税理士受験生応援ブロガー くまお
財務諸表論(2016年)・簿記論(2017年)・所得税法(2018年)の3科目に合格。税法科目免除のために大学院へ進学(2019年)、国税審議会へ修士論文を提出(2021年)。現在は、審査結果を待ちながら2023年の税理士登録を目標に修行中!
ブログ「税活.com」にて、税理士試験受験生を応援する記事を配信。実践的かつ役立つ内容で、多くの受験生の支持を得ている。
「素読み」とは?
「素読み」とは、問題を解く前に行う作業のことです。①解答用紙と問題文全体を確認、②問題の量や難易度を把握、③解く順番と時間配分を決定、という一連の流れで行います。
まず最初に覚えてほしいことは、「素読み」は試験開始前から始まっているということです。試験開始前に問題用紙を見ることはできないのにどうやって? と思うかもしれませんね。
しかし、問題用紙のページ数や解答用紙の枚数は注意事項で説明されます。この段階からある程度の推測が可能です。たとえば簿記論で解答用紙が6枚もあるということは「仕訳を答える問題があるのかも」と推測ができます。
また、解答用紙に受験番号などを記入する時間も無駄にはできません。受験番号などを書きながら、どんな解答項目なのかチラっと見ることをおススメします。大問に対して設問がいくつあるのか、仕訳を書くのかなど、さりげなく解答用紙を見て心の準備をしましょう。
「素読み」判断フロー
試験時間2時間のうち、理論・計算あわせて問題全体の「素読み」に使える時間は5分程度です。じっくり読んで「え~と…」と悩むものではなく、瞬時に判断するものです。
「素読み」で私が行う判断フローです。
【第一段階】学習済か? 未学習か?
まずはじめに、「習ったかどうか」で判断します。未学習のものは「Cランク」いわゆる捨て項目です。学習済という問題のみ、第二段階へ進みます。
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【第二段階】テキストレベルか?
学習済の問題であっても「テキストレベルかどうか」でふるいにかけます。たとえば、資産除去債務の見積りの変更で「将来キャッシュフローが去年は増加して今年は減少した」というような問題ならば、テキストレベルを超えているので「Cランクだな」と判断します。逆に、増加しただけならばテキストレベルなので第三段階へと判断できますね。
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【第三段階】問題の量は多いか? 少ないか?
ここまで残った問題はすべて学習済でテキストレベルです。最後のふるいは「量の多さ」です。問題文の量が多いとか、解く際の手順が多いといった少し面倒な問題は「Bランク」です。一方、問題文の量が少なく解答手順も簡単な問題は「Aランク」です!
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【第四段階】解く順番と時間配分は決まっている!
解く順番は「Aランク→Bランク→Cランク」です。ランクごとの時間配分は「Aランクに75%・Bランクに15%・Cランクに5%」です。
解く順番と時間配分
時間配分
まず、私が理想とする本試験での時間配分をご紹介します。
財務諸表論は、素読み5分・理論50分・計算55分です。簿記論は、素読み5分・第一二問各25分・第三問55分です。
合計110分で設定している理由は、時間オーバーしても吸収する余地を残すためです。実際に、第67回の簿記論では慎重になりすぎて2分オーバーの7分も「素読み」に使ってしまいましたが、予備の10分のおかげでなんとかなりました。もしも最後に時間が余れば、解答の見直しをするか、手つかずのCランク項目の解答に使うとよいでしょう。
具体的に簿記論の第三問(財表の計算問題)でいうと、Aランクに40分・Bランクに10分・Cランク3分です。残りの2分は予備です。もしも「素読み」のときに「Aランクが少なくてBランクが多いな」と判断したならば、Aランク35分でBランク15分に変更するなど配分調整しましょう。
解く順番
オーソドックスな方法として、Aランク→Bランク→Cランクという順番を挙げました。
この方法のメリットは、試験開始直後の緊張状態でも簡単なAランクの問題を解くことで確実に得点を積み上げられることです。1つ解答欄を埋めるたびに「よし2点取った」と、私は心の中でガッツポースをしていました(笑)。
75%の時間でAランク問題を解いたあとに、落ち着いてBランク問題に取り掛かります。この時点で合格するための最低点は確保していますから、合格をより確実なものにするための「+α」だと考えれば、少しは楽な気持ちで問題を解くことができるはずです。
最後のCランクは、本当に時間も労力もかける必要はありません。3分で十分です。テキストにも載っていない or テキストレベルを超えている、つまり「誰も解けるわけがない問題」ですから、時間も労力も費やすことは無駄であると、ここまで読んだ皆さんは判断できますよね。
問題によって判断が異なりますが、私はCランクと判断したときに「0」または「前T/Bの数値」を真っ先に転記して瞬殺することもあります。何も書かなければ必ず0点ですが、何か書いていれば正解する可能性がありますよね。当たればラッキーで、悩む時間を使わずにサクッと何か数値を最初に書く、そんな方法もありですよ。
まとめ
「素読み」は試験開始前から始まっている!
ボーっと試験開始の合図を待っていてはいけません。問題用紙の注意事項や解答用紙の枚数などから、どんな内容が出題されているか推測しましょう。簿記論で「仕訳が問われるな」と思ったならば、片っ端から仕訳を思い出しつつ試験開始を待ちましょう!
「素読み」の判断力はテキスト読み込みと答練で鍛える!
「素読み」の練習はどうやってするのですか? と質問を受けたことがあります。「素読み」は、基本的にそれだけの練習をするようなものではありません。テキストや授業から知識を吸収し、日々の問題演習を重ねることで自然と身につくものです。
自分が間違えた問題はどのレベルだったのか、時間をかけすぎた問題は果たして本当に解くべき問題だったのか、答練の後にテキストを見直しながら検証する作業で判断力が培われます。テキスト読み込みと答練で「素読み」の判断力を鍛えましょう!
Aランク項目だけなら制限時間内に解き終わる!
全部解くと2時間では終わらない問題でも、Aランク項目だけならば2時間で解き終わります。合格するためには、難易度を的確に把握し、難しくない問題を正確に解答することです(+αとしてBランク項目を正答すれば、ボーダーラインを超えられます!)。
「素読み」でAランクと判断したけれど解き始めたら意外と手強い…、そんなときは「すぐ手を引く勇気」が肝心です。こういった経験も答練で積むことができますね。
私は、受験1年目の第66回簿記論では、素読みで決めた配分時間を守ることができず失敗しました。「まず第二問の問3に8分」と決めて解きはじめたのに、気がつけば、この問題に30分近く費やしてしまったのです。緊張と焦りから時計を見る余裕もなく、もちろん手を引く勇気もありませんでした。
素読みの配分時間は必ず守りましょう! 早めに切り上げるのはOKですが、時間オーバーは絶対にNGです!
そして、受験2年目の第67回簿記論でリベンジを果たしました。合計110分で予定したことが最大の勝因です。10分の余裕があるという安心感によって冷静に問題を解くことができました。
また、素読みの精度が高かったことも挙げられます。これは、毎回の答練で、素読みでの配分時間と実際に解くのに使った時間を照合し、検証することで向上します。答練は解きっぱなしにせず、解くべき問題と使える時間の検証は必ずしましょう!
今日から「素読み」を意識して計算問題を解いたり答練を受ければ、時間切れともサヨウナラ!できますし、得点もアップすること間違いなしです。さっそく実践してみましょう!
※ 本記事は、会計人コース2019年6月号掲載「チャートでわかる「素読み」テク」を編集部で再編集したものです。バックナンバーでは、「素読み」の判断フローを図式化したチャートをご覧いただけます。ぜひこちらからお買い求めください。