第68回(2018年)税理士試験 財務諸表論・第一問
1 純資産を構成する諸項目の区分と評価に関する以下の各間に答えなさい。
(1)純資産の金額を増減させる取引として最も適切なものを1つ選び、記号で答えなさい。
ア 任意積立金の取り崩し(繰越利益剰余金への戻し入れ)
イ (繰越利益剰余金を原資とする)利益準備金の積み立て
ウ 額面による社債の発行
エ 現金の支払いによる自己株式の取得
オ 時価に相当する現金の支払いによる商品の購入
(2)新株の有利発行が財務諸表に及ぼす影響として最も適切なものを1つ選び、 記号で答えなさい。
ア 発行価額にみあう資産が増加し、これに伴い同額の資本が増加する。
イ 新株の時価にみあう資産が増加し、これに伴い同額の資本が増加する。
ウ 発行価額にみあう資産が増加し、これに伴い同額の収益が発生する。
エ 新株の時価にみあう資産と発行価額にみあう資本がともに増加し、差額相当の収益が発生する。
オ 発行価額にみあう資産と新株の時価にみあう資本がともに増加し、 差額相当の費用が発生する。
(3)帳簿価額を上回る対価による自己株式の処分が財務諸表に及ぼす影響として最も適切なものを1つ選び、記号で答えなさい。
ア 自己株式処分差益にみあうその他資本剰余金が減城少し、 代わりに同額の期間利益が発生する。
イ 自己株式処分差損にみあう期間費用が発生する。
ウ 原則として自己株式処分差損にみあうその他資本剰余金が減少する。
エ 自己株式処分差益にみあう期間利益が発生する。
オ 自己株式処分差益にみあうその他資本剰余金が増加する。
(4)保有している自己株式の評価として最も適切なものを1つ選び、記号で答えなさい。
ア 時価が下落した場合は原則として簿価を切り下げ、差額にみあう期間費用を計上する。
イ 時価が下落した場合は原則として簿価を切り下げ、差額にみあうその他資本剰余金を減額させる。
ウ 時価の勝落にかかわらず再評価は行わない。
エ 上場銘柄の自己株式に限って時価による継続的な再評価と、 評価差額の損益算入が求められる。
オ 投機目的で保有する場合に限って時価による継続的な再評価と、 評価差額の損益算入が求められる。
(5)自社発行の新株予約権が失効したことの影響として最も適切なものを1つ選び、記号で答えなさい。
ア 拠出資本が減少し、代わりに同額の留保利益が増加する。
イ 純資産のうち株主資本以外の要素が減少し、代わりに同額の期問利益が発生し、最終的には期聞利益にみあう留保利益が増加する。
ウ 負債が減少し、代わりに同額の期間利益が発生する。
エ 拠出資本が減少し、代わりに同額の期間利益が発生する。
オ 純資産のうち株主資本以外の要素が減少し、代わりに同額の留保利益が(期間利益を経ずに)増加する。
(6)普通株主との取引と新株予約権者との取引では、期間損益ヘの影響が異なることが知られている。影響が及ぶ理由、および影響が及ばない理由をそれぞれ説明しなさい。
【解答】
(1)エ (2)ア (3)オ (4)ウ (5)イ
(6)普通株主との取引は資本取引に該当し、株主から拠出された金銭等は払込資本となることから、期間利益に直接的な影響を与えない。
新株予約権者との取引は、株主ではないため資本取引以外の取引に該当し、将来、新株予約権が権利行使され、払込資本となる可能性がある一方、失効して払込資本とならない可能性がある。失効した場合、期間利益に影響を与える。
これは、新株予約権が失効されると新株予約権戻入益が計上され、期間利益が増加するためである。
この記事で取り上げた過去問は、『会計人コース』2018年10月号別冊付録「第68回 税理士試験 問題と模範解答」でご執筆頂いた渡邉圭先生(千葉商科大学)の許可を得て、編集部にて再構成しています。
【模範解答作成者のプロフィール】
渡邉圭(千葉商科大学基盤教育機構・専任講師)
千葉商科大学基盤教育機構に属しながら、会計教育研究所「瑞穂会」にて、税理士試験講座(簿記論・財務諸表論)および日商簿記検定1級~3級講座を開講し、多数の税理士試験合格者、日商簿記検定試験合格者を輩出している。