登川先生に聞く! 秋から目指す日商簿記1級スタートガイド


登川雄太(CPAラーニング簿記検定講座講師)

【編集部より】
読書の秋、スポーツの秋など、何かに取り組むのによい季節になりましたね。読者の方の中には、今年は「勉強の秋」として、資格・検定への挑戦を考えている人もいるのではないでしょうか。
そこで、今回は会計系資格スタートガイドとして、これから勉強を始める方に向け、「何から始めたらよいか」をアドバイスいただきます。よいスタートダッシュが切れるように、ぜひ参考にしてください!

こんにちは! CPAラーニングで簿記検定講座の講師をしている登川です。
9月に入り、だんだんと涼しい季節が近づいてきました。スポーツの秋、読書の秋、食欲の秋、そして「簿記の秋」とも言える、勉強に集中しやすい時期の到来です。

このような簿記の学習に最適な季節だからこそ、日商簿記1級という高い目標に挑戦を始めるのはいかがでしょうか。今回は、この秋から日商簿記1級の学習を開始する方々へ向けて、「合格を掴むための5つのアドバイス」をお届けします。

1 簿記3級・2級とは「質的に違う」試験と心得る

まず知っておいてほしいのは、日商簿記1級は3級や2級とは「質的に違う」試験だということです。簿記3級や2級に合格するうえでは、解き方を覚えたり、模擬試験を繰り返し解いて出題パターンを身につけたりする学習法も有効でした。一方、簿記1級では、その勉強法だけでは通用しません。仮に、「過去問20年分を完璧にした!」としても、本番では「全然解けない…」ということが起こりうるのです。

じゃあ、「20年で足りないのなら30年分やればいいのか?」というと、そうではありません。簿記1級では、過去に出題された問題や模擬試験とは異なる問題が出題されるからです。次にあなたが受ける試験では、過去問と違う問題が出てくるのです。つまり、簿記1級に合格するには、初めて見る問題に対応する力が必要になります。

もちろん過去問や模擬試験を解くことは重要ではありますが、それをただ繰り返し解くだけでは十分ではないのです。「なぜこのような処理をするのか」という背景まで理解し、さまざまな出題に対応できる力を身につけることが重要です。

2 広大な範囲を長期にわたって学ぶ覚悟を持つ

日商簿記1級は、財務会計と管理会計の2分野から、非常に幅広い範囲から出題されます。したがって、学習範囲を1周するだけでも、かなりの時間が必要です(ちなみに、CPAラーニングの講義時間は100時間以上、テキストは5分冊にも及びます)。

計画的かつ継続的に日々の学習を進めなければ、試験日までに間に合わなくなる可能性があります。秋から翌年6月の試験までは約10ヵ月ありますが、「10ヵ月もある」と考えるのではなく、「10ヵ月しかない」という意識で、早めに学習をスタートさせることをおすすめします。

また、学習範囲が広いからこそ、「まずは講義をすべて視聴して、復習は後からまとめて行う」という学習方法はおすすめできません。復習を後回しにすると、せっかく学んだ内容を忘れてしまい、後から復習する際に多くの時間が必要になってしまいます。

簿記3・2級では通用していた、「試験直前に追い込む」という勉強法を1級でやろうとすると、おそらく、その量に圧倒されて「逆に追い込まれてしまう」でしょう。長期間かけて実力を上げていく。そのために、講義を受けたら、その都度復習する。この習慣を、学習の最初から身につけておきましょう。

3 目指す目的を明確にし、学習の指針とする

日商簿記1級は、簿記資格の最高峰ともいえる難関資格です。その分、学習は決して楽な道のりではありません。学習量の多さに加えて、内容も難しくなってくるため、「もう勉強したくない」「自分には無理かもしれない」と感じることもあるでしょう。そんなときに支えになるのが、「なぜ自分は簿記1級を目指すのか?」という目的意識です。

簿記1級を取得することは、資格そのものの評価だけでなく、会計・財務に関する高度な知識を身につけることにもつながります。学習した内容は、経理・財務などの仕事はもちろん、企業の数字を読み解くうえでも役立ちます。キャリアアップや仕事の幅を広げることにつながるなど、簿記1級の学習は、自分自身の可能性を広げるきっかけにもなります。

だからこそ、学習が苦しくなったときには、「なぜ1級を目指しているのか」を思い出してみてください。目の前の一問を解くことだけでなく、その先にある自分の目標を意識することが、長い学習を続ける力になります。

4 合否の鍵を握る「計算力」を最優先で鍛える

簿記1級では、計算問題だけでなく、理論問題も出題されます。 しかし、配点の多くは計算問題が占めています。そのため、実際に得点を積み上げていくためには、計算問題に対応する力が非常に重要です。

特に、商業簿記・会計学では複雑な会計処理を正確に計算する力、工業簿記・原価計算では、与えられた資料を読み取り、適切な計算を行う力が求められます。計算力が不足していると、合格点には届きません。

もちろん、ここでいう「計算力」は、電卓を速く叩く能力のことではありません。速く叩けるに越したことはありませんが、簿記1級は電卓を叩くスピードを競う試験ではないので、そこで合否は分かれません

ここでいう計算力とは、問題を見たときに、問題の意図を正確に読み取り、必要な知識を思い出し、適切な解き方を選択して、正確に答えを導き出す力のことです。その力を高めるために、「なぜこのような処理になるのかを理解」したうえで、「実際に手を動かして問題を解く」、そして、「それを繰り返す」ことを大切にしてください。

5 試験範囲の改正点に注意する

2027年6月の試験より、試験範囲が変更されます。特に大きな影響があるのは「小切手・手形」「リース」の2つです。

まず、小切手・手形に関する論点が廃止されます。これにより、未取立小切手や未取付小切手といった論点を学習する必要がなくなり、受験生の負担は減少します。

次に、リース会計については、新しいリース基準が試験範囲となり、現行のリース基準(旧リース)は範囲外となります。したがって、旧リースの学習は不要である一方、新リースを学習する必要があります。ただし、旧リースを学んでおくと新リースの内容理解が容易になる側面もあるため、前もって学習しておくことも一つの手です。

さいごに

日商簿記1級は難しい試験ですが、乗り越えた先には、その苦労に見合うだけの高い価値があります。決して楽な道のりではありませんが、自分の可能性を広げるためだと考え、ぜひ挑戦を続けてください。私が講師を務めているCPAラーニングでは、日商簿記1級対策の講義や教材ダウンロード、過去問対策などをすべて無料で提供しています。また、学習相談室といったイベントも随時開催しており、多くの受験生が集まります。一緒に、合格を目指して頑張りましょう!

【執筆者紹介】
登川 雄太(のぼりかわ・ゆうた)
CPA会計学院公認会計士講座講師、CPAラーニング簿記検定コース講師。専門は財務会計論。
1986年生まれ。慶應義塾大学3年次に公認会計士試験に合格。慶應義塾大学経済学部卒業後、監査法人トーマツを経て、現職。CPA会計学院では、簿記入門講義(簿記3級の内容)から公認会計士試験の財務会計論まで広く教えている。「楽しくわかる、わかるは楽しい。」をコンセプトにした簿記・会計をわかりやすく解説するウェブマガジン『会計ノーツ』を運営。
<主な著書>
世界一やさしい 会計の教科書 1年生』ソーテック社、2021年
この1冊ですべてわかる 財務会計の基本』日本実業出版社、2024年
・Xアカウント:@nobocpa


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