【編集部より】
さる11月29日(金)、令和6年度税理士試験の合格発表が行われました。合格発表をうけて、受験戦略を再検討する人、同じ科目の受験に再挑戦する人などさまざまだと思います。
来年の本試験まで、どのように学習計画を立てればよいかなどについて、主要科目ごとにアドバイスを頂きます。本記事を参考に、合格に向けてよりよいスタートを切りましょう!
合格率8%という大変厳しい年だが…
先日、合格発表がありました。
合格されていた方、本当におめでとうございます!
他方、残念な結果だった方は気を落とされているかもしれませんね。
特に今年は「合格率8%」。
全11科目の中で、財務諸表論の合格率が最も低く、大変厳しい戦いでした。
ただ、ご存知のように、すでに多くの受験生が来年の本試験に向けて勉強しています。
私がTACで担当するクラスでも、5月や9月スタートの方々が、一生懸命、受験勉強に取り組んでいます。
つまり、不合格で気を落としている場合ではありません。
来年の本試験に向けての戦いは、すでにもう始まっているのです。
気持ちを切り替えて、一日も早く勉強をスタートさせましょう!
何からはじめるか
「何からはじめるか」
受講生の方から、私もよく質問されます。
まずは、お持ちの計算個別問題集を一通り解かれることをおすすめします。
なければ、市販の個別問題集(基本的なレベル)で良いかと思います。
間違えた箇所の周辺知識を補強
解かれる中で間違えた箇所については、お持ちのテキストで確認してくださいね!
この「ひと手間」を入れられるかどうかで、効果は全く異なってきます。
なぜかと言うと、間違えた箇所はおそらく、その問題だけがわからなかっただけではなくて、その周辺の知識がぼんやりしていると考えられるからです。
例えば、「株式交付費」の問題を間違えたとしたら、おそらく「繰延資産」の知識があやふやになっているかもしれません。
ですから、ただただ問題を解いて間違えた箇所の解答解説を見て終わりにすると、全く同じ問題であれば解答できるかと思いますが、少し角度を変えて「繰延資産」について聞かれたら、解答できないことが予想されます。
計算の総復習時には理論の確認も怠らずに!
また、財務諸表論は半分が理論の出題です。
テキストを見て「繰延資産」の会計処理を確認するとともに、お持ちの理論テキストで「繰延資産」について再度確認されると良いでしょう。
そもそも「株式交付費」について間違えていたわけですから、「繰延資産の理論は完璧だ!」というわけではないでしょう。
「計算と理論を合わせて確認」しておきたいところです。
間違える度に、計算テキストを開いたり、理論テキストで確認したりすると、たくさんの時間が必要になります。
ですが、とても大切な時間ですし、何よりいい加減に次々進んでみても、また類似の問題を解いたときに間違えるわけです。
確認を怠り、放っておいた箇所は「将来、必ず課題としてやってきます」。
確認作業を先延ばしにせず、今やれることを全力でやりましょう!
総合問題にもチャレンジ
一通り、個別問題集が確認出来たら、時間を空けて解き直してみることと、総合問題にもチャレンジしていきましょう。
総合問題も、もしお持ちでなければ市販の問題集を使ってください。
まずは「基本レベル」が良いかと思います。
「基本レベル」をしっかりマスターしてから「応用レベル」にステップアップしましょう。
ご存知のように、財務諸表論の計算は基本的に総合問題です。
ですから「総合問題でいかに点数を取れるのか」が合否の分かれ道だと思います。
繰り返し、総合問題を解かれて実力アップに努めてください。
問題を解いた際に間違えた時は、テキスト等で確認することも忘れずに!
理論テキストをじっくり読み返す
お持ちの理論テキストをじっくり読み返してみると良いかと思います。
本試験終了後からあまり理論に触れていない方ですと、結構忘れている部分もあろうかと思います。
ですから、理論テキストを一通り読まれることをおすすめします。
読みながら思い出してくることもあると思いますし、新たな発見もあるかもしれません。
一通り読んでから、個別論点を覚えていくのが良いだろうと思います。
全体像をざっくり把握してから、各個別論点を覚えていくと各論点の繋がりも見えてくるでしょう。
国税庁のホームページで公表されている「出題のポイント」からもわかるように、今年の本試験では「概念フレームワーク」「棚卸資産」「社債」「のれん」と、様々な論点が出題されました。
これらから意識しておくべきことは「どこから出題されるかわからない」ということです。
ヤマを張って合格できるほど、本試験は甘くないだろうと思います。
お持ちの理論テキストで各範囲を「まんべんなく覚える」ことが求められます。
理論学習時には、アウトプットを意識する
また、税理士試験の特徴として「論述問題」が必ず出題されます。
まんべんなく覚えるために「インプット」に励む方は多いですが、「実際に文章で書いてみる」とか、「書かれた文章が採点者に伝わるかどうか」まで意識されている方は少ないように思います。
ですから合格に向けては、「インプット」だけでなく「アウトプット」も意識して、理論を覚えていってくださいね!
受験生の答案を講師として採点をしていると「漢字間違い」や「書かれた文章の内容がよくわからない」ことがあります。
これらはいわゆる「インプット」だけを意識していると防げないことかもしれません。
ご自身で「よし、覚えたぞ!」と思われたら、一度「実際に書いてみる」と良いでしょう。
私は受験生時代によく、「思ったより書けないもんだなぁ」と感じたことを覚えています。
最後に
残念な結果だった方、本当に悔しい思いをされていることでしょう。
来年こそはそのような思いをしないためにも、「できるだけ早く財務諸表論の勉強をスタート」してください!
まず何より、それが一番大切です!
ご存知の通り、2023年本試験より会計科目について受験資格が撤廃され、会計科目については誰でも受験できるようになり、受験者数が増加しています。
その結果、一つ、大きな特徴として、国税庁のホームページにもありますように「若年者の合格率が高い」ことが挙げられます。
特に「25歳以下」の受験生や「大学在学中」の受験生は「合格率が30%」くらいになっています。
今年の本試験でも「20歳以下」では「合格率38.8%」となっており「大学在学中」の「合格率26.2%」と並び、やはり「若年者の合格率の高さ」が顕著でした。
これは「若年者は頭の回転が早く、柔軟性がある」ことを意味しているのかもしれません。
ただ、税理士試験合格に向けて講義をさせてもらっている私から言えば、必ずしもそれらだけが理由ではないように思います。
目の前で合格されていく大学生たちを見ていますと、「いかに集中して多くの時間を勉強に費やせるか」が大切だと感じます。
彼らは社会人と異なり、ある程度自由に使える時間があります。
合格されている方は、それらの時間をうまく利用して合格されています。
様々な演習(120分の試験)で採点をさせてもらっていますが、彼らは、本試験直前(6月~7月)に飛躍的に点数がアップしているケースが多いです。
これは紛れもなく、本試験(8月)の直前にしっかりと集中して勉強ができていることを意味しているのでしょう。
そうであれば社会人受験生の方に求められるのは、「計画的に、戦略的に勉強時間を確保する」ことだと思います。
お仕事等で、大学生受験生のように本試験直前にたくさんの時間を費やすわけにはいきませんから、「前倒し」で、「早い目、早い目に計算力や理論暗記を仕上げていきたい」ところです。
一般的に「どれだけ(何時間)集中して勉強できたか」によって「合格」できるかできないかが決まってくるように思います。
ぜひぜひ社会人受験生の方々には、強力なライバルである大学生受験生(若年者)も意識しながら「前倒し」で勉強に取り組んでもらい、合格を勝ち取っていただきたいと思います。
【執筆者紹介】
加茂川悠介(かもがわ・ゆうすけ)
CFP®。中央大学法学部、早稲田大学大学院法学研究科修了後、大手専門学校で教鞭をとる。その後、立命館大学大学院法学研究科で税法を学び、会計事務所勤務や河合塾ライセンススクール講師を経て、財務捜査官採用試験に合格。宮城県警退職後、資格の学校TAC税理士講座で講義を行う。現在、TACのほか芦屋大学や大阪経済法科大学、大阪産業大学、近畿大学等でも講義を行い、日々、わかりやすい講義に向けて自己研鑽している。著書に『ストーリーとまとめ問題でよくわかる! かけるくんの簿記入門』(Parade Books)がある。
<編集部からのお知らせ>
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