これから会計士・税理士を目指す人へ~荒井優美子先生からのメッセージ 【第3回】資格は絶対に必要か? もし試験期間が長期化したら


公認会計士・税理士 荒井優美子

勉強期間と合格者の年齢層

公認会計士試験の合格には、試験勉強の開始から平均で2年から3年掛かると言われています。少し古いデータになりますが、2009年12月の合格者アンケート(出願者数21,255人、最終合格者数2,229人(10.5%)では、大学在学中に合格した者(全体の30.6%)の平均年齢22歳、ピーク年齢22歳、就職せずに勉強して合格した者(全体の37.6%)の平均年齢25.4歳、ピーク年齢24歳であったことがと報告されています。2009年の頃に比べて、近年は大学在学中の合格者が全体の40%前後を占め、増加傾向にありますが、合格者の年齢層(2025年合格者)では20歳以上25歳未満が61.2%、25歳以上30歳未満が26.3%であることから、就職せずに勉強して合格した者は以前と変わらず高い比率を占めていることが考えられます。

2009年12月の合格者アンケートで、就職せずに勉強して合格した者の合格年齢の内訳では、24歳をピークとして逓減しているものの、27歳で50人を超えています。公認会計士試験は、科目範囲が多く、試験時間・日数が長いことから、いくら実力があっても受験時の状況によって合格できないことが想定されます。さらに、卒業後に受験を継続する場合は、同級生が既に社会人となっている状況も、受験の精神的なプレッシャーとなると思います。すなわち、実力もさることながら、体力と精神力、更に運も試験の合否を左右すると考えられます。

そこで、今回は試験期間が長期化する場合の対応について最近の監査法人等の状況も踏まえて考えてみたいと思います。

公認会計士試験の受験と就職

在学中から継続して勉強を継続する場合、あるいは卒業から勉強を開始する場合、24歳か25歳で合格できれば、標準的な試験期間内での合格ということになります。また、在学中に合格した同級生から2〜3年遅れての就職となるため、それほどのギャップは感じられないと思います。

一方で、試験勉強期間が4年目を迎える場合、将来の合格への不安が高まるとともに勉強へのモチベーションが下がり始め、いつまで試験勉強を継続するべきかとの悩みも出てくる受験生の方もいらっしゃるかと思います。ネット上では、「諦めずに頑張れば合格できる」とか、「〇回受験しても受からなかったら撤退すべき」等の体験記やアドバイスが溢れていますが、受験者それぞれで状況も立場も異なりますので、一概にどうすることがよいとは言えないでしょう。

重要なことは、将来自分がどのようなキャリアを目指そうと考えているのか、資格取得はそのキャリアにおいてどのように位置づけられるのかという明確なアイデアを持つことです。企業の外部監査人として働きたいと思えば、公認会計士資格は必須ですが、それ以外の目的であれば、公認会計士資格が必須ということもありません。

資格取得はあくまでもキャリア形成の一つの手段として考え、柔軟な姿勢で試験勉強に取り組むことも、精神的なプレッシャーを軽減させる方法の一つかと思います。資格試験の受験にありがちなことですが、受験期間が長引くにつれて、試験に合格すること自体が目標になり、受験を諦めることをネガティブに感じる受験生もいらっしゃるのではないでしょうか。

大学卒業後の試験勉強期間は、学校や企業等のコミュニティから半ば隔絶されたような環境にあるため、精神的な負担も大きくなります。初回の受験からすでに3~4年以上経過している場合は、その後の方向性について、いくつかのシナリオを考えておくことも有用だと思われます。

受験生の立場での監査法人等での働き方

近年は、人手不足や多様な人材の登用のために、一部の大手監査法人や税理士法人でも無資格や受験経験が無い場合であっても、有期労働契約者として積極的に採用する傾向が見られます。無期労働契約者、すなわち正社員においては柔軟な働き方(時短、介護休暇、その他)がすでに導入されていますが、有期労働契約でも週単位又は年単位で労働時間を柔軟に設定できる仕組みが導入されています。週3日労働、試験前の数ヵ月間を休暇とする働き方も認められているようです。

税理士法人であれば申告業務の補助が主な仕事とされ、収入を得ながら試験勉強を進められる一方で、実務での経験も積めるメリットがあります。同じ境遇の仲間との交流で、さまざまな情報交換ができるほか、試験勉強期間の孤立感からも解放されます。

ところで、監査法人や税理士法人では、業務のDX化等のために、プロフェッショナルスタッフとして、公認会計士や税理士等の資格者以外の人材(ITスキルその他)も多く働いています。したがって、仮に有期労働契約期間において試験に合格できなかった場合も、試験勉強で得られた知識とIT等の分野の知識を習得することで、法人での新たな業務への転換を図ることも可能性として考えられます。また、新卒ではありませんが、キャリア採用(正社員)として事業法人での経理経験者も資格の有無を問わず積極的に採用しています。

有期労働契約雇用で試験勉強を継続することは、それなりに時間的制約を伴い、就職せずに試験勉強を継続した場合に比べて合格までの期間が長引くことも考えられます。ただし、試験勉強期間が4年以上となる場合は、勉強のマンネリ化やモチベーションの低下を避けられず、生活環境の変化を検討することは非常に意義のあることだと考えられます。

特に、卒業後就職経験が無い受験生の場合は、受験期間の長期化に伴い、企業での労働経験による社会性(ソーシャルスキル)の取得機会も失われることになります。法人に所属して試験勉強を継続することは、そのようなデメリットを補完する意味でも有意なものです。試験勉強の環境を変えることで、自分の適正を再発見することもあるかもしれません。

【プロフィール】

荒井優美子(あらい・ゆみこ)
公認会計士・税理士
一橋大学法学部卒業後、コンサルティング会社勤務を経て公認会計士資格を取得。大手監査法人、大手税理士法人勤務後、米国留学(コロンビア大学国際公共政策大学院(MIA)、ニューヨーク大学ロースクール(LLM))を経て、大手税理士法人勤務。2025年7月より非常勤として勤務。 日本公認会計士協会の租税調査会専門委員(出版部会)、租税調査会法人税部門専門委員、修了考査委員(税務実務担当、2021年~2025年)。


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