資格の学校TAC講師 加茂川 悠介
誰もが忙しい年度末
これから年度末に向け、お忙しい時期かと思います。しかし今からは8月の本試験に向けて最も大切な時期。
つまり、「繁忙期をどのように過ごすか」が、税理士試験合格に最も重要と言っても過言ではありません。
そこで、「どのように繁忙期を乗り越えればいいのか」を一緒に考えてみましょう!
【改革1】「空いた時間で」から「時間を作る」へシフト
これまで、仕事終わりに頑張って予備校に通ったり、土日などをうまく利用して、税理士試験の勉強に励まれてきたことと思います。
しかし当然、繁忙期では、今までどおり「空いた時間に勉強する」だけでは、勉強時間が足りません。
残業があれば夜は勉強時間を確保できなくなりますし、土日出勤もあるでしょう。ですので、今までのようなスタイルでは繁忙期は乗り越えられないことを、まず自覚してください。
そのうえで「じゃあ、どうするのか?」ですが、可能な範囲で積極的に、戦略的に「勉強時間を作る」ことが不可欠です。
ある合格者の一例を挙げます。彼は税理士事務所に勤務しており、まさに年明け以降の今の時期は「超忙しい!」と言っていました。そこで、どのように勉強しているのかを尋ねると、次のような答えが。
今までどおり、平日夜に予備校に通って土日に復習するというスタイルでは勉強時間が確保できないので、朝型に変えました。 朝早く起き、職場近くのカフェにいつもより1時間早く行って、仕事の前に毎日1時間集中して勉強しました。 朝が弱いほうだったので、最初は早起きするのに苦労しましたが、確実に勉強できる時間が朝しかないことと、必ず合格してやるという想いで、なんとか継続しました。 |
これはほんの一例なので、「必ずこうしないといけない」というものではありませんが、皆さんに感じてもらいたいのは、「彼が積極的に、戦略的に勉強時間を作りつづけた」ということ。
時間は平等です。「自分に与えられた環境のなかで最大限、積極的に勉強時間を作り出してほしい」と思います。
【改革2】膨大な理論に目を触れさせる
本試験でどこが出されても一通り答えられるよう、何度も何度も繰り返しテキストを読み返しましょう。
もちろん覚えるつもりでテキストを見てほしいのですが、力点はむしろ、膨大な理論の範囲をカバーするために、ある程度の量を「毎日、目に触れさせる」こと。これを本試験まで継続してほしいのです。
私は講義のなかで、予備校の演習範囲をうまく利用しながら、毎日理論に目を通すようアドバイスをしています。
たとえば5月以降は、予備校での演習が6回ぐらいで理論全体を1回転するようなイメージなので、次の演習まで1週間、毎日しっかり理論に目を通してもらいます。つまり、理論全体をだいたい6週間で目に触れさせることとなります。
【改革3】「音読」が効果的!
理論に目を通すとき、ただ見ているだけでは眠くなります。そんなときは、私自身もやっていましたが、「音読」が効果的です。声に出して読むと、耳からも入り、口の筋肉を使うという動作を伴うので、眠くなりにくいと思います。
ここで1つ、私の失敗談があります。私は理論テキストに、先生から教わったことで理解の助けとなるものや、演習でうまく解答ができなかったものなど、いわば私の弱点をたくさん書き込んでいました。
最初は、毎晩寝る前にそれを音読していたのですが、 いろいろなことが書きこんであるものですから、 気持ちが乗ってくると時間がかかり、寝る時間が遅くなり、次の日にこたえるようなときがありました。
そこで、毎日の音読では、基本的な論点が集約されているもの(TACではポイントチェックと呼んでいるようなもの)を使うようにしていました。
音読をしているときに、どうしても気になるようなことがあれば、そのときは自分で作り上げた理論テキストを開いて確認をしていました。
【改革4】自分の頭で考えながら覚える
理論テキストをすみずみまで読み、「ここは重要だな」とか「これは書かないといけないな」とか、「この部分で間違えてしまったな」などと考えながら知識を定着させていきましょう。
もし予備校に通っている方であれば、次回の演習範囲をベースにじっくり覚えると、演習でも高得点が取れるでしょうから効果的です。
そして、ここでぜひ、「要約する」もしくは「キーワード/キーフレーズを考える」ことをやってみましょう。
「自分の頭で考える」ことが何より大切です。ですので、「より脳に定着させてやろう」というイメージで理論テキストを咀嚼してください。
具体的には、理論テキストの見開き2ページを読み終わったら、本を一旦閉じて「この2ページには何が書いてあったかな」、「この2ページの理論が出題されたら、必ずこれを書かないといけないな」、「右上にはどんなことが書いてあったかな」と頭の中で整理をし、脳に焼き付けてほしいのです。
「脳に定着させる」とか「脳に焼き付ける」というのは抽象的なフレーズですが、そのようなイメージをもって勉強に臨んでください。
【改革5】「慣れる」と「覚える」に分ける
受験生時代、最終的に私がイメージをしていたのは、本試験で理論問題を見たときに、頭の中で自分なりの理論テキストをペラペラめくり、「ここに書いてあったよな」とか「このフレーズは書かないといけないよな」といったことを思い起こせるようにするということです。
膨大な量の理論を目の前にして、「できるかな」とか「こんなにたくさん覚えられるかな」とひるんでしまうこともあるかと思います。私自身もそうでした。でも、刻々と近づいてくる本試験を前にして、ひるんでばかりもいられません。
そこで、理論を車の両輪のように「慣れる作業」と「覚える作業」に意図的に分けましょう。これから忙しいようであれば、「慣れる作業」は通勤時間や休憩時間などのスキマ時間を利用して必ず「毎日」行い、1時間でも2時間でも、まとまって時間がとれるようなときには集中して「覚える作業」を行ってほしいのです。
受験生の方へ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。少しでも受験生の糧になれば幸いです。
計算についてはあまり触れることができませんでしたが、予備校に通っている方も独学で頑張っている方も、復習を貪欲に行ってください。
これからますます寒くなりますが、体調管理を徹底し、次回の本試験で見事に栄冠を勝ち取りましょう!
【執筆者紹介】
加茂川 悠介(かもがわ・ゆうすけ)
税理士、CFP®。中央大学法学部、早稲田大学大学院法学研究科修了後、大手専門学校で教鞭をとる。その後、立命館大学大学院法学研究科で税法を学び、会計事務所勤務を経て、財務捜査官採用試験に合格。宮城県警退職後、資格の学校TAC税理士講座で講義を行う。現在、TACほか芦屋大学や近畿大学等でも講義を行い、日々、わかりやすい講義に向けて自己研鑽している。
※本連載は「会計人コース」2019年2月号掲載「合格る勉強法へシフトしよう 受験のプロから学ぶ学習意識改革5」の一部を再編集したものです。