【論述に強くなる!財表理論講座】第7回:棚卸資産会計②



全31回のプログラムで、税理士試験・財務諸表論に強くなる! 
論点ごとに本試験に類似したミニ問題を用意しました。まずは問題1にチャレンジし、文章全体を何度か読み直したところで問題2(回によっては問題3も)を解いてみましょう。そして、最後に論述問題を解いてください。


長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)

まずは問題にチャレンジ!

棚卸資産については,原則として( ① )又は( ② )に引取費用等の付随費用を加算して取得原価とし,認められた評価方法の中から選択した方法を適用して売上原価等の( ③ )と( ④ )の価額を算定するものとする。
棚卸資産の評価方法は,事業の種類,( ⑤ )の種類,その性質及び使用方法等を考慮した区分ごとに選択し,( ⑥ )して適用しなければならない。

問題1 
文中の空欄( ① )から( ⑥ )にあてはまる適切な用語を示しなさい。

問題2 
太字「認められた評価方法」の名称をすべて列挙しなさい。

解答

問題1

① 購入代価
② 製造原価
③ 払出原価
④ 期末棚卸資産
⑤ 棚卸資産
⑥ 継続

問題2

(1) 個別法
(2) 先入先出法
(3) 平均原価法
(4) 売価還元法

基本的な考え方

「棚卸資産会計基準」では、棚卸資産の評価方法を新たに定め、従来、認められていた評価方法から後入先出法を選択できないこととした。

論述問題にチャレンジ!

「棚卸資産会計基準」で認められる評価方法とは?

個別法
取得原価の異なる棚卸資産を区別して記録し、その個々の実際原価によって期末棚卸資産の価額を算定する方法である。個別法は、個別性が強い棚卸資産の評価に適した方法である。

先入先出法
最も古く取得されたものから順次払出しが行われ、期末棚卸資産は最も新しく取得されたものからなるとみなして期末棚卸資産の価額を算定する方法である。

平均原価法
取得した棚卸資産の平均原価を算出し、この平均原価によって期末棚卸資産の価額を算定する方法である。平均原価は、総平均法または移動平均法によって算出する。

売価還元法
値入率等の類似性に基づく棚卸資産のグループごとの期末の売価合計額に、原価率を乗じて求めた金額を期末棚卸資産の価額とする方法である。売価還元法は、取扱品種の極めて多い小売業等の業種における棚卸資産の評価に適用される。

先入先出法と後入先出法の特徴を比較すると?

損益計算
物価変動下における損益計算の影響という観点からみれば、先入先出法は当期の収益に対して、過去の費用が対応することになり、費用と収益との同一価格水準による対応計算が行えず、物価変動に起因する保有損益が損益計算上実現損益として計上されてしまうのに対して、後入先出法は当期の収益に対して比較的最近の費用が対応することになり、費用と収益との比較的同一の価格水準による対応計算を可能とすることから、保有損益を損益計算から比較的排除できる長所を有する。

期末評価
棚卸資産の期末評価額は、先入先出法によれば、期末近くに取得されたものの取得原価によって評価されるから時価に近似した価額を反映するが、後入先出法では、最も古く取得されたものの取得原価によって評価されるから時価から乖離したものになる。

〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師、会計事務所(監査法人)、証券会社勤務を経て、資格予備校、専門学校、短大、大学、大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後、松本大学松商短期大学部准教授を経て、現在に至る。この間30年以上にわたり、簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。

※ 本記事は、会計人コース2020年1月号別冊付録「まいにち1問 ポケット財表理論」を編集部で再構成したものです。

〈バックナンバー〉
第1回:キャッシュ・フロー計算書
第2回:1株当たり当期純利益
第3回:金融商品会計①
第4回:金融商品会計②
第5回:金融商品会計③
第6回:棚卸資産会計①


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