【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。
はじめまして。
北海道札幌市の行政書士
北海道札幌市で行政書士をしている羽場葵と申します。
私の独立開業日記が、少しでもお役に立てれば幸いです。
祖父の相続をきっかけに行政書士を目指す
私が行政書士を目指すきっかけになったのは、祖父の相続でした。
相続というものが全くわからない私に、知人が行政書士の先生を紹介してくれました。
私には両親がいません。
そのため、その行政書士との面談には私が出席しました。
そして、「こういう仕事もあるんだなぁ」と興味を持ちました。
調べてみると、受験資格に「学歴不問」の文字がありました。
「高卒の私でも受けられるのか!」と嬉しくなり、すぐに試験に申し込みました。
子育てしながら毎日9時間勉強し合格を勝ち取る
「とりあえず試験がどんなものか体験してこよう!」と、きちんと勉強しないまま2016年の試験を受験しました。
当たり前ですが、惨敗。
緊張と難しさで嫌になり、「やっぱり私には無理」とすぐに諦めました。
その後、試験を受けたことをすっかり忘れて、飲食店で働いていました。
翌年2017年は、試験を受けませんでした。
2016年の試験前にSNSを通じて仲良くなった受験仲間から「合格したよ!」という知らせを受け、行政書士試験のことを思い出していたころ、ちょうど働いていた飲食店が閉店してしまいました。
「これからどこで何しよう…」と悩んでいましたが、「もう一度試験受けてみようかな?」と気持ちが決まりました。
受けると決めてからの2年間は、毎日図書館に通って勉強しました(定休日や土休日は除く)。
子どもを幼稚園に送ったあとに、図書館へ行って勉強し、子どもが帰ってくる15時に帰宅。
その後、子どもが寝た後にも勉強。
毎日9時間は勉強しました。
2018年の試験は、合格の手ごたえがありました。
しかし、記述で思ったよりも点数が取れず、174点で不合格。
「ここまでくれば来年絶対受かる!」と謎の自信を持ち、翌年2019年に合格しました。
アルバイトでお金を貯めて開業
やっと合格できたものの、「さて!開業!」とはなりませんでした。
そもそもお金がなく、開業どころではなかったのです。
アルバイトでお金を貯め、2022年3月に開業しました。
開業後4か月間は、コロナの支援金があった時期で、それなりに忙しくなりました。
しかし、コロナの支援金が終わった途端、なんの音沙汰も無し。
ここから、本格的に営業活動を開始しました。
営業の経験はありませんでしたが、できることはなんでもやりました。
DM
自分の取扱業務は「建設業」だと決めていたので、建設会社をターゲットに絞り、DMを送りました。
建設業許可更新に合わせて送ったり、許可を持っていない会社に送ったり、合計で400通は送りました。
何か1通でも返事があると信じていましたが1か月経っても何も連絡来ず。
飛び込み営業
「これは直接会いに行くしかないかな?」と思い、飛び込み営業に切り替えました。
しかし、訪問しても、10件に1件出てくれれば良いほうです。
チラシを投函して帰るだけの日もありました。
出てくださっても奥様ということがほとんどで、チラシと名刺をお渡しして帰っていました。
その後にご連絡をいただけたのは1人だけでした(それも要件合わずにすぐにお仕事には繋がらず)。
廃業を覚悟
異業種交流会に参加してみたり、19,000部のチラシを撒いていただいたり(11万円!)、開業のご挨拶ハガキを他士業さんに送ってみたり、色々試してみましたがどれもダメでした。
3か月間なにも連絡はありません。
仕事が来ないにもかかわらず、毎月10万近く経費はかかります。
「そろそろ廃業か?」と本気で思いました。
周りにも「廃業すると思う」と話していました。
地道な活動がようやく芽吹く
営業が鳴かず飛ばずな期間が3か月過ぎた頃、他県の行政書士からご連絡がありました。
「札幌のとある行政書士さんが行政書士を辞めるみたいで、引継ぎ先を探しているそう。建設会社45社あるみたいなんだけど…」というお話でした。
夢のようでした。
「神様は見てくれていたのかも!?」と思いました。
二つ返事で引き受け、引継ぎで忙しくなった頃、DMやチラシで営業した先からも徐々に依頼が来るようになりました。
「DMやチラシはすぐに反応はない」とは聞いてはいました。
まさにその通りで、半年以上経つと問い合わせがじわじわと増えていきました。
調べたり電話したりしながら必死に実務をこなす
もちろん、実務に関しては初めてのことだらけです。
建設指導課に毎日何度も何度も電話をしました。
指導課の方からは、「またかよ」と思われていたに違いありません。
依頼者との打ち合わせで「わからない」ということはとにかく避けたいと思いました。
そのため、許可を取れる要件だけは確実に押さえました。
その後の書類作成実務は、調べたり電話したり、必死にこなしました。
手引きを見て、本を読み、ネットで調べ、それでもわからなければ行政庁の担当者に聞きました。
行政庁の方は親切に教えてくれます。
大丈夫です。
おわりに
業務が無事に終わって、「ありがとう!」と言われると、「あぁ、この人のために私は行政書士になったのだな」と毎回本気で思います。
依頼を頂けるのは、当たり前のことではありません。
「こちらこそありがとう!」と思える大切なお客様とたくさん出会えています。
いま、私は行政書士をやっていて幸せです。
時間の融通が効くし、1つひとつの仕事の単価も高いと感じています(その分責任はありますが)。
営業がしっかり依頼に結びつくこともわかったので、「あとは自分が頑張るのみ」です!
今後も、少しの不安とたくさんのワクワクを持って、毎日お仕事をしていきます!!
<プロフィール>
羽場葵(はば・あおい)
行政書士あおい事務所所長。
北海道石狩市出身(海のすぐ近くで生まれ育ったので海事代理士も取得)。20歳で結婚をきっかけに札幌市民になる。社会人経験がまともにないまま行政書士として独立開業して3年目。小学5年生の子どもを持つ母でもある。
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