コロナ終息を見据えて職業会計人が果たすべき役割


3 支援業務のベースとなる「会計」の重要性

これらの支援業務の基盤を形作るのが「会計(中小企業会計)」である。「中小企業等の経営強化に関する基本方針」(2019年7月)では,次のように述べている(第6の3二(ホ))。

「認定経営革新等支援機関は,中小企業に会計の定着を図り,会計の活用を通じた経営力の向上を図ることに加え,中小企業が作成する計算書類等の信頼性を確保して,資金調達力の向上を促進させることが,中小企業の財務経営力の強化に資すると判断する場合には、中小企業者に対し、「中小企業の会計に関する基本要領」又は「中小企業の会計に関する指針」に拠った信頼性のある計算書類等の作成及び活用を推奨すること」(太字は筆者)

このように,中小企業の経営力の向上には,中小企業に会計の定着・活用を図ることが不可欠であり,認定経営革新等支援機関の支援活動のすべては,中小会計要領等に準拠した「信頼性のある計算書類等の作成・活用」が基本であるとされる。

4 試される職業会計人の英知

新型コロナウイルスの脅威という人類の危機に直面し,いま,職業会計人の英知が試されている。当面の資金繰り対策であれ,感染終息後の反転攻勢であれ,職業会計人(税理士)には,「会計」が中小企業のサバイバルにとって,いかに重要であるかを中小企業経営者に理解させる役割が期待されている。

感染拡大が終息し,職業会計人が「認定経営革新等支援機関」としての役割を発揮する時が,一刻も早く到来することを祈るばかりである。

<執筆者紹介>
河﨑 照行
(かわさき・てるゆき)
甲南大学名誉教授
1950年山口県に生まれ。1979年神戸大学大学院経営学研究科博士課程単位取得。博士(経営学) (神戸大学)。1978年甲南大学経営学部助手、その後講師、助教授、教授を経て現在甲南大学名誉教授。税理士試験委員、公認会計士試験委員、中小企業庁「中小企業政策審議会」臨時委員、金融庁「企業会計審議会企画調整部会」臨時委員等を歴任。現在、中小企業会計学会会長、税務会計研究学会理事、公益財団法人「租税資料館」理事長。
<主要著書>
『情報会計システム論』中央経済社、1997年
『最新 中小企業会計論』中央経済社、2016年
『電子情報開示のフロンティア』編著、中央経済社、2007年
『詳解 中小会社の会計要領』編著、中央経済社、2012年
『中小企業の会計制度-日本・欧米・アジア・オセアニアの分析』編著、中央経済社、2015年
『会計制度のパラダイムシフト-経済社会の変化が与える影響』編著、中央経済社、2019年 他多数

河﨑先生のご著書です。ぜひぜひご覧ください!

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