
諸角 崇順(かえるの簿記論・財務諸表論講師)
【編集部より】
2025年8月5日(火)〜7日(木)の3日間にわたり、令和7年度(第75回)税理士試験が実施されました。
そこで、本企画では、「簿記論」・「財務諸表論」・「法人税法」・「相続税法」・「消費税法」について、各科目に精通した実務家・講師の方々に本試験の分析と今後の学習アドバイスをご執筆いただきました(掲載順不同)。ぜひ参考にしてください!
はじめに
受験生のみなさま、猛烈な暑さと(北陸地方が特にひどかったですが)三日目の豪雨の中の本試験、本当にお疲れさまでした。
毎年繰り返されますが、本試験直後はSNSに受験生たちの本試験問題に対するいろいろな感想が書き込まれます。
ただ、どうしても本試験直後の興奮冷めやらぬ状態での書き込みとなりますので感想が極端になりがちです。
ということで、少し時間が経ったこのタイミングで冷静に本試験を振り返ってみましょう。
全体的な感想
理論に関しては、どこの資格学校(受験予備校)でも授業やテストでやりこんでいる論点でしたので、基本に忠実に勉強していた受験生にとっては比較的解答しやすかった問題でした。
また、計算に関しても一部の捨て論点(例えば、繰延税金資産、法人税等調整額、販売費及び一般管理費など)をうまく見極めて捨てることができていれば40点以上は取れる問題だったと思います。
このように理論・計算とも難易度が総じて低かった上、さらに、試験時間も比較的余裕がありましたので、ボーダーはかなり高得点になることが予想されます。

ちなみに「昨年の合格率が8.0%だったから、今年の合格率は大幅に上がるはず!」なんていうことがまことしやかにささやかれていますが、そうとは断言はできません。
また、昨年の本試験が平均的合格率(15%前後)であれば合格していたはずの受験生(上位8%~15%)が今年の本試験に再チャレンジしているので、仮に今年の合格率が20%とした場合でも、初学者の方が入り込む余地は(単純計算ですが)13%前後になります。
よって、大手の資格学校が公表している合格確実ライン全てを超えていても安心はできません(毎年のことですが資格学校が公表している合格確実ラインを超えていても不合格になる人はたくさんいます)。
できる限り客観的かつ冷静に自分の合否の見通しを判断してくださいね。
ちなみに、合否を分けるポイントは、①理論の論述部分の正確性と②計算のケアレスミスの少なさ、になるのかな、と思っています。
ちょっと気になったこと
昨年、下記のように書かせていただきました。
令和3年度の本試験から税理士試験委員の体制が大きく変わりました。それまでは、第一問のご担当として学者先生お一人、第二問のご担当として学者先生お一人だったのですが、試験委員の体制が変わってから、どうも第一問、第二問ともお二人ずつでご担当されているような気がします。
もし、この仮定があたっているとすると、理論の作問者は4名となり、ヤマカケはほぼ意味をなさないことになるのかな、と(会計のいたるところから出題されることになるため)。自分勝手なヤマカケをせず、コツコツやった人から受かりそうですね。
令和3年度税理士試験委員、発表!-税理士試験体制が大きく強化される | 会計人コースWeb (kaikeijin-course.jp)
今年の本試験でも理論問題がかなり細分化され、多岐にわたり出題されています。
・概念フレームワーク
・資産除去債務
・収益認識基準
・退職給付会計
・ソフトウェア
この傾向は来年も続くと思われますので、昔に比べヤマカケがしにくくなってきています。
そもそも資格学校のテキストは、膨大な試験範囲の中で出題可能性が高い論点を選んで作成されていますので、テキストに載っている時点で、すでに相当なヤマカケがされているわけです。
にもかかわらず、勉強が間に合わなかった等の理由で、直前期に入り、受験生がさらに勝手なヤマカケをしたりしますが、それはもう隕石が直撃するぐらいの確率の低さになってしまいます。
そんな事態に陥ることのないよう、特に初学者の方は自己判断でテキストの論点を取捨選択せず、講師の言葉を信じてコツコツ理論を理解・暗記していきましょう。
合格確実点に達した方へ
実務での使用頻度を多少考慮した上で、学びたい!!と思う税法科目を選びましょう。
税法科目の勉強の辛さは簿財の比ではありません。
当然、大きなスランプに見舞われることも多くなります。
そんなとき、他人から勧められた税法科目だったら気持ちが続かず受験を諦めてしまうことになります。
なので、自分自身が「学びたい!!」と思える科目を選んでください!!
次回、後編では、再受験になりそうな方へのアドバイスを掲載します。
<執筆者紹介>
諸角 崇順(もろずみ・たかのぶ)
大学3年生の9月から税理士試験の学習を始め、23歳で大手資格学校にて財務諸表論の講師として教壇に立つ。その後、法人税法の講師も兼任。大手資格学校に17年間勤めた後、関西から福岡県へ。さらに、佐賀県唐津市に移住してセミリタイア生活をしていたが、さまざまなご縁に恵まれ、2020年から税理士試験の教育現場に復帰。現在は、質問・採点・添削も基本的に24時間以内の対応を心がける資格学校を個人で運営している。
ホームページ:「かえるの簿記論・財務諸表論」