海外ビジネスで「うまくやる」ための文化理解~③実は重要、グローバル人材にとっての体力〜


江上 徹(Leapfrog合同会社 代表社員・公認会計士)

【編集部より】
今年12月の公認会計士試験短答式試験から英語による出題がされるなど、英語のスキルアップに力を入れている人も多いのではないでしょうか。一方で、ビジネスで求められるのは英語力だけではないようです。そこで、本連載では、グローバル人材育成を行う公認会計士の江上先生に海外ビジネスでうまくやるために知っておきたいことを教えていただきます(全4回、月1掲載予定)。
<連載バックナンバー>
第1回:なぜ日本人は英語の会議で笑うのか
第2回:その“Sorry”は本当に必要か

「体力」の重要性

「グローバル人材が備えるべき要素は何だと思いますか?」

こう聞かれて、おそらく最も多い答えは「英語」でしょう。そのほかにも「異文化理解力」あるいは「コミュニケーション力」といった答えも多くみられると思います。
これらは「スキル」に分類される要素です。

あるいは「マインド」に分類される要素を挙げる方もいるかもしれません。例えば「違いを受け入れる心」あるいは「主体的に仕事に取り組む姿勢」といった答えが該当します。

確かにこういったスキルやマインドはグローバル人材にとって非常に重要な要素です。
しかし私は、本稿を使って「体力」の重要性を強調したいのです。

「グローバル」に働くとはどういうことか

「グローバル」というのは「世界全体の」とか「地球全体の」という意味ですから、アメリカ、イギリス、フランス、中国、インドなど、様々な相手と世界全体を俯瞰する視点をもちながら働くことになります(単に販売先が海外に広がるだけなら「インターナショナル」のほうがしっくりきます)。

このようにグローバルに働くとなると、例えば東京、ニューヨーク、ロンドン、上海の4拠点をつないで会議を行うようなことはよくあります。
すると、時差の関係で東京が夜の時間になりやすく、例えばこんな感じになったりします。

ちなみに、あまり好まれませんが、東京が早朝というパターンもあります。

このように、日本の地理的な特性上、グローバルに働くということは、早朝・深夜に働くことがセットと言えるのです。
しかも、会議の中で何かトラブルでも生じようものなら、深夜からスクランブル発進して明日の役員報告会までに報告資料をまとめるといったチカラ技を発揮せざるをえないことも珍しくありません。
こう聞くだけでも、体力の重要性は感じていただけるのではないかと思います。

体力の充実は仕事のパフォーマンスに直結する

さて、早朝・深夜の会議以外にも、「グローバルあるある」はたくさん挙げることができます。

・海外出張が続くと移動だけでも消耗する
・時差ボケで生活リズムが崩れ、慣れてきたころに帰国する
・疲れていると、交渉や議論で集中力が途切れてしまう
・会議後の会食も避けるわけにはいかず、ぐったりする
・やっとホテルに帰ってきても、明日の準備をしなくてはいけない

読者の方にも、こういう経験をされた方がいらっしゃるのではないでしょうか。私自身、「海外出張、いいですねー!」なんて言われて、心の中で「結構、大変なんですけど」とつぶやいたことは何回もあります。

こうして体力が削られていくと、「英語力」とか「異文化理解力」、はたまた「違いを受け入れる心」なんていうスキルやマインド以前に、そもそも十分なコンディションで仕事ができるのかという問題に突き当たります。

・会議の途中で集中力が切れて、相手の言っていることを聞き落としてしまう
・相手の主張に違和感を抱いても、あまり深く掘り下げる気にならない
・本来なら粘りたいところも、「まあ良いかな?」が頭をよぎる
・相手に押されたときに、踏ん張ることができない

このように、体力の充実がないと、せっかくのスキルやマインドも十分に価値を発揮できません。
「心・技・体」の3つをそろえて仕事の成果を出すためにも、まずは体力や健康への配慮が必要なのです。

家庭や私生活の安定について

この「心・技・体」、私が研修の中でよく使う言葉なのですが、常々「体」とはフィジカルな意味での体力だけでなく、家庭や私生活をうまく回すことも含めた「広義の『体』」である、と説明しています。

理由はシンプルです。
家庭や私生活で心配事があるとなかなか仕事が手につかないもの。プライベートが安定していることはスキルやマインドを発揮するための基礎であり、その意味では前のセクションで触れたフィジカル的な体力と同じだからです。

読者の皆様にも、例えば以下のようなことで仕事が手につかない経験をされた方がいるのではないでしょうか。

・自分あるいは配偶者に病気が見つかった
・夫婦関係が険悪になっている
・隣家あるいは上階や下階とトラブルが生じた

そして子ども。子どもはかわいいものですが、何かとトラブルや心配事を運んでくる存在でもあります。

・子どもが学校に行きたくないと言っている
・娘に不審者が付きまとっている
・子どもが好ましくない仲間と交流しているようだ

こういったトラブルや心配事をうまくコントロールするために最も重要なのは、普段から家庭や自分の身の回りに目配りをしていることだというのが私の考えです。

確かにもらい事故など突発的な事象に遭遇することもありますが、多くのことは1日や2日で突然生じるものではありません。

健康面であれ、夫婦関係であれ、子どものことであれ、普段から家庭の運営や子育てに関与していれば、小さな違和感に気づくはず。
その違和感はおそらく正しいので、芽が小さいうちに摘んでおくことが、結果的に仕事の面でもプラスに働くのです。

体力維持のためのマインドセット

ご存知の通り、多くのエグゼクティブやビジネスパーソンにとって、ジムやジョギングで体力維持(あるいはストレス解消)に努めることは一般的になっており、そのための時間を意図的に作り出すこともごく普通です。

また、父親が家庭や子育てに積極的に関与することが当たり前になっている国も多く、私にはこういった姿勢が前のセクションで触れた家庭や私生活の安定につながり、結果的に仕事面でもプラスに働いていると感じられます。

そうであるならば、何より重要なのは「始めること」と「続けること」。
しかし、「やらないとなぁ」という義務感では長続きは困難です。

もしあなたがそういうタイプなら、ぜひ「グローバルに躍動するための基礎を作っている」あるいは「将来の飛躍のためにバネの力をためている」のように、前向きなマインドセットに切り替えて取り組むことをおすすめします。

そして、そんなマインドセットがあたりまえになり、意識する必要すらなくなったとき、きっとその人は真のグローバル人材にかなり近づいているはずです。

本稿が、3年後あるいは5年後の皆さんの飛躍に少しでも役に立てば嬉しい限りです。

<プロフィール>

江上 徹(えがみ・とおる) 
Leapfrog合同会社 代表社員
公認会計士
大学卒業後、電機メーカー、監査法人、広告代理店でキャリアを積み、2021年に独立起業。Leapfrog合同会社を設立し、代表社員に就任。
「日本人のポテンシャルはとても高い。まだまだ飛躍できる」という固い信念のもと、海外展開している企業あるいは海外展開をもくろむ企業を主なクライアントとして、「普通の日本人」が海外で戦うための必携スキルである「英語・ファイナンス・文化理解」をパッケージ化した人材育成プログラム「Altus Leap」を提供している。
HP:https://altusleap.com/
Mail:contact@altusleap.com
X:https://x.com/imageruto


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