著者・熊王先生に聞く! 受験勉強に役立つ『消費税法講義録<第4版>』の読み方・使い方


【編集部より】
税理士試験の消費税法受験生にもたくさんの愛読者がいる『消費税法講義録』(熊王征秀 著)の第4版が、7月下旬に刊行されました。そこで今回は、著者の熊王先生に、税理士受験生が本書を受験勉強に役立てる際の読み方・使い方を伺いました!
ぜひ本記事を参考にしていただき、『消費税法講義録<第4版>』を“座右の書”としてご活用ください。

「条文」を読んで視野の広い勉強を!

Q 9月になり、受験生にとっての新年度がスタートしました。どのような心構えで受験勉強に向き合うとよいでしょうか。

熊王先生 大原簿記学校で受験指導を25年務めましたので、私も受験の大変さがよくわかっているのですが、本書『消費税法講義録』の初版でも序文に書いたように、税理士試験というのは、完全に「落とすための試験」、つまりパターンとテクニック、それにパワーがないと合格できない試験になっています。

正直申し上げて、そのような試験では税理士になるための本当の指数は測ることができないのではないかと思っているのですが、それでも結局は1割しか受からない試験なので仕方がありません。ここは割り切ってやるしかないのです。

だから、受験で必要なパターンとテクニック、パワーについては、専門学校できっちり教えていただければよいと思います。

ただ、消費税に限らず、今の受験生は「時間がない」ということもあって、「条文を読まない」ですよね。専門学校も条文を読んでいる時間がないから、『法令集』を一切使わない。

これは非常に嘆かしいというか、正直なところ末期症状であるとも感じています。やはり、「税理士になろう」と思っている人間が、条文を読まないと話にならないわけです。

だから、私は今担当している大学院の講義でも、常にそのように学生たちに言っています。中には、並行して税理士試験を受けている人もいるので、「そういうことではダメなんですよ。受験は受験で割り切って、やはり可能な限り条文は読みなさい」と指導しています。

急がば回れではありませんが、そのように視野の広い勉強の仕方をしないと、本当の意味で身にはつかないと思っています。

熊王先生に『消費税法講義録』の
読み方・使い方をお聞きしました!

『消費税法講義録』の読み方・使い方

Q 消費税法受験生は専門学校を利用する方も多いですが、その場合、『消費税法講義録』をどのように読むと効果的でしょうか。

熊王先生 当たり前ですけれども、1年間の長丁場の勉強なので、興味を持たないと長続きはしませんよね。そういった意味では、私の本にはあちこちにコラムを入れていますので、息抜きがてらそのコラムなどを読んでいただいて、プラスアルファの知識をつけていただくのも面白いのかなと思っています。

受験指導の場合には、出題の可能性が低いものは授業ではサラッとしか触れなかったり、全く触れなかったりすることもあると思いますが、本書では、その辺りの知識も全部、多少の濃淡をつけつつも、解説しています。

専門学校の授業では「ここはいりません」、「ここは余裕がある人だけでいいです」というように言われることもあると思いますが、そのようなことは信用せず「試験に出そうにもないようなところにも目を通す」ということは、 “受験生にとっての精神安定剤”だと私自身は思っています。そうすれば、その論点が出た時には自分が勝ちなんだと思えるからです。

だから、本書は、受験勉強と並行しながらはもちろん、それとはちょっと一線を引いた形で、「全体像を眺める」、「プラスアルファの知識を身につける」、「どんな制度なのかを理解する」という感じで使っていただくのがいいのかなと思います。

とくに、受験生は時間がないから、「ここはいる・いらない」とよく話題にしますよね。私も「ここは出ますか?」と聞かれたことがあり、そのたびに「そんなことがわかったら苦労しないだろう」と言って叱っていたのですが、そのような発想を捨てて勉強していただきたいと思っています。

Q 一方で、専門学校を利用せずに、独学する方もいらっしゃいますが、その場合は本書をどのように活用するとよいでしょうか。

熊王先生 独学の場合にも、同じように「これは教科書だ」と思って読んでいただいていいと思います。

ただ、本書には試験対策につながるような計算問題は載っていませんから、その点は市販の問題集などを使って演習を重ねる必要がありますね。

そして、直前期の答練や模試は専門学校を利用したほうがいいと思います。最新の情報に基づいて、各専門学校が互いの様子を見ながら、探りながら問題を作成しているので、ぜひ受けたほうがいいと思いますね。

最新版『消費税法講義録<第4版>』(熊王征秀 著)
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変化が大きいからこそ、「基本」を押さえる

Q 最後に来年の受験生に向けて応援メッセージなどをいただければと思います。

熊王先生 来年の試験はインボイスの時代になりますので、「どんな問題を出してくるのか」ということに、まず興味がありますね。

計算問題を作るほうも多分、相当に悩むのではないかと思うので、私は逆に楽しみに思っていますが、いずれにしても、今年の10月から実務がガラッと変わるわけですから、受験もこれに合わせてガラッと変わるはずです。

だからこそ、「どんな問題が出るか」ではなくて、「基本」をきちんと押さえていれば必ずできるはずです。こういう時代だからこそ、なおさら「基本が大事」で、基本を押さえておけば、どんなとんでもない問題が出てもできるはずなのです。

私はこの令和5年の10月が消費税の元年だと思っています。インボイスが導入されてやっと日本は諸外国並みの税制になります。いわば、さなぎの状態からやっと蝶になるような状態なので、これをきっかけに実務も受験も変わっていくのだろうなと思っています。

ぜひ、基本を中心に、興味を持って勉強していただきたいですね。

<お話を聞いた人> 
熊王 征秀(くまおう・まさひで)先生

税理士
昭和37年山梨県出身。学校法人大原学園に在職中、酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。現在、東京税理士会・会員相談室委員、日本税務会計学会委員、東京地方税理士会・税法研究所研究員、大原大学院大学教授。


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