全31回のプログラムで、税理士試験・財務諸表論に強くなる!
論点ごとに本試験に類似したミニ問題を用意しました。まずは問題1にチャレンジし、文章全体を何度か読み直したところで問題2(回によっては問題3も)を解いてみましょう。そして、最後に論述問題を解いてください。
長島正浩
(茨城キリスト教大学経営学部教授)
まずは問題にチャレンジ!
受取手形,売掛金,貸付金その他の債権の貸借対照表価額は,( ① )から貸倒見積高に基づいて算定された( ② )を控除した金額とする。ただし,債権を( ③ )より低い価額又は高い価額で取得した場合において,取得価額と( ③ )との差額の性格が( ④ )と認められるときは,( ⑤ )に基づいて算定された価額から貸倒見積高に基づいて算定された( ② )を控除した金額としなければならない。
支払手形,買掛金,借入金,社債その他の債務は,( ⑥ )をもって貸借対照表価額とする。ただし,社債を( ⑦ )よりも低い価額又は高い価額で発行した場合など,( ⑧ )に基づく金額と( ⑥ )とが異なる場合には,( ⑤ )に基づいて算定された価額をもって,貸借対照表価額としなければならない。
問題1
( ① )から( ⑧ )にあてはまる適切な用語を示しなさい。
問題2
空欄( ⑤ )はどのような方法か,説明しなさい。
解答
問題1
① 取得価額
② 貸倒引当金
③ 債権金額
④ 金利の調整
⑤ 償却原価法
⑥ 債務額
⑦ 社債金額
⑧ 収入
問題2
償却原価法とは、金融資産又は金融負債を債権額又は債務額と異なる金額で計上した場合において、当該差額に相当する金額を弁済期又は償還期に至るまで毎期一定の方法で取得価額に加減する方法をいう。なお、この場合、当該加減額を受取利息又は支払利息に含めて処理する。
基本的な考え方
・貸倒見積高の算定にあたって、債権を(1)一般債権、(2)貸倒懸念債権、(3)破産更生債権等の3つに区分する。
・条件付きの金融資産の譲渡についての会計処理には、(1)リスク・経済価値アプローチ、(2)財務構成要素アプローチの2つがある。
論述問題にチャレンジ!
償却原価法の利息計算においての原則と例外はどのような方法か?
償却原価法によって差額を調整する具体的な方法には、実効利子率による複利計算を前提とした利息法(原則)と、毎期均等額ずつ差額を配分する定額法(例外)がある。
貸倒懸念債権の貸倒見積高の算定方法としての2つの方法とは?
財務内容評価法
債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額について債務者の財政状態及び経営成績を考慮して貸倒見積高を算定する方法である。
キャッシュ・フロー見積法
債権の元本の回収及び利息の受取りに係るキャッシュ・フローを合理的に見積ることができる債権については、債権の元本及び利息について元本の回収及び利息の受取りが見込まれるときから当期末までの期間にわたり当初の約定利子率で割り引いた金額の総額と債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とする方法である。
破産更生債権等についてはどのように貸倒見積高を算定するか?
債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額を貸倒見積高とする。この場合、債権金額または取得価額から直接減額することができる。
〈執筆者紹介〉
長島 正浩(ながしま・まさひろ)
茨城キリスト教大学経営学部教授
東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。簿記学校講師、会計事務所(監査法人)、証券会社勤務を経て、資格予備校、専門学校、短大、大学、大学院において非常勤講師として簿記会計や企業法を担当。その後、松本大学松商短期大学部准教授を経て、現在に至る。この間30年以上にわたり、簿記検定・税理士試験・公認会計士試験の受験指導に関わっている。
※ 本記事は、会計人コース2020年1月号別冊付録「まいにち1問 ポケット財表理論」を編集部で再構成したものです。
〈バックナンバー〉
第1回:キャッシュ・フロー計算書
第2回:1株当たり当期純利益