
油谷景子(税理士)
【編集部より】
実務では、受験勉強で学んだ税法知識以外の周辺知識やノウハウが求められます。頼られる税理士になるにはどういった姿勢で臨むと良いでしょうか。本連載では、税理士の油谷景子先生に相続税業務について教えて頂きます(全3回)。
はじめに
こんにちは、税理士の油谷景子です。
開業7年目となる現在は、法人のお客様をメインとしながら、相続税申告も毎年一定数ご依頼いただいています。
私の事務所があるのは名古屋市ですが、「相続税業務は需要がある」と感じています。相続税申告が必要な方を是非紹介してください!といった営業はしていませんが、開業以来、毎年一定数のご依頼やご紹介が続いています。
今回はケイコ先生として、最近開業した新米先生の相続税業務に関する相談に乗っていきます。
<登場人物>
・ケイコ先生:四大税理士法人、個人税理士事務所を経て名古屋市で開業。2026年で開業して7年目。税理士業界歴約20年。
・新米先生:最近開業した新米税理士。開業までは法人担当が多く、相続税の経験はほとんどない。
*
ある日、共通の税理士を通じて知り合った新米先生からケイコ先生に相談がありました。
新米先生:
ケイコ先生は、法人をメインに顧問をされているようですが、相続税業務は引き受けていますか? 実は…相続税申告の依頼があったのですが、やったことなくてどうしようかと思っていまして…。
ケイコ先生:
はい、相続税申告も毎年一定数ご依頼いただいています。
【解説】相続税業務を引き受ける?
開業前に相続税の申告相談に対応した経験がない先生にとって、法人税や所得税とはまったく異なる相続税は未知の世界かもしれません。「相続税は複雑で難しい」、「引き受けたいけど経験がないから…」、新米先生のように不安があるかもしれません。
もちろん、税理士業務には、常に責任が付きまといます。多くの税理士が加入する税理士職業賠償責任保険(税賠保険)では、支払件数と支払金額ともに消費税、法人税で多くなっていますが、2024年度の税賠保険では相続税の支払件数は49件(全体の7.2%)、支払件数は4億4千9百万円(14.8%)となっており、単純計算で1件当たり約916万円の税賠保険の支払金額となっています。
税理士としての責任とリスクについては、相続税に限ったことではありませんが、相続税申告は受任されない先生もおり、また、ケースバイケースで新たな論点があり、難しさもあることも確かです。
私は、もともと開業前に相続税の申告や相談などに対応してきた経験があったこともあり、開業当初から相続税の申告相談を引き受けていくと決めていました。実際に、その選択でよかったと感じています。
それは、次のような点にあります。
1.中堅中小企業の顧問をする上で、必要な知識
中堅中小企業では、代々続く企業もあります。そうした企業にとっては、非上場株式の評価、譲渡所得、相続税・贈与税などの資産税のテーマは切り離せません。代々続く中堅中小企業の顧問をしていると、資産税の相談はついてまわります。そうした際に、資産税の知識はとても役に立ちます。
2.地域の方から必要とされる業務
また、代々続く企業でなくとも、顧問先の身内の方が亡くなられたり、顧問先等からの紹介などで資産税に関する相談や申告の依頼もあります。相続税の申告を相談しやすく、安心して任せられる税理士に依頼したい、けれど税理士とのつながりもないから誰にお願いしたらよいかわからない、そんな方も多いです。そうした際に、資産税の知識と経験があれば、顧問先やその周囲の方、地域の方から必要とされ、お役に立つことができます。
法人税業務はウェブ会議などのリモート対応もありますが、相続税に関しては、地理的に近い範囲内で引き受けることが多いです。
3.ノウハウが蓄積される
ケースバイケースで案件ごとに新たな論点が出てくることが資産税の難しさの1つかもしれません。それは、新しく引き受ける際にはハードルにもなりますが、逆に、研鑽を積み、実務経験を重ねていくうちに、ノウハウが蓄積されて、強みにもなり、面白さになります。
そして、結果として売上も増えます。
なお、相続税の申告件数は増加の一途をたどっています。
2015年に基礎控除額が引き下げられ、また、少子高齢化社会、相続人数の減少などによって、国税庁の発表によると2024年分は、約16万人の相続税申告が必要な被相続人がいたとのことです。
さて、新米先生の相談に戻って…
*
新米先生:
ありがとうございます! 責任もってお引き受けすることにします。ただ、これからどうやって進めていけばよいでしょうか?
ケイコ先生:
次回、相続税申告の進め方についてお話しましょうか。
(第2回へつづく)
【プロフィール】
油谷景子(あぶたに けいこ)
税理士
日本の企業の99%を占める中堅中小企業を税務会計面から支援する名古屋市の開業税理士。
四大税理士法人(東京・名古屋)で上場企業等向け税務申告、連結納税(グループ通算)制度や国際税務、コンサルティング業務に従事。また、個人事務所で中小企業向け税務会計サービス、資産税の申告・相談など様々な実務経験を積んだ後、独立開業。
取得科目:法人税、消費税、相続税
著書に『スタートアップ企業の税金To Doリスト』(中央経済社)、『図解とポイントでしっかり学ぶ 法人税の教科書』(清文社)がある。
・事務所ホームページ
・YouTube「税理士YouTubeスクール【ビジネスとまなび】」
・X:(@keiko_taxmgt)
【著書紹介】











