【編集部より】
早いもので2022年も年の瀬。まだ正月休みのことを考える暇はあまりないかもしれませんが、でも貴重な時間なので今のうちに少しずつ準備をしておきたいところですね。
そこで、本企画では、学者・実務家など10人の読書愛好家から、会計人コースWeb読者の皆さんにオススメする「年末年始の課題図書」をご紹介いただきました(1日お一人の記事を掲載していきます・順不同)。
受験勉強はもちろん、仕事や人生において新しい気づきを与えてくれる書籍がたくさんラインナップされています。ぜひこの機会にお手にとってみてください!
今回の記事では、星田直太先生(税理士)に課題図書をお薦めいただきました!
オススメ① 『三国志』(宮城谷昌光、文藝春秋)
中国の春秋戦国時代(戦国時代)末期を舞台とした漫画・アニメが人気ですが、中国史といえば「三国志」も外せません。
日本で親しまれた三国志は、「三国志演義」という創作物をベースとして日本人読者向けにアレンジした作品が多いものですが、正史三国志をベースにした小説が、この宮城谷昌光先生による「三国志」です。
宮城谷先生による歴史小説は硬派ですが、構想10年・連載12年というこの「三国志」も例外ではないでしょう。
曹操の祖父にあたる曹騰の時代から物語が始まるため、よく知る主要人物がなかなか登場しない点に、もどかしさを感じるかもしれません。
ですが、他の三国志作品とは異なる人物の描かれ方なども含めて、晋の時代までに至る壮大な物語は、その筆致に圧倒されつつも、何度も読み返したくなる味わい深いものです。
この「三国志」、文庫であれば全12巻にも及びます。まさに年末年始にじっくり読む作品として相応しいといえます。
オススメ② 『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』(河野 啓、集英社)
ノンフィクションからは、第18回開高健ノンフィクション賞(2020年)を受賞した作品をご紹介します。
「デス・ゾーン」とは登山用語で、エベレストの標高8千メートル超のような、人間の生存が困難となるほど酸素濃度が低い高所領域を指します。
この書籍で取り上げられる栗城史多(くりき・のぶかず)さんは、エベレストを「無酸素・単独登頂」によって攻略することを目標として、重度の凍傷により両手の指9本を失いつつも挑戦を続け、結果として35歳でエベレストにおいて命を落としてしまいます。
なぜ栗城さんは無謀ともいえる「無酸素・単独登頂」にこだわり続けたのか、「冒険の共有」を掲げて登山の様子をライブ配信した意図は何だったのか、彼が目指していたのは本当に山の頂なのか、そして彼は一体何者なのか・・・読み進めるほどに疑問が深まっていきます。
著者は戸惑いつつも彼の実像に迫っていくので、目が離せず、あっという間に読み切ってしまうことでしょう。そして読後には、私たち自身が向き合っているものが一体何であるのかについても考える機会を与えてくれる、そんな1冊であると思います。
オススメ③ 『組織再編・資本等取引をめぐる税務の基礎』(牧口晴一・齋藤孝一、中央経済社)
最後は、現実に戻って(?)実務書の紹介です。
組織再編に関する税制は複雑で全体像を把握しにくいものですが、本書は組織再編税制と会社法による再編的行為等を網羅的に収録しているので、とても重宝します。
オリジナルの図表も多く用いられており、組織再編に不慣れな方がまず概要を把握し、その理解を促進するために手に取る書籍として、とても優れているのではないでしょうか。
私自身は第3版のお世話になりましたが、最近は第5版が出ましたので、購入してもう一度勉強し直そうと思っています。
【執筆者紹介】
星田 直太(ほしだ・なおた)
税理士、ファイナンシャルプランナー(CFP®)。
法人・個人の税務全般に対応し、相談者に寄り添った対応とわかりやすい説明に定評がある。公的機関における研修講師として登壇多数。
星田税務会計事務所代表、東京都よろず支援拠点コーディネーター、東京商工会議所経営安定特別相談室専門スタッフ、租税訴訟補佐人。