この記事は『会計人コース』2020年3月号特集「試験への影響は? 今年の改正ポイントはココだ!」の要点を編集部で再編集してまとめたものです。フルバージョンはこちらからお求めください!
試験への影響は? 今年の改正ポイントはココだ!
2019年12月に「令和2年度税制改正大綱」が公表されました。
税制改正大綱の内容は3月の税制改正に反映され、今年の税理士試験にも影響する可能性があります。
本稿で試験に対する重要度をチェックしていきましょう!
税制改正の内容及び重要度-相続税法
資格の大原 松本拓也
(1)配偶者居住権等の評価の創設(重要度:★★★)
平成31年度の税制改正項目となりますが、適用開始時期が令和2年4月1日とされており、本試験として影響が及ぶのは今回の試験からとなる項目です。
少子高齢化に伴い、子供を連れて再婚をされるケースの増加など社会情勢等の変化が生じています。このような場合に、被相続人の連れ子と被相続人の配偶者との関係性などから、被相続人と同居していた配偶者が自宅を追われてしまうケースや、遺産分割のための自宅の売却などで住む場所を失ってしまうケースが生ずる可能性があること、同居配偶者が被相続人の自宅を相続することによって、他の財産(現金など)を相続できなくなってしまうことによる納税資金の欠如などの問題が生ずる可能性が想定されることを考慮して、民法において配偶者居住権という権利が創設されることとなりました。
この権利の創設により、被相続人と同居していた配偶者は、原則終身までその建物に居住することができる権利である配偶者居住権を設定することができるようになりました。
なお、配偶者居住権に関しては、第三者に対して譲渡することができるものではありませんが、配偶者に対して終身居住することができる権利を設定するものであるという性質、建物所有者等の利用の制限などを鑑み、その権利の評価を定める必要が生じたため、相続税法第23条の2において、評価方法が制定されることとなりました。
具体的な評価算式をおおまかに示すと以下のようになります。
(イ) 配偶者居住権
建物の時価-※の金額
※ 建物の時価×(耐用年数-経過年数-権利の存続年数/耐用年数-経過年数)×権利の存続年数に応じた法定利率による複利現価率
(ロ) 配偶者居住権の目的となっている建物の敷地
土地の時価-土地の時価×権利の存続年数に応じた法定利率による複利現価率
(2)特別寄与料制度の創設(重要度:★★)
配偶者居住権等の評価と同様に、平成31年度の税制改正項目となりますが、適用開始時期が令和元年7月1日とされており、本試験として影響が及ぶのは今回の試験からとなる項目です。
相続人以外の特別寄与者を対象として、その者が被相続人に対して与えた特別の貢献に対応する財産の取得権を相続人に対して請求することができるようになりました。この請求に基づき、特別寄与料の額が確定した場合には、特別寄与者が、その特別寄与料の額に相当する金額を被相続人から遺贈により取得したものとみなされることとなります。
一方で、特別寄与者より請求を受け、特別寄与料の支払いをすることとなる相続人に関しては、その特別寄与料の額に相当する金額について、債務控除をすることが認められており、上記の事柄に連動する手続きとして、特別寄与者であれば相続税の期限内申告又は義務的修正申告が規定され、支払った相続人であれば更正の請求が規定されています。
特別寄与者、相続人の別に課税価格の計算、手続きに関する内容が異なることとなりますので、注意が必要な制度です。
(3)令和2年度税制改正大綱(重要性:★)
令和2年度税制改正大綱では、「農地等の納税猶予制度の対象となる農地等の範囲の拡充」「医療継続に係る納税猶予制度の適用期限の3年延長」など延長、拡充に相当する改正内容が予定されておりますが、いずれも軽微な改正であり、本試験に与える影響度はそれほど大きくないものと推測できます。
(4)平成31年度税制改正項目
平成31年度税制改項目のうち、昨年度の本試験で未出題の項目、かつ、重要性の高い項目は、以下のとおりとなります。
① 個人事業者の事業用資産に係る贈与税・相続税の納税猶予制度(重要度:★★)
平成31年1月1日から令和10年12月31日までの間に、特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、担保の提供を条件に、納付すべき税額のうち、一定の金額に相当する贈与税、相続税の納税を猶予する制度として創設されました。猶予税額の計算方法は、非上場株式等についての納税猶予制度の特例と同様となります。
② 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税(重要性:★★★)
適用期限の2年間延長(令和3年3月31日まで)、適用対象に関して所得要件の追加、贈与者が死亡した場合の課税の創設、契約の終了事由の見直しなど、多岐にわたる改正が行われました。
☆編集部より☆
以上、本稿で改正の概要や重要度について解説して頂きました。本誌では、具体的にどう出題されるか、問題形式で解説していますので、ぜひ全国の書店さんでお買い求めください!
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