【税理士合格体験記】漁業の閑散期に資格を生かした仕事がしたい! 戦略的に選び、徹底的に暗記した国税徴収法に一発合格‼


漁師
(30代、漁業経営)

<受験情報>
合格科目:簿記論・財務諸表論(令和4年)、国税徴収法(令和5年)
学習スタイル
 簿記論・財務諸表論→資格の大原(通信)
 国税徴収法→TAC(通信)・直前対策から資格の大原も受講(通信)、国税徴収法の学習時間は約600時間(授業と理論暗記の時間などすべて含む)
▶トップ画像は理論暗記に使用したスタンディングデスク(本人提供)

漁師が税理士を目指したきっかけ

はじめまして、漁師と申します。北海道で漁業経営をしながら税理士試験に挑戦し、令和4年度に簿記論・財務諸表論、令和5年度に国税徴収法に合格しました。

私が税理士を目指したのは、「漁業の閑散期に資格を生かした仕事をしたい」と考えたからです。漁業は冬から翌春まで時間の余裕があるため、この時期に繁忙期を迎える税理士の仕事なら時間を有効に使えると思い、税理士試験にチャレンジしました。

なぜ国税徴収法を選んだのか?

仕事、家庭、育児のことを考えると、税理士試験で5科目合格を目指すよりも、大学院進学による税法2科目免除(いわゆる院免)を狙うのが現実的だと考えました。

簿・財合格後の税法科目選択において、院免を選ぶ場合は国税徴収法と消費税法が人気のようですが、X(旧Twitter)で唐津の🐸先生(@Sakura_Saku1218)にDMで相談したところ、「暗記が得意であれば国税徴収法がおすすめ」と教えて頂きました。

それに加え、消費税法は合格率が低いうえに、私にとってはインボイスの存在が不気味で、一発合格を決められなければ何度も落ちる可能性があると思い、国税徴収法に決めました。

国税徴収法は努力が反映されやすい科目だと思います。その理由は、①ほぼ理論からの出題なので、理論さえ暗記していれば確実に得点できること、②いわゆるミニ税法の中では受験者数が多いため、満点を狙う科目ではなく、ワンミスアウトではないこと(と、TAC講師から聞きました)、③受験者全体のレベルは低く(白紙解答が大半)、合格率は税法の中では比較的高い(令和5年度13.9%、令和4年度13.8%)ことが挙げられます。

実際の私の本試験結果は、TAC・資格の大原いずれも確実ライン付近でした(TACの解答速報で厳しめに採点して75~85点、資格の大原では85~90点)。

令和5年度本試験の国税徴収法は難しい問題がなく、平易な内容だったと思います。私の自己採点では、全体を通して大きな誤りや書き漏らしはなく、試験委員による出題のポイントとも相違した解答はありませんでした。自己採点については、理論を「原則として」等と省略して書いた部分などを減点しました。

学習初期~12月の勉強ペース

ここからは国税徴収法の勉強ペースについてまとめます。正直言って全く順調ではなく、軌道に乗り出したのは本試験2ヵ月前の6月頃でした。

12月までの年内は、仕事が忙しくて授業の視聴と月1のテストに向けた理論暗記で精一杯でした。理論はテストに向けた一夜漬けのようなもので数日たてば忘れていました。

1~2月の勉強ペース

本腰を入れて勉強しようと思ったものの身内に不幸があり、勉強ができませんでした。講義の視聴はせず、テストも受けられず、理論暗記もせずの三重苦。

3~5月の勉強ペース

受験の撤退が頭をよぎりましたが、ツイッター上で優秀な受験生の方々に触発され、ヤル気を出して1日6~8時間の勉強を続けました。勉強内容の優先度を考えると、理論暗記が重要だと考えたので「6月の全国模試までに全理論のインプットを終わらせる」ことを目標に、計算は無視、授業も無視でひたすらに理論を覚えました。

なぜ理論暗記に振り切ったかというと、国徴は理論を覚えてようやくスタートラインに立てると感じたからです。問題集や答練を解こうと思っても、理論が頭に入っていないと答えられません。

そこで、以下のような方法によって、約50題の理論を3ヵ月ほどで覚えました。

私の理論暗記ペース

国徴の理論はTACの教材で7章(資格の大原だと6章)あり、章ごとに暗記を進めました。ほぼA・Bランクで、Cランクは数題です。計算が少ない分、理論暗記が合否を分けると思い、全理論の暗記を目標としました。

暗記ペースとしては5~10題程度の章なら1週間、ボリュームの多い章なら2週間ほど時間をかけました。覚える時は一字一句の丸暗記を重視しました。

進行具合を振り返ると、3月に1~3章、4月に3~5章、5月に6、7章のインプットを終わらせていました。具体的には「1週間で1章暗記→次の1週間で2章暗記→次の1週間で1、2章の暗記を確認→次の1週間で3章暗記→次の1週間で1~3章を確認」のように、暗記→暗記→まとめて確認という流れです。覚える時は1つの理論を30回以上は繰り返し暗唱していたと思います。

理論のインプットを終わらせたのは5月後半でした。ただ、とりあえず理論が頭に入った状態で、スラスラ言える状態ではないので、この時期から「理論回し」を始めました。

私なりの理論回し

資格の大原の直前対策講義でもらった「理論チェックシート」を使い、1日に暗唱できた理論にチェックを付けていきました。最初は1日に数題しか回せませんでしたが、徐々にスピードが上がるので、地道に続けていきました。年輪を重ねて太くなる木のように、理論の木をどんどん太くするイメージです。

理論回しのペースは5月は1日5題程度、6月は1日10~20題、7月からは50題を2グループに分け、3日かけて暗唱して回しました。7月については1日目、2日目に各25題ずつを目標にし、3日目は回しきれなかった理論や覚えの悪い理論暗記の補強をするための調整日にしていました。

個人的に良かったのは最初に全理論を覚えたことです。暗記を後に回すと自分の首をしめるので(答練、過去問などやることの多い超直前期に暗記し直すのは大変です)、すべて覚えるのは当然と思って取り組むと意外とできました。

最初から自分で壁を作って「Cランクは捨てる」と決めず、時間に余裕のある時期に覚えてしまうのがよかったです。国徴1科目の場合、理論は50題程度で、計算の負担が少ないため覚えきれるはずです。

6月の勉強ペース

この時期から理論暗記と並行して全国模試に備えて授業の視聴を再開しました。国徴は条文の趣旨説明の出題があるので、趣旨理解に努めたり、計算問題の対策を進めました。

ようやく答練も解き進め、この時点で得点は8~9割。ただ、答練満点はゴロゴロいるので常に不安でしたが、TACの全統模試はS判定(上位1割以内)だったので、少し手ごたえをつかみ始めました。

計算問題対策

とにかく時間がなかったので、計算の問題集は答えがわからなければすぐに解答を見て、短時間で問題集を終わらせるようにしました。解答がパターン化されたものは解答ページをコピーし、キーワードを暗記ペンで隠して解答方法を覚えて対策していました。

答練については理論の出題範囲を見ないようにし、どんな理論が出ても解答できるか自分の力を試しました。

7~8月の勉強ペース

この時期は答練と過去問に比重を置きました。初見の問題を減らしたかったのと、国徴は過去問から何度も似たような出題があるので、「過去問を調べることが大事だ」と思ったからです。答練は、苦手な問題や本試験に出そうな問題にチェックを入れ、試験1週間前から繰り返し見るようにしました。

答練は理論の出題が大半なので、口頭で解答したり、解答の柱になる理論を箇条書きして時短を図りました。計算の少ない国徴ならではだと思います。TACと資格の大原の答練を合わせると15回分程度ありますが、1日に3~5つは回せるので全答練を3回以上は解いたと思います。

過去問については、どう解けば良いかわからなければ✓を入れて、すぐに解答を見て、解き方を学びました。すべてを解き込むことはしませんでした。

試験前日

全理論の暗唱(6時間くらい)と、✓を入れた答練の問題を確認しました。前日は負荷の掛かることをすると不安になるので軽めの調整で本試験に臨みました。

暗記で心がけたこと

「勉強時間の大半は暗記」というくらい、時間をかけました。講師からは「内容理解を重視して」と言われていましたが、私は暗記優先で進めました。暗記を終わらせないと不安だったからです。

内容理解については暗記が進むと理論の内容や各理論の横の繋がりなどが分かるようになるので、暗記優先で進めても支障はありませんでした。

8月に入った頃には全理論と主要な趣旨はスラスラ言える状況だったと思います。理論回しの回数は記録していませんが、100周以上はしたと思います。理論集のどこに何が書いてあったか、というように文字だけの記憶から映像として記憶できるようにはなっていました。

特に暗記で心がけたことなどを以下でご紹介します。

①暗記は暗唱のみ。難解な漢字は書いて覚える

正直、どう暗記するのが良いか悩みましたが、大学時代の友人(医師)に聞くと「暗唱が一番効率良いから、覚えるまでひたすら暗唱。困ったらゴロ」と聞き、それに倣いました。

暗唱のやり方としては、

  • 句点、句読点までの文のかたまりごとに言葉を発しながら覚える。
  • 次の文のかたまりを覚えて、前の文と連続して言えるか確認する。
  • ちゃんと言えたら次の文のかたまりを覚える。
  • 言えなかったら覚えなおし。

この繰り返しです。難しい漢字(隠蔽など)は都度書いて覚えました。

また、暗唱は立ちながら、歩きながら、足踏みしながらやりました。座っていると眠たくなるし、立ったり歩いたりして足に刺激が入ることで頭も冴えるし、雑念が入りにくいです。暗記をする時は顔を洗って目を覚ましていました。

理論散歩は特におすすめです。理論集を持って暗唱しながら歩きます(近くに人がいれば頭の中で唱えるだけ)。

初めて覚える理論の場合は危険なので、ある程度暗記の進んだ理論なら記憶の定着が良いと思います。受験生活の運動不足解消にもなります。私は3~8月まで風雪の日以外は毎日1~2時間は理論散歩しました。

②理論集に趣旨や注意点などを書き込む。紛らわしい表現にはマーカーを引く

一番目にする理論集に情報を集約しました。書き込んだのは理論の趣旨や制定背景、間違いやすいポイントなどです。理論集に書き込むために授業を倍速で聞き直しましたが、基礎理解にもつながりました。

また、理論には似た用語や紛らわしい表現(通知と告知、事情と事実、税務署長と税務職員など)がいくつもあるので、色を変えたマーカーや記号(△や□)で識別していました。

③日中覚えた理論は夜に確認する

覚えたことは放っておくとすぐ忘れるので、覚えたことは短期間のうちに何回も目に触れるようにしました。日中覚えたことは寝る前に見たり、覚え直したりしました。短期間で接触回数が多いほど長期記憶に定着しやすいと思います。

④困ったときのゴロ頼み

頭文字さえ出ればスラスラ言えるのに、その頭文字が出ないということがよくありました。そのため、私は頭文字でゴロを作って対策していました。ゴロを作るときは、意味がある文になるようにすると忘れにくいと思います。

例えば、国税通則法上の繰上請求の事実6要件は頭文字を取って以下のように覚えました。

競争法、真の偽り(きょう・そう・ほう・しん・の・いつわり)」

イメージとしては、競争法という法律がある状況で大きな問題が分かったという新聞記事の見出しを考えました。 

  • きょう=強制換価手続きが開始
  • そう=相続人が限定承認をしたとき
  • ほう=法人が解散
  • しん=信託財産責任負担債務である国税~
  • =納税管理人を定めないで~
  • いつわり=偽りその他不正の行為により~

ゴロにすると忘れにくいのでおすすめです。それに覚えやすいゴロが作れると楽しいし、息抜きにもなります。

講座の教材以外に使用した参考書

受講講座の教材以外には、『図解 国税徴収法』(大蔵財務協会)やネットスクールのテキスト、資格の大原の応用理論テキストを使いました。答練などを解いて浮かんだ疑問点は『図解 国税徴収法』やネットスクールのテキストを参照して確認していました。

予備校のテキストは硬い表現が多いのですが、かみ砕いた説明がされていて内容理解に役立ちました。あと、応用理論テキストは理論の横のつながりをつかみやすいのと、良質な過去問が厳選されているのでおすすめです。

受験を振り返って

振り返ると年始までにAランクの理論を固め、Bランクの暗記に進めていれば楽だったと思います。6月までは「今年は記念受験かも」とやや諦めていたので、心の余裕がかなり違ったと思います。

また、直前期に入ると難しい問題に目がいきますが、条文の前提条件や基礎的な部分の理解がおろそかになり、足元をすくわれる恐れがあります。直対テキストなどで難しい問題にも一応触れますが、直前期でも基礎のおさらいに時間をかけることも大切だと感じました。

試験委員の出題ポイントでは「基本的な理解を問う」ことが強調されており、とにかく基礎を固めて基本的な問題に正確に答えられるようにするのがベストだと思います。

国税徴収法受験生の方々の検討をお祈りしています。

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