【税理士法人山田&パートナーズ社員インタビュー】File4:土田裕規「証券マンから会計業界へ! 公認会計士が「税理士法人」を選んだ理由」


税理士法人山田&パートナーズ(YP)に入社して2年目の土田さん。以前は証券会社でリテール営業をされ、公認会計士試験に合格して監査法人に勤務の後、税理士業界に転職されました。理系出身の土田さんが公認会計士を目指したきっかけから、証券会社→監査法人→税理士法人という転職経験まで幅広くお話をお聞きしました。監査法人か税理士法人で迷う受験生や、異業種からの転職を考えている人にも必見の内容です。

【目次】
現在のお仕事について聞いてみよう!
公認会計士を目指したきっかけについて聞いてみよう!
キャリアプランについて聞いてみよう!
情報のキャッチアップについて聞いてみよう!
これまでのキャリアについて聞いてみよう!
3つの業界の特徴について聞いてみよう!
受験時代について聞いてみよう!
今後の展望について聞いてみよう!

現在のお仕事について聞いてみよう!

――現在の仕事内容について教えてください。

土田さん ウェルネスマネジメント事業部で、ほとんどが相続税申告の業務です。

ざっくりと、資産税のお仕事が7割、法人の決算業務のご依頼が2割で、3月にある個人の確定申告が1割ですね。基本的に個人のお客様を対象とした業務がメインです。

相続の案件でいうと、お亡くなりになる直前に税金対策をするというのは現在しにくくなっているので、実際に相続が起こってからの話が中心です。なので、たとえば「数年後に発生するかもしれない相続にあたって、どういう資産構成にするか」という話は、1時間程度の雑談のような形でお話しすることもあります。

――今回の企画でインタビューをしたなかにも、資産税を中心にされている方がいらっしゃいました。部署による特徴はありますか?

土田さん そうですね、「YPは資産税(相続税)に強い」ということを謳っていますが、私の所属するウェルネスマネジメント部は、特にその分野に強い部署です。

実はいま、銀行や証券会社は、相続の案件に力を入れているという側面があるのですが、そのようなお仕事の話が私たちの部署に集まってくるように、部署としても戦略を立てて活動しています。

また、私を含め他のメンバーも、「資産税の仕事がしたい」と思ってYPに入社してきた人たちばかりなので、やりたい仕事である相続税の案件が集まってくるという特徴もあります。

――どうして相続税の案件をしたいと思われたのですか?

土田さん 相続税の業務を希望した原点というのが、証券マン時代における個人営業の経験がとても大きく影響しています。

かれこれ十数年ほど前になりますが、個人のお客様やオーナー様と会社の経営や資産運用について話すことが楽しかったので、「もっと専門的に話がしたいな」と思ったことがきっかけです。

個人のお客様は、「専門的なことを知りたい」というより、「わかりやすく知りたい」という気持ちが強いんですね。専門知識を相手にも伝わるように、わかりやすくお話するのは大変ではあるんですが、そのぶん、やりがいは大きいです。

その頃は、実は「簿記のボ」の字も知らなかったのですが、オーナー様とお話する機会も多かったので、経営状況や数字を読み解ける力を身につけたいと思うようになりました。

そこで、会計の専門性を高めたいと感じ、公認会計士を目指そうと思いました。

公認会計士を目指したきっかけについて聞いてみよう!

――いろいろな資格があるなかで、なぜ「公認会計士」を目指したのでしょうか?

土田さん 1つは、公認会計士の資格を取ると、要件を満たせば、税理士と行政書士にも登録ができるということを知ったからです。

それ以上に決め手になったのが、受験の性質ですね。

よく例えられるのが、税理士試験は「長距離マラソン」を走るようなもので、会計士試験は科目数が多いけれども一気に駆け抜ければ早く取れる「短距離走」のようなものだと。

私が公認会計士を目指したのが30歳になる手前で、私のような年齢で早く資格を取るには公認会計士試験がベストだと判断しました。

とはいえ、公認会計士試験の受験生は、ほとんどが大学生です。なので、専門学校では、私よりも年上の方がクラスに1人だけいるような状況で、現役の大学生たちに混ざって私も勉強していました。

――働きながら受験勉強されていたのですか?

土田さん 証券マン時代は、神奈川県の藤沢市に職場があり、江の島の海を見ながら働いていました。最初は、働きながら簿記検定の勉強をしていたのですが、恥ずかしながら、働きながらでは日商簿記2級にも合格できなかったのです。

そこで、一念発起して仕事を辞め、静岡県の実家に帰って、受験に専念させてもらうことにしました。

短答式試験に1年半、論文式試験に2年半かかって合格することができましたが、受験生活は本当に大変でした。

――その後、実務経験を積むために監査法人に入られたんですか?

土田さん 監査法人には論文式試験に合格してから入所しました。2年弱、上場企業の監査業務の経験を積みました。

ただ、登録のための実務要件としては、証券マン時代の職務経験が一部、カウントされました。私自身は、とにかく早く公認会計士の資格を取りたかったので、関東財務局に8,000字ほどの申請書類を書いて、短縮依頼を出し、修了考査をすぐに受けました。

2年弱ですが、監査法人の仕事もとても面白かったですよ。監査業務では、「経営者がどのようなことを考えて経営をしているのか」が感じられ、取締役会の資料なども見ることができるので、上場企業の内側を見られるのが醍醐味ですね。

当然、仕事としては数字のチェックがメインではありますが、監査業務のときに「どういうスタンスで会社と関わるか」は、その人の姿勢次第で面白さを感じたり、興味をもてたりするようになると思います。

監査業務も面白くて、人によっては監査法人で経験を重ねる会計士も多いですが、私の場合は、「資産税に興味をもった」というのが公認会計士を取るきっかけでもあったので、YPへ転職することにしました。

キャリアプランについて聞いてみよう!

――読者にも、「監査法人か、税理士法人か」で迷っている方がいらっしゃるかもしれませんね。

土田さん 1つ、リアルな話をしてもいいですか。たとえば、私のように30歳前後で公認会計士試験を受験して合格しても、監査法人では新卒と同じ給料テーブルなんです。もちろんお金がすべてではありませんが、社会人経験のある途中入所の人にとっては、はじめはそこまでやさしくないかもしれません。

あとは、別の視点でのお話として、もともと私自身は「独立すること」を少し考えていて、「自分のペースで仕事をしたい」という気持ちが強かったんですね。そうすると、独立するなら法人より「個人」を相手にした仕事のほうがやりやすいので、監査法人よりも税理士法人のほうが適していると考えました。

YPで働いている今は、「組織」にいるやりがいや幸せもとても感じているので、独立するということを現実的に考えているわけではありません。ただ、「資格を取る」からには、どこかしら「独立」も視野に入ってくるのではないでしょうか。自分のキャリアを考えるにあたって、独立というのは1つの考える軸に入れておいたほうがいいと私自身は思っています。

――「組織にいる幸せ」というのはどんな瞬間に感じますか?

土田さん 証券マン時代、「とても自由に仕事をさせてもらえた」という経験があります。たとえば、あるお客様のところにアポなしで訪問して、飛び込み営業をしたとき、そのお客様からはめちゃくちゃ怒られてしまって、会社にもクレームの電話が入ったんですね。

会社に戻っても怒られる覚悟だったのですが、むしろ上司からはとても褒められました。積極的に営業した姿勢やクレームとはいえレスポンスがあったことを褒めてもらえたんです。

今も、公認会計士で、まだ税務に明るくない私を、YPのメンバーが全力でサポートしてくれているということを実感しています。当然、自分で調べるところは調べなければなりません。ただ、自分で調べている論点とは別に、思いもよらない論点に上司や同僚、仲間たちが気づいて、的確に指摘してくれるのは、とても幸せなことだと感じています。

これは組織にいるならではの体験です。

相続税申告は、同じことを繰り返すという側面もあり、人によっては飽きちゃうという感想をもつ人もいるようです。でも私は、税理士試験の勉強をしていなかったからかもしれませんが、毎日、発見があり刺激的です。

そして、その専門知識を、詳しすぎてもだめだし、足りなくてもだめ、過不足なくちょうどよいところで相手に説明して、お客様にもわかりやすく伝えて感謝されたときは、「よし!」と嬉しくなります。

情報のキャッチアップについて聞いてみよう!

――税に関する知識はどのようにキャッチアップされていますか?

土田さん 公認会計士試験で関わる税法は、法人税法と所得税法を中心に消費税法に少し触れる程度なんです。だから、相続税法については、完全にゼロからのスタートでした。

書籍を読んで情報を吸収していきましたけれども、実務で頻繁に出てくる論点は限られているので、他の税法に比べて初心者でもとっつきやすいのではないかと思います。

また、社内の勉強会の存在も大きくて、そこで情報をキャッチアップしています。そういった意味でも、組織のよさを享受していますね。

専門知識ももちろん大切なのですが、税金の知識以上にお客様に求められているのは、お客様とのやりとりです。その点は常に意識するようにしています。

これまでのキャリアについて聞いてみよう!

――大学は物理学科のご出身だと伺いましたが、新卒で金融業界へ行こうと思ったきっかけはなんですか?

土田さん 学生時代は、磁性体という、いわゆる磁石の研究をしていました。実際に、磁石を作っていたんですが、磁石を作るのには、銅やアルミニウム、鉄を砕いて、高温の炉で熱して2日間かかるんですね。その間、炉をずっと観察しておかないといけなくて、その実験中に時間があるので、いろいろなジャンルの本をたくさん読んでいたんです。

そのなかで一番面白かったのが、「お金に関する本」でした。そこで、金融業界を目指そうと思い、証券会社に入社して、会社のオーナー様とお話しするようになり、「もう一歩、お客様と仲良くなりたいな」と思って、公認会計士になりました。学生時代には思いもよらなかったキャリアを今、歩んでいますね。

――YPへの入社はコロナ前になりますか?

土田さん 2020年1月にYPに入社しました。海外ではコロナの感染者が増えていて、日本でも広まってしまうのではないか、という時期ですね。

2019年の10月頃まで監査法人に勤めていて、YPに入社するまで3ヵ月ほどの余暇を過ごしました。監査法人では、期ズレの法人を複数受け持っていたので、決算期が散らばってしまって、繁忙期という明確な波がなく、この決算が終わったら次の決算と、ずっと忙しい状態だったんです。なので、この余暇は本当にのんびりと過ごしていました。

こういうと、激務が理由で転職したように聞こえるかもしれませんが、それはまったくなくて「資産税がやりたくなった」というのが一番の理由です。

私の場合、転職したばかりなので、コロナによる変化は雰囲気の違いを感じるほどではなかったのですが、お客様からの受注は減ったらしいです。特に、クライアントをご紹介していただく銀行側の動きが止まりましたね。銀行員の方も、お客様との面談を控えるようになったので、その影響をダイレクトに受けたという状況です。

ただ、人の亡くなる率は一定なので、コロナが少し落ち着いたかなというタイミングで、ぐっと案件が増えたという印象です。

私が入社した当初は、フロアも見渡せる状態でしたが、今はパーテーションなどを立てて対策をとっています。また、対面でのお客様との面談も意図的に減らしました。

リモートへの移行はそこまで苦労せず、お客様も社会人の方が多くて慣れていたというのもありますね。ただ、Webに慣れている方ばかりだといいのですが、高齢のお客様はオンライン面談は難しいというのが正直なところです。

たとえば、80代の方で相続人がそのお一人だけというケースだと、ご主人がどんな資産運用をしていたかといったことをまったくご存じない方も多く、さすがにリモート面談だと話が進まないんですね。

相続申告の場合、役所を行脚して書類を集めないといけないこともあります。銀行員の方がフォローされることもありますが、フォローしきれない面やお客様自身で対応しなければならない面も当然あるので、そうすると遠隔だけでは対応しきれないことも多くあります。

日本でもワクチン接種が普及してきたので、このような案件においても、ようやく動き出せるのではないかと感じています。

3つの業界の特徴について聞いてみよう!

――証券会社から転職されて、「会計業界ならではだな」と思った文化などはありますか。

土田さん 証券会社は、学歴がまったく関係ない、とってもシンプルな数字の世界でした。

監査法人は、こんなに自由に仕事ができるんだと感じましたね。納期までにしっかりやることをやれば、各人でスケジュールは決められます。責任と自由という感覚です。

税理士法人は、営業がとても大事で、法人間の競争が激しい。お客様にとっては、担当した税理士が「どんな雰囲気だったか」が大切で、これは監査法人との違いを一番感じている点です。

監査法人時代は、クライアントが上場企業で、どうしても敵視される側にいるので、直接的に感謝されるという機会はそれほど多くありませんでした。

今は、お客様に感謝されることがすごく多いですよ。申告が無事に終わった後に、「本当にありがとうございました」とメールをいただけるととても嬉しいです。

そういった意味では、そういうことを言っていただけるような接客や社会人マナーが、自分もできているかというのは心がけています。

証券マン時代に、「お客様の話をちゃんと聞く」ように教えられたことがあります。たとえば誰かと話をしているとき、沈黙が怖くて、ついつい間を埋めようとしちゃうときがありますよね。だからこそ、今でも、この教えを大切にしています。

お客様への対応が大事な税理士法人において、証券マン時代の経験が活きていると感じています。

受験時代について聞いてみよう!

――受験勉強で工夫していたことはありますか?

土田さん 受験の最後のほうに「うまくいったな」と思うことがあります。2つのことを心がけたら、ストレスがとても軽減したんです。

1つは、勉強時間を3つに分けて考えました。

というのも、年齢のせいか、集中する体力が足りなかったんです。だから、若者のように朝から晩まで専門学校の自習室で勉強するというのは無理だと感じました。

そこで、パート1として、【早朝】3~7時に4時間勉強しました。

その後、通っていた資格の大原まで移動するのですが、食事したり移動したりすることで、かなりリフレッシュできていたんです。「さあ、1日始まるぞ」と思えるくらい、すでに4時間勉強したことも忘れて、新たな気持ちで勉強を始められます。とてもお得感がありましたよ。

パート2は自習室に着いてから【お昼まで】の4時間程度、そして昼食をはさんで、パート3として【夕方まで】の4時間勉強していました。

夕方には家に帰って、夜8時には就寝という生活リズムです。

さすがに、これとまったく同じ時間帯で配分する必要はありませんが、勉強時間を「3つのパートに分けて考える」のはお勧めできます。

もう1つは、A論点のうち、本当にわからないところだけを「A3用紙」にコピーして、持ち歩いていたことです。

繰り返し勉強しているとわからないところが見えるようになってくるので、それらをまとめて20枚くらい持ち歩き、移動時間などのスキマ勉強に見ていました。そして、完ぺきに理解できたところはその用紙を削っていったんです。

皆が得点する問題ほど配点が高いという性質があるので、A論点をしっかり押さえることが大切です。

A3用紙に凝縮してまとめるようにすると、まるで新聞感覚のようにさっと広げることができますよ。

この2つはかなり効果があって、こうした自分なりの勉強法を見つけたことで、ものすごく受験勉強のストレスが軽減され、一気に成績が伸びました。

今後の展望について聞いてみよう!

――今後の展望として考えていらっしゃることはありますか?

土田さん ITやオンラインのさらなる普及で、できることや削られていくことも増えていくと思います。しかし、相続税の仕事に関しては、お客様とのコミュニケーションが特に重要視されます。

案件がスタートする“はじめまして”のときは、遠隔でお話しすることもあるかもしれませんが、やはりコミュニケーションは大切です。高齢のお客様が多いのでなおさらです。そこはITに変わられることはないはずです。

思いのほかYPが居心地よく、自分の成長になっているので、独立するかどうかはいったん横に置いているのですが、「もし独立してもやっていけるような実力を身につけたいな」というのは思っています。

いま、本当に楽しく仕事ができています。ぜひこの仕事のやりがいを感じてほしいので、受験生の皆さんにも試験勉強を頑張ってほしいです。私自身も受験時代は、仕事をやめてしまっていたので、不安も多かったのですが、ここを踏ん張って夢をかなえていただきたいと強く思っています。

〈お話を伺った人〉
土田 裕規(つちだ ひろのり)
税理士法人山田&パートナーズ ウェルスマネジメント事業部・公認会計士
東京理科大学理学部物理学科を卒業後、大手証券会社に5年間勤務し退職。当時、経理の経験は全くなく、簿記2級の取得にも苦労したが、専門学校に4年間通い、公認会計士試験論文試験に合格。その後、大手監査法人に就職し、証券営業での実務経験の一部が実務経験として認められたため、同年に修了考査を受験し合格。その後、資産税の分野での活躍を求めて税理士法人山田&パートナーズに入社。


【税理士法人山田&パートナーズ社員インタビュー】
File1:安岡 喜大「次の世代を担う人たちへ 税理士の仕事はこれからも社会に求められる」
File2:川村理重子「専業主婦から税理士へ! たくさんの仲間に支えられた働きながらの受験と大学院生活」
File3:井上 弘美「在宅勤務で子育てと両立! 税理士の資格は「長く働き続ける仕事」が魅力」
File4:土田 裕規「証券マンから会計業界へ! 公認会計士が「税理士法人」を選んだ理由」
File5:岩﨑 理恵「ロサンゼルスオフィスで奮闘した4年間! 帰国後も、税理士として日米の架け橋になる」
File6:山田 知佳「新卒で会計業界へ! 神戸⇄東京の「部門間交流」で得た経験を後輩たちにも伝えたい」
File7:阿部 佑大「自分の3本柱を意識! 地元・仙台で”お客様の近くにいる”存在になりたい」
File8:松田紗貴子「将来は海外で働きたい! 働きながらの受験生が活躍できる業界・組織の魅力」


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