わたしの独立開業日誌 #税理士・髙田葵


【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。

育児休暇から復帰1年後に独立開業

はじめまして、奈良県生駒市の税理士の高田葵です。
私は子供を出産して仕事に復帰してから1年後に開業しました。
ここでは、私の独立開業経験についてご紹介します。

事務所のロゴ

開業のきっかけは2つの「もどかしさ」

開業のきっかけは、主に2つの「もどかしさ」です。
1つ目は、今まで当たり前だった往復約2時間の通勤時間を無駄だと感じるようになったこと。
子育てを始めた私は、この2時間があれば、もっと仕事ができるし、子供との時間も作れると思うようになりました。

2つ目は、雇用されるサラリーマンとしての「決められた勤務時間」です。
保育園に子供を預けて最初の3カ月、月の半分は子供が熱を出して休みました。
みるみる減っていく有給残日数、思うように仕事ができないもどかしさ、会社に対する申し訳なさに苦しみました。

開業は「自由な働き方」への答え

この2つの悩みを解決するのが独立開業でした。
事務所は自宅から15分ほどの場所に設け、勤務時間は30分延長、かつ保育園のお迎えは30分早くすることができました。
子供が熱を出したら休めばいいし、お迎えの要請が来ても帰ればいいだけ。誰の許可も、残りの勤務時間を気にする必要もありません。

開業してからは、いつ子供が体調を崩して休んでもいいように、かなり前倒しで仕事をこなし、全体の仕事量もコントロールするようにしています。
日々のスケジュールに関しても月曜はインプットの日、アポイントは火曜から木曜、金曜は予備日と決めています。
自分で自由に決められるのがとても楽しいです。

私を独立へと導いた「開業TODOリスト」

今考えると、独立開業一択なのですが、開業前は私も不安でいっぱいでした。
そんな私の背中を押してくれたのが、開業TODOリストです。

「もし開業したら」と想像しながら具体的にやるべきことをリスト化する作業が、めちゃくちゃ楽しかったんです!
作り終えたときには「もう開業するしかない」と思いました。
開業するか迷っている方は、ぜひ自分だけの開業TODOリストを作ってみてください。

量をこなした経験が生きる

「ワークライフバランス」が重視される時代ですが、どこかで「量をこなす」ことは大事です。
若いうちに多くの経験を積んだからこそ、効率化を考えるようになり、その経験が開業してから非常に役立っています。

今まさに量をこなす時期にいる方は苦しいかもしれませんが、そこを乗り越えると自分の仕事のスタイルが確立できて、仕事が楽しくなるはずです。

信頼できる人間関係の重要性

税理士法人での勤務時代に築いた、社労士さんや先輩税理士との良い人間関係も、開業後の大きな財産です。
開業してから出会う人はビジネス目的で近づいてくることもあり、相手を信頼するまでに時間がかかります。
だからこそ、心から相談できる人の重要性に気づかされます。

幸いにも私は、前職の先輩税理士が良い方ばかりで、「何が聞きたい?」「うちの報酬規程を参考に持って帰る?」と言っていただけるような環境です。
社労士さんは提携先になっていただき、労務の相談が来たときにご紹介しています。

開業費用は意外とシンプル

開業にかかった初期費用は、驚くほどシンプルでした。

事務所はコワーキングスペースを利用したので、約20万円のパソコンを購入した程度です。私は名刺やホームページなどの営業ツールを自分で作成しました。
もちろん外部に依頼しても良いと思います。

いずれにせよ常に軌道修正できるようにしておくことが大切だと実感しました。

実際に開業してみると、想定と違うことが出てきます。
例えば私の場合、新規の面談はオンラインがほとんどで名刺交換をする機会があまりなく、デジタル名刺を発注することにしました。
ホームページに関しては開業後、何回更新したか数え切れません。

オフィスの写真

奈良という地方で、クラウド会計に特化

老舗の税理士事務所が多い奈良という地方での開業だからこそ、クラウド会計の導入支援に特化することにしました。
税理士法人での勤務時代にfreeeを一度も使ったことがなかったので、開業1カ月目は徹底して勉強しました。
研修や検定を受け、デモ環境や自分の会計データを利用して操作を覚える日々。

実際に使ってみると、ペーパーレスで業務効率化を図りたい私の考え、そしてその考えに共感して下さるお客様、双方にとって、かなり相性が良かったです。

「自分で決める」ことの楽しさ

開業してみて、正直に言って仕事が100倍楽しくなりました。
それは自分で決められる楽しさがあり、思いついたらすぐ行動できることが私に合っていたからです。

組織にいると、新しいことを始めようとすると時間がかかりますよね。
税理士資格があれば、好きな働き方を選ぶことができます。実際に開業するかはさておき、この選択肢を持てるか持てないかは人生において大きな違いです。

税理士試験は長期化しがちで、淡々と勉強をこなしている人でも、どうしても勉強をする気になれない瞬間があると思います。
そんなときは、税理士になったらどんな日々を過ごすのかを想像してワクワクしてほしいです。

執筆者プロフィール
髙田葵(たかだ・あおい)

髙田葵税理士事務所代表。京都市出身。日本生命で4年間の営業経験を経て、簿記の知識ゼロから税理士を目指し、2025年4月に生駒市で独立開業。結婚を機に移り住んだ生駒の環境と人との出会いに魅力を感じ、地域に根ざすことを決意。クラウド会計を中心にバックオフィスの効率化を支援し、経営者が本業に集中できる体制づくりを共に構築。親しみやすく話しやすい雰囲気を心がけ、身近に相談できるパートナーとして、経営の安心と信頼を届けている。

弊所ホームページ:https://takadaaoizeirishizimusyo.jimdosite.com/


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