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江上 徹(Leapfrog合同会社 代表社員・公認会計士)
【編集部より】
会計士試験に合格して、あるいは新しい年になって、今年こそ英語を身につけようという方も多いと思います。本連載では、4回にわたって、海外展開をする企業に英語研修等を行う江上徹先生に連載していただきます。
第1回 使える英語を身に付けるために私がやったこと
第2回 ディクテーション
第3回 シャドーイング・リプロダクション
第4回 他にもいろいろ一人でできる勉強法
はじめに
英語には「読む」「書く」「聞く」「話す」と4つの技能があります。
このうち、最も大切なのはどれだと思いますか?
もちろん意見百出だとは思いますが、この連載のテーマでもある「英語の議論に割って入る」英語力を身につけるという観点から、私は「聞く」が最も大切だと考えます。
私が初めて海外で生活したアメリカ留学のときにこんなことがありました。
西の空に望郷の念を
私が初めて海外で生活したのは、大学の交換留学制度により、アメリカはイリノイ州にある小さな大学(4学年で1,000人程度)に通った時のことでした。
大学の寮に入り、近くの商店街で生活に必要なものを買ってきたのですが、その中の卓上ランプに初期不良があったらしく、コンセントにプラグを差し込んだ瞬間にバチっと火花が飛んで、なんと寮全体が停電になってしまったのです(日本を出たことがない若者が「Made In Japanの信頼性」を肌で感じた瞬間)。
私は寮に着いたばかりで知り合いもおらず、何をしたらいいのかオロオロするばかりでしたが、やがて異変を察知した寮の管理者が私の部屋にやってきました。
英語が未熟だった私はその管理者が何を言っているのかイマイチわからなかったのですが「$&%# ボブ $#%& !」と「ボブ」だけは聞き取れたのです。
そうか、この人はボブというのだな、こちらも仁義を切らねば。満面の笑みで「My name is Toru!」と答えたところ、その管理者は困惑した表情で筆談に切り替えたのです。
「この電球(=Bulb)はショートしている」あ、BobじゃなくてBulbと言っていたのか…「My name is Toru」なんてアホな返答をした自分が恥ずかしくて、管理者が去ったのち、21歳の若者は一人さびしく寮の窓から日本はあっちかと西の空を眺めたのでした。
これ、カタカナだと「バルブ」ですけど、英語の音は「バオブ」です。こんな風にカタカナ英語とリアル英語のギャップに戸惑った経験をした方もいらっしゃるでしょう。
「聞く」ができないと「バルブ」さえわからない!
「そんなの文字起こしアプリを使えばいいじゃーん」という声も出ると思いますが、1対1ならまだしも、5人ぐらいの会議になるとアプリを見ながら議論についていくのは困難です。
まして議論に割り込んで意見を言うなんてムリムリ!
テクノロジーの発達は素晴らしいことですが、いまの時点ではヒアリングをきちんと身につけないと、文字通り「話にならない」のが現実です。
学問に王道なし、ヒアリングに王道あり
では、ヒアリングを強化するには何をすればいいでしょうか?
本稿ではヒアリングの王道中の王道「ディクテーション」を取り上げましょう。
ディクテーションとは、簡単に言えば英語を文字起こしする訓練です。これ、「ディクテーション 無料」などと検索するとたくさんヒットしますので、ご自身で使いやすいものを探していただければいいのですが、私はSpeechlingというサイトにある「英語 ディクテーションの練習」をお勧めします。
画面はこんな感じです。
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使い方は簡単!
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間違えていると…
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正解だと…
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そして、このサイトの良いところは、いろいろなバリエーションでディクテーションすることができる点です。
下にスクロールすると…
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![](https://kaikeijin-course.jp/wp/wp-content/uploads/2025/01/image-33.png)
ここでいくつか留意点を。
・何回繰り返して聞いてもOK!最初は1回で聞き取れないのが普通です
・aとかtheまできちんと聞き取るようにしましょう
・ 一通り文字起こしをしたら、それが文として成立しているかを確認しましょう
3つ目の留意点は意味がわかりにくいと思いますので少し補足しますね。
慣れないうちに多く見られるのですが、英語の聞き取りが細切れになってしまうため、出来上がりの文章が文法的におかしくなっていることがあるのですよ。
例えば、何回か繰り返し聞いて「He」「very happy」「his job」と細切れに聞き取れたとします。
でも「He very happy his job」だと文法的におかしいですよね。
「He is very happy with his job」じゃないといけません。
なので、「よっしゃ、できたぜ!Enter!」の前に、「He very happy his job」で良いんだっけ?なーんか足りない気がする…と、一呼吸おくようにしてください。
リアル・ディクテーションを知っていますか
さて、Speechlingで練習を重ねつつ、もう一つチャレンジしてほしいことがあります。
今日の国際ビジネスでは、いろいろな国籍のメンバーでチームが組成されることが珍しくありません。皆さんも海外関係の仕事をすると、インドや中国など様々な国の人と協働することになるでしょう。
別の言い方をすると、英語の勉強で聞いている「きれいな英語」とは異なるインドや中国などのアクセントに頻繁に遭遇することを意味します。
世界中の英語話者のうち英語ネイティブは2割ほどにすぎず、8割近くは我々と同じNon-nativeなのですから、そういう「変化球」のほうが多いのも当然と言えば当然ですが、やはり慣れてないので最初のうちは何を言っているのか聞き取りに苦労します。
そこでおすすめなのが、私の研修プログラムで「リアル・ディクテーション」と呼んでいる訓練法です。すなわち、英語Nativeだけどスピーチの訓練を受けていない人とか、インドや中国のアクセントで話す人をディクテーションの素材に使うのです。
具体的な学習素材として会計人コースwebの読者にぴったりなのが、外国人CEO/CFOによる決算発表です。日本企業にもCEOやCFOは外国人だという会社がいくつもあります。
その人たちの決算説明動画をディクテーションの素材として使ってしまおうというわけです。
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なお、決算発表という性質上、四半期ごとに新しいものが追加されますのでご留意ください。
また、いろいろな専門用語や業界用語などが出てきますが、それらはわからなくても構いません。
上に挙げたのはあくまで例示であり、他にも多くの外国人CEO/CFOの動画が見つかりますよ!
さあここで。
リアル・ディクテーションの場合、Speechlingと違って「ナイスジョブ!」とか「もう一度トライしましょう」なんてメッセージは出てきませんので、自分のディクテーションが正解なのかわからないという問題に突き当たります。
これに関して採りうる方法は以下の通りです。
・ You Tubeには字幕を出す機能がついているのでそれを使う(ただし、字幕が間違えているときも少なからずあります)
・議事録作成アプリを携帯にインストールして音源を聞かせる(You Tubeの字幕よりは正確性が高い印象があります)
・それでダメならあきらめる(そんなに時間をかけすぎず、次、次!)
結構手ごわいですが、実務にはすごく有用です。Speechlingと合わせてリアル・ディクテーションもぜひやってみてください。
いかがでしたか?
私が学生をやっていた四半世紀前にはネットが生活に浸透しておらず、本屋さんでCD付きの参考書を購入していたのですが、それでも「昔に比べると便利になったねー」と言われたものです。
今は数多くの動画に無料でアクセスできるので、さらに良い環境になっています。
ぜひこの環境を最大限享受して、実際に使えるヒアリングを身につけましょう!
<プロフィール>
江上 徹(えがみ・とおる)
Leapfrog合同会社 代表社員
公認会計士
大学卒業後、電機メーカー、監査法人、広告代理店でキャリアを積み、2021年に独立起業。Leapfrog合同会社を設立し、代表社員に就任。
「日本人のポテンシャルはとても高い。まだまだ飛躍できる」という固い信念のもと、海外展開している企業あるいは海外展開をもくろむ企業を主なクライアントとして、「普通の日本人」が海外で戦うための必携スキルである「英語・ファイナンス・文化理解」をパッケージ化した人材育成プログラム「Altus Leap」を提供している。
HP:https://altusleap.com/
Mail:contact@altusleap.com