【編集部から】
8月2日から実施されていた令和4年度(第72回)税理士試験の全日程が終了しました。
受験された皆さまはおつかれさまでした。
さて受験後は、自己採点するかどうか悩む方もいると思われます。
そこで、千葉商科大学 会計教育研究所「瑞穂会」で受験指導をされている渡邉 圭先生に、自己採点にまつわる疑問にお答えいただきました。
なるべく早いうちに自己採点すべし!
――そもそも自己採点はすべきでしょうか?
渡邉先生 自己採点はできる範囲でかまいませんので行いましょう。今年度の簿記論・財務諸表論は例年より難易度が高く、自己採点をするのが怖いという方もいるかもしれませんが、自己採点をすると自分の立ち位置がわかります。今のレベル感を知ることで、9月から開講される専門学校の講座を受講すべきか、受験した科目を復習すべきかなど、今後の学習計画を編成するのに役立ちますので、なるべく早いうちに自己採点にとりかかりましょう。
――その前提として、答案の再現はいつ、どのようにすればよいでしょうか?
渡邉先生 まだ答案再現をしていない方は、なるべく早く行ってください。
瑞穂会の学生からよく聞くのは、理論問題と簿記論・財務諸表論の第三問(総合問題)の答案再現が難しいということです。
計算は、仮計算表を作成して解いている場合は、解答金額がわかるのでそれほど問題はないようなのですが、仕訳などそれ以外の解法の場合は難しいようです。そのため、なるべく早いうちに、あとから解答金額がわかるように集計しておくよう伝えています。
また、理論の場合も、模範解答にキーワードがあるので、あとから「このキーワードは書いたっけ?」とならないように、早く答案再現をすることが大切です。
――理論は自己採点も難しいと思います。理論を自己採点するときのポイントを教えてください。
渡邉先生 理論のなかでも記述問題は専門学校によって解答が違うので、自己採点をしていて「何が正解なんだ?」と悩む学生も多くいます。
ただ、いつも学生に言っているのは「満点の解答はない」ということです。たとえば模範解答が5点なら「3点」もしくは「2点」と厳しく採点するように伝えています。
そのうえでのポイントですが、専門学校によって模範解答は違うといっても、絶対に書かなければいけないキーワードは統一されています。ですので、「そのキーワードを書いたかどうか」は必ず確認してください。
また、「表現は違うけれどニュアンスは同じなのか」も考えて採点しましょう。絶対的な採点基準がないのであやふやにはなってしまいますが、これらを加味して点をつけるとよいと思います。
――さまざまな専門学校で解答速報が公表されますが、見るのは1つで十分でしょうか? それとも複数見比べるほうがよいでしょうか?
渡邉先生 複数見比べたほうがよいと思います。各専門学校の解答速報が公表されたつど、確認するようにしましょう。
というのも、専門学校によってボーダーラインや合格確実ラインが5点~10点前後、異なることがあります。瑞穂会でも、Aの専門学校ではボーダーラインに届いていなくても、Bの専門学校ではボーダーラインに届いているというケースがあり、それによって学習計画も変わってきます。
精神的に自己採点は大変ですが、専門学校の解答速報が公開されたつど、自分の立ち位置を把握してください。
これからどう勉強していく?
――自己採点の結果を受けて、当面の学習をどのように進めていけばよいでしょうか?
渡邉先生 出来具合別に説明します。
〈おおむね合格確実ラインの場合〉
9月から次の科目の学習を始めてください。酒税法、固定資産税、国税徴収法など、いわゆるミニ税法を受験される方は、場合によっては、1月から学習を始めてもよいでしょう。
ただし講座が始まるのは9月ですが、専門学校によって教材や教え方は違います。「どの専門学校の教材だと理解しやすいのか、暗記しやすいのか」は、8月の時点で確認したほうがよいと思います。瑞穂会の学生は、お盆明けには書店でチェックしているようです。ほかにも、体験講座が開かれるようなら参加してみる、実際に受講相談をしてみるのもよいでしょう。
〈おおむねボーダーラインの場合〉
こちらも基本的に合格確実ラインの場合と同じです。
ただし、受験した科目についても、9月から結果発表まで復習をしておきましょう。たとえば、財務諸表論であれば、理論を1ヵ月単位で1回転し、計算問題は応用総合問題集など使って復習をします。
〈ボーダーラインに届いていない場合〉
9月から受験した科目の復習を続けましょう。自身の学習計画を見直すと同時に、結果発表まで基礎総合問題集と個別問題集で振り返り学習を進めてください。
たとえば簿記論は帳簿組織の役割や商品売買関連、財務諸表論は理論をインプットできているかを精査し、基本的な決算整理事項の計算問題を中心に復習しましょう。
――自己採点をすると、結果によってはモチベーションが下がってしまう方もいると思われます。最後に、自己採点後の受験生に向けてメッセージをお願いします。
渡邉先生 仮に今回、手ごたえを感じられなくても、税理士試験にチャレンジする機会や資格がなくなるわけではありません。今ある自分の力を最大限発揮したのですから、次に向けて1から出直して頑張っていきましょう!
自分の進んできた道が1本しかない、この道がなくなったらどこに向かえばよいのかわからない、そう悩んでしまう方も多いです。しかし、道は1本だけではなく、来年再受験する道はもちろん、人によっては大学院に進む道もあるかもしれません。これまで進んできた道を「幹」とするのなら、そこから別の道である「枝葉」を見つけることも大事です。
また、モチベーションが下がったときは、思いっきり休んでください。ただし、「どう休むか」も大事です。1人で過ごすほうが気楽な人もいれば、友達と外で遊ぶほうが何も考えなくていいという人もいるでしょう。自分に合った方法でリフレッシュし、再スタートをきってください!
<執筆者紹介>
渡邉 圭(わたなべ・けい)
千葉商科大学基盤教育機構で准教授を務める傍ら、会計教育研究所「瑞穂会」で税理士試験講座(簿記論・財務諸表論)と日商簿記検定1級~3級講座を開講し、ともに多数の合格者を輩出している。
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