すか、が大きな命題です。

こう考えると、電卓を入れる以上に「読解力」のほうが重要です。問題を速く正確に解ける受験生というのは、電卓を入れたり計算過程を書いたりするスピードが速いのではなく、問題を速く正確に読み取る力があるということです。

無駄にスマホを眺めるだけではなく、スキマ時間を使って、この学習を実践してみてはどうでしょうか?

(執筆者紹介)
堀川 洋(ほりかわ・よう)
堀川塾塾長
大学卒業後、税理士試験に合格。その後、専門学校において税理士講座の指導を約40年担当し、2010年に会計に関連する資格試験の受験を専門にした堀川塾を設立。受験指導を中心に、書籍の執筆や大学での講師など、幅広い経験をもつ。
主著に『電卓操作最短・最速攻略法〔第2版〕』(中央経済社)、『日商簿記受験生のための電卓操作完ぺき自習帳〔改訂版〕』『ここから始める理論暗記の極意』(いずれもとりい書房刊)など多数。

※ 本記事は、会計人コース2017年11月号「スキマ時間活用! 電卓いらずの計算スキルアップ術」を編集部で一部抜粋・再編集したものです。


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