マネーフォワード経理本部が挑む!新リース会計基準の早期適用~第6回:【実践】知識のインプット


松岡俊(株式会社マネーフォワード執行役員 グループCAO)

【編集部より】
2027年から新リース会計基準が強制適用となります。対応に追われている企業は多いのではないでしょうか? 本連載では、新リース会計基準を早期適用したマネーフォワード経理本部の実例を解説していただきます。

第1回:改正の概要と早期適用をした理由
第2回:リースの範囲はどこまで?
第3回:新リース会計基準の導入が困難な理由
第4回:IFRS第16号導入プロジェクトの教訓
第5回:【実践】プロジェクトの可視化
第6回:【実践】知識のインプット
第7回:【実践】意思決定の加速とリース期間の決定方針
第8回:【実践】契約書の網羅的な洗い出し
第9回:【実践】全社連携と監査法人との協議
第10回:【実践】システム対応とその他の影響の考慮

新リース会計の知識習得

新リース会計基準は複雑であるため、プロジェクトメンバーの知識習得が初期段階で不可欠でした。

この目的を達成するため、短期間で効率的に知識向上を図り、早期に具体的な作業に着手することを目指しました。
特に、以下で紹介するのツールを複合的に活用することで、知識のインプットを加速させました。

外部の専門コンテンツの活用

まず、CPAラーニング様が提供する白井先生による動画コンテンツは、専門的な会計基準の基礎から応用までを体系的に学ぶ上で非常に有効でした。白井先生の解説は、複雑な概念を分かりやすく、かつ実践的な視点から説明してくれるため、メンバーは短期間で深い理解を得ることができました

https://www.cpa-learning.com/

YouTubeで公開されている様々な専門家の解説動画の活用

次に、YouTubeで公開されている様々な専門家の解説動画も活用しました。これらの動画は、特定の論点に特化した解説や、異なる視点からの解釈を提供してくれるため、多角的な視点からリース会計基準を理解するのに役立ちました。私が主に参照したチャンネルは以下の通りです。

公認会計士YouTuberくろいちゃんねる https://www.youtube.com/@kuroi-cpa
かいけいやチャンネル https://www.youtube.com/@かいけいやチャンネル
EY Japan https://www.youtube.com/@EYJapan

社内ナレッジの活用

私自身が過去に登壇したセミナーの録画も部内で共有しました。

これは、プロジェクトメンバーが抱く可能性のある疑問点を事前に想定し、その解決策を提示する形で構成されており、実務に即した知識の習得に貢献しました。

新基準や税制改正対応プロジェクトでは、口頭説明による工数が課題となりがちです。
本プロジェクトでは、動画を活用し、メンバーが各自のペースで繰り返し視聴できるようにしました。
その結果、リース会計基準の基礎から応用までを効率的に習得し、チーム全体の理解度が飛躍的に向上し、プロジェクトの大幅な加速に繋がりました。

特に、視覚情報は複雑な概念や具体的な仕訳処理を直感的かつ深く理解する上で非常に有効です。
活字だけでは伝わりにくい部分を動画が補完することで、メンバー間の知識レベルのばらつきを最小限に抑え、均一な理解度を確保できました。

他部門メンバーの知識習得

新リース会計基準への対応は、経理だけでなく全社を巻き込むプロジェクトでした。
この変革を円滑に進めるため、私たちは新基準が経理部門以外の部門に与える影響を明確に伝えることに注力しました。

例えば、経理内部では「使用権資産」という専門用語が日常的に使われますが、他部門のメンバーには馴染みが薄く、理解の障壁となる可能性がありました。

生成AIを活用して直感的に理解できるように工夫

そこで、私たちは生成AIを活用し、この用語を分かりやすい言葉で解説し、その概念を直感的に理解できるよう工夫しました。

社内SNSでの共有

さらに、上記の解説を社内のナレッジ共有ツールで従業員に公開した結果、経理以外もリース会計の変更が自身の業務にどう影響するかを容易に把握できるようになりました。

これにより、プロジェクトへの協力体制をスムーズに構築することができました。

【著者プロフィール】
松岡 俊(まつおか・しゅん)

株式会社マネーフォワード
執行役員 グループCAO 
1998 年ソニー株式会社入社。各種会計業務に従事し、決算早期化、基幹システム、新会計基準対応 PJ 等に携わる。英国において約 5 年間にわたる海外勤務経験をもつ。2019 年 4 月より株式会社マネーフォワードに参画。『マネーフォワード クラウド』を活用した「月次決算早期化プロジェクト」を立ち上げや、コロナ禍の「完全リモートワークでの決算」など、各種業務改善を実行。中小企業診断士、税理士、ITストラテジスト及び公認会計士試験 (2020 年登録)に合格。


関連記事

ページ上部へ戻る