税理士試験簿記論 合格発表をうけて今後の学習アドバイス


千葉商科大学 基盤教育機構 渡邉 圭

【編集部より】
さる11月29日(金)、令和6年度税理士試験の合格発表が行われました。合格発表をうけて、受験戦略を再検討する人、同じ科目の受験に再挑戦する人などさまざまだと思います。
来年の本試験まで、どのように学習計画を立てればよいかなどについて、主要科目ごとにアドバイスを頂きます。本記事を参考に、合格に向けてよりよいスタートを切りましょう!

令和6年度より、国税庁HPにも結果が掲載されるように

今回の税理士試験から、従来の郵送に加えて国税庁HPにも結果が掲載されるようになりました。
税理士試験の合否によって合格後の学習計画が異なります。
本記事では、合格者向けの学習計画、再受験者向けの学習計画に分けてアドバイスをします。

第74回税理士試験簿記論は前回と比較して実受験者数17,711名(16,093名)*、合格者3,076名(2,794名)、合格率17.4%(17.4%)となり、昨年と比較して合格率は同等です。
(出所)国税庁HP:https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishishiken/shikenkekka/74/kekka/index.htm
2024年11月30日時点では、各専門学校で公表されている解答速報で計算した自己採点平均で57点以上の学生から合格の報告を受けています。
*( )の数字は前年のものです。

合格者の学習計画

簿記論合格、おめでとうございます!🎉

次の受験科目があれば1月から学習をスタートしてください。
お正月明けからでも構いません。
次の受験科目が財務諸表論である場合、まずは、12月中に専門学校で1月に開講している講座を確認してください。

すでに9月から新しい科目の受験勉強を進めている方は継続して学習しましょう。

専門学校の講座を選ぶときは,学習しやすい受講形態(通学・通信など)も合わせて検討しましょう。
また、資料通信などを利用して独学を中心に学習される方は、図表1の学習計画を参考に自身の生活スケジュールに合わせて修正をして計画ください。

図表1「財務諸表論の学習スケジュール案(独学受験生用)

 1月2月3月4月
計算個別問題集個別問題集総合問題基礎総合問題基礎
理論財務会計の基礎理論 ・期間損益計算 ・資産負債アプローチ ・会計公準会計基準の穴埋め ・企業会計原則 ・損益計算論 ・金融商品・棚卸資産 ・資産会計/評価 ・有価証券 ・固定資産・研究開発費 ・固定資産の減損 ・繰延資産 ・負債会計
 5月6月7月8月
計算総合問題応用総合問題応用 模擬試験演習模擬試験演習模擬試験演習・復習
理論・引当金 ・資産除去債務 ・退職給付会計 ・税効果会計・社債 ・為替換算会計 ・純資産(資本)/自己株式 ・企業結合・連結会計/包括利益 ・キャッシュ・フロー計算書 ・収益認識 ・総まとめ・苦手論点の確認      

*1 ストック・オプション、ヘッジ会計など詳細な論点は省略しています。利用するテキストの目次を参考に上記の学習計画を修正・変更してください。

*2 計算問題集・理論問題集は市販されているものを購入して学習を進めてください。模試に関しては専門学校が開講している資料通信講座、公開模試を使い学習しましょう。
(出所) 筆者作成。

再受験①:本試験結果が50点台のケース

他の科目と並行して学習!…科目によっては簿記論集中!?

簿記論が再受験となった場合、簿記論と並行して他の科目も学習を進めていきましょう。
他の科目が財務諸表論の場合、図表1の学習計画をベースに4月のゴールデンウィーク前から簿記論の学習も合わせて復習を開始してください。

簿記論の学習は総合問題応用の問題集からスタートして、正答できなかった論点を確認し、再度問題を解いて復習を積み重ねていきましょう。

また、税法科目を並行して学習計画を検討されている場合、科目によっては1月から学習を開始しても8月までに勉強が間に合わなくなる可能性もあります。

財務諸表論であれば簿記論と学習の範囲が重複する論点もありますが、税法科目はゼロベースから学習を開始することになります。自身の学習環境、仕事の負担、生活を見直して税法科目との並行受験は慎重に検討してください。

再受験②:本試験結果が50点未満のケース

簿記論1科目に集中して学習!財務諸表論のヨコ解き問題集も有効!?

受験結果が50点未満の場合は1月から簿記論の学習に集中して学習計画を練りましょう。
具体的には、12月中に昨年の学習計画を見直して合格ラインに近づくための学習方法を検討します。

専門学校の資料通信を中心に独学で再受験を検討している場合、図表2の学習計画を参考に自身の生活スケジュールに合わせて修正をしましょう。
ヨコ解き問題集であれば、財務諸表論の問題集も有効です。財務諸表論の内容が簿記論で出題されることもあります。

図表1「簿記論の学習スケジュール案(独学受験生用)

1月2月3月4月
ヨコ解き問題集 (簿記論・財務諸表論)ヨコ解き問題集 (簿記論・財務諸表論)総合問題応用総合問題応用
5月6月7月8月
過去問題5年分 苦手論点の復習模擬試験演習模擬試験演習模擬試験演習・復習

*1 詳細な論点は省略しています。利用するテキストの目次を参考に上記の学習計画を修正・変更してください。

*2 計算問題集は市販されているものを購入して学習を進めてください。模試に関しては専門学校が開講している資料通信講座、公開模試を使い学習してください。
(出所) 筆者作成。

税理士試験は長期戦、一喜一憂せず課題を発見し改善する

税理士試験、日商簿記1級、全経簿記上級など難易度が高い試験は長期戦を想定した学習計画が不可欠です。
その過程で、多く正答ができる日もあれば、まったく正答できなかった日、あるいは仕事の関係で学習ができなかったなどネガティブな要因が起こることもあります。

合格するためには一喜一憂せずに、学習した結果に対してその都度課題を発見し解決する姿勢が必要です。
私は、再受験で簿記論に合格しました。
連続して不合格になったときは落ち込みましたが、「自分から簿記をなくしたら何が残るのか」と自問し、「何も残らないなら形にした方が良い」と自答して再受験に挑みました。
上記のように、学習の都度課題を見つけ解決する学習姿勢に切り替えたことで合格することができました。

不合格だったときは、学習が計画どおり行えず焦りながら勉強をしていた記憶があります。そこで、学習計画は1週間らから2週間程度で区切り、予備日を3日程度設けて作成することをオススメします。

さいごに

税理士試験は上記のとおり長期戦を想定した学習計画を作成します。学習効果を高めるためには考え方を変えると行動が変わるという意識が必要です。
「点数が高いから良い」、「点数が低いからダメ」というような考え方ではなく、「点数が取れていない部分は復習が必要な論点が見える化された」など問題の発見という考え方に変えることで復習する意欲が変化すると思います。

指導した受験生には模擬試験問題が1度もボーダーラインに届いていない学生もいましたが、上記の学習意識を伝え問題発見と課題解決を継続したことで日商簿記1級・簿記論に合格できました。

本記事が皆さん学習計画の参考になれれば幸いです。

<執筆者紹介>
渡邉 圭(わたなべ・けい)

千葉商科大学准教授。基盤教育機構・瑞穂会に所属。
2022年3月、千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了、学位取得(政策博士)。
瑞穂会では千葉商科大学学生を対象にした日商簿記検定3級から1級講座、税理士試験講座の運営および学生指導に従事し、2023年6月現在、日商簿記検定1級合格者194名(累計)、税理士試験簿記論合格者59名(累計)・財務諸表論合格者39名(累計)の輩出に貢献している。

<編集部からのお知らせ>
会計人コースWebでは、令和5年度税理士試験「合格体験記」を募集しております。科目合格ももちろんOKです! ぜひこれまでの受験経験談をお寄せください。

https://kaikeijin-course.jp/2024/11/29/66470/


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