ゴールデンウィークは計画通りに学習できましたか。本企画では、税理士受験生の‟あるある”なお悩みを、7つのテーマに分けて官報合格者にお聞きしています。
これまで、答練の活かし方や模試への向き合い方などについて取り上げてきましたが、今回は具体的に「計算対策」において官報合格者が意識していたことをまとめました。
本試験を意識するようになり、「時間が足りない!」「計算で勝負したい!」という思いが強くなるかもしれません。そういった気持ちとどのように向き合ってきたのか、きっとヒントが見つかるはずです。
<テーマ紹介>
第1回 ゴールデンウィークの過ごし方
第2回 答練の活かし方
第3回 模試への向き合い方
第4回 計算対策(本記事)
第5回 理論対策
第6回 不安の乗り越え方
第7回 過去問の活かし方
※回答は質問ごとに五十音順・敬称略、年齢や職業は官報合格時
Q 総合問題は時間が足りなくて解けません…。正確かつスピーディーに解くためにどうしていましたか?
自分が決めた方法で何度も解く(ボザイ(30代、税理士法人勤務))
何度も解くしかないと思います。その中で細かいテクニックとしては2つです。
1 メモ書きの短縮
2 問題用紙の使い方
これも自分が決めた方法で何度も解くことが大事ですが、例えば消費税法でいうと課税が◎、非課税が△、免税が◯など記号で短縮できるものは短縮することです。
問題用紙の使い方としては、簿記論で言うと前T/Bは切り離して前T/Bに集計し、相続税法は相続人関係図は切り離して法定相続人や相続人の情報を書きこみ、いつでも見られる状態にしていました。
このような細かいテクニックも重要ですが、自分が決めた方法で何度も解くことが最も重要だと思います。
▶︎ボザイさん
合格科目:簿記論・財務諸表論・消費税法・法人税法・相続税法
合格インタビュー記事:「ボザイさんに聞く! 税理士試験 簿・財独学から始まった官報合格までの道」
Q 直前期ほど「基礎を大切に」と言われますが、この時期に大切な「基礎」とは何だと思いますか?
多くの受験生が解ける学習初期の項目(竹内孝秀(大学4年))
よく言われる「基礎」とは、レギュラー期(私が利用していた資格の大原では9月〜4月のこと)の内容だと思います。
通常のテキストに載っており、かつ講義内で触れたものは、多くの受験生ができるようになる項目なので、それが合格するための「基礎」になるのではないでしょうか。
大原ではゴールデンウィーク以降、初学者と経験者が同じ答練を受けることになります。
前述した基礎をいかに落とさないかで、差ができやすいと感じます。
税理士試験が競争試験である以上、周りができる問題を落としてしまうのは、合格から遠ざかることに直結してしまいます。
また直前期になると、改正項目などのその年特有のものが講義内で扱われ、優先順位が高く見えてしまいます。
ただ、改正項目はその年だけ注目度が高いものになりますが、前述した通りあくまで基礎となるのはレギュラー期の項目です。
3つの税法に合格しましたが、どの科目でも得点源となるのはそうした基礎項目でした。
▶︎竹内さん
合格科目:簿記論・財務諸表論・所得税法・法人税法・相続税法
合格体験記:「大学在学中に国税3法で官報合格を達成! 決め手は計算・理論ともに「理解」から攻めたこと」
Q 理論が苦手です…。計算で勝負しても大丈夫?
理論で6割正答を目指そう!(かんと(20代、経理職))
理論は応用問題や事例問題への当てはめが出題されると、暗記していたとしても理解度によって点数差がつきやすいです。一方で、計算は答練や過去問を繰り返すことで解法が身につきやすく、受験生で差がつきにくい印象です。
計算で勝負したところで理論が足を引っ張る形になれば本末転倒なので、本試験で理論を6割は正解できるよう、基礎的な条文は理解しておいた方が良いと思います。
また、理論の苦手を克服するための解決策として、計算問題を解く際、計算とリンクする理論や解答に至るまでの思考プロセス(例:○○だから○○)を声に出しながら解いてみてはいかがでしょうか。
言語化する練習を繰り返すことで、理論の解法を体得できる日が来るはずです。
▶︎かんとさん
合格科目:簿記論・財務諸表論・法人税法・所得税法・消費税法
合格体験記:「育児・家事・仕事・学習の4足の草鞋を履いて、法人税法&所得税法を同時合格&官報達成!」
「理論を捨てる=手札を半分削る」ということ!(CR(20代、専念))
非常にまずいと思います。
税理士試験は手数勝負です。あらかじめ出題項目が明示されていて、その完成度を競うような試験ではありません。
会計、税法に関する網羅的な知識が必要となります。
各科目各年度の本試験問題を見てみると分かりやすいですが、計算も理論も講義では触れない内容が出題されることも珍しくありません。
そのような中で自ら勝負できる手札を半分削るという選択は愚策に思えます。
使える時間や得手不得手は人それぞれですが苦手だからと言って全て切り捨てるのではなく、なんとか本試験に持っていけそうな内容は頑張って取り組んでみてください。
きっと本番役立つはずです。
▶︎CRさん
合格科目:簿記論・財務諸表論・固定資産税・法人税法・国税徴収法
合格体験記:「全科目一発&2年で官報合格! 「科目ごとの勉強アプローチ」がカギ」
計算はできて当然! 理論の精度を上げよう(たこやき(30代、会計事務所勤務))
それはオススメしません。 なぜなら、合格レベルにいる受験生全員が計算は得意だからです。
計算はできて当たり前で、合格するには理論の精度だと思っています。
計算が得意で自信があることはとても良いことだと思いますし、計算もある程度やらないとスピードや正確性が落ちてきてしまいます。
そのため、計算をまったくやらないことも勧めないですが、理論は合格の鍵だと思うので苦手意識を持たずに向き合ってもらいたいです。
私も覚えるのが苦手で、1つの理論を覚えるのに5〜6時間かかっていました。
そんなにかかってやっと覚えたと思っても、また1〜2週間後には何もかも忘れて絶望して、また5〜6時間かけて覚えて…と常に絶望しながら覚えていましたが、そんな記憶力がない私でも最後には1題15分ほどで回せるようになりました。
理論暗記は努力と比例しているので諦めないでほしいです。
▶︎たこやきさん
合格科目:簿記論・財務諸表論・消費税法・相続税法・法人税法
合格体験記:「「本命科目」と「もう1科目」の同時学習がカギ! 働きながら6年で官報合格!」
本試験では計算に時間をかけて合格できた!(もち(40代、税理士法人勤務))
大丈夫だと思います。
税理士試験の税法科目は配点が理論問題50点・計算問題50点とされていますので、計算問題を全て正解すれば確実に50点が取れます。
この点数は税理士試験の合格基準点である満点の60パ-セントのうち、50パーセントにあたります。
そうすると、理論問題で10点以上取れば合格できるわけです。
どれだけ理論が苦手なのかはわかりませんが、これまで税理士試験学習をされている方であれば、10点は取れるのではないでしょうか。
ちなみに私も理論が苦手でしたので、計算で勝負していました。
本番の試験で計算問題に90分かけて納税額まで求めた後に理論問題に取りかかるというスタイルでやっていました。
▶︎もちさん
合格科目:簿記論・財務諸表論・消費税法・所得税法・相続税法
合格体験記:「13年かけて掴んだ5科目合格! すべて独学だからこそ、実務に役立つノウハウを得た‼」
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同じ質問に対して、合格者によって回答が違う面もありますが、いずれにしても計算力の精度を上げることに違いはありません。
直前期を迎え、徐々に理論学習の比重が高まってくる時期ですが、その一方で、計算学習も疎かにせず、計算力をキープ&向上できるように対策を進めましょう!
次回は、「理論対策」について官報合格者からのヒントをまとめます(5月8日掲載予定)。
<直前期にオススメの書籍>