
こんにちは、関西学院大学で原価計算論を教えている濵村です。ずいぶん涼しくなってきたように思いますが、短答式試験も近づいて忙しくされている人もいるのではないでしょうか。
今回は、前回のトーマツ東京オフィス体験記に引き続き、台湾の安永聯合會計師事務所(EY台湾)に学生たちと訪問した際のルポをご紹介します。この講義は学生が主体となる講義(PBL:Projected Based Learning)で、コンペを経て優勝したチームの記事を「会計人コースWeb」に掲載しています。
私も台湾の監査法人を訪れるのは初めてでしたが、とても興味深いお話をたくさん伺うことができました。とくに日本と台湾の違いを知ることができ、将来海外で公認会計士として働くことを考えている人にも役立つお話があるかもしれません。
あまり私が話過ぎてもアレなので、さっそく学生たちにバトンタッチしていきます。
私たちは関西学院大学商学部の学生です。5日間の台湾での海外研修に参加し、複数のチームに分かれてEY台湾に所属する橋本先生(橋本純也パートナー)、川口先生(川口容平シニアマネージャー)、ジョナサン(陳明宏 Jonathan Chen、 台中事務所所長)のお三方にお話をお聞きしました!
その中でも、私たちのチーム(チーム名:「井上ブラザーズ」)は、特に台湾と日本のEYでの興味深い違いとして男女比率の違いに注目してご紹介します!

公認会計士の男女比率が逆!?
突然ですが、みなさんは日本で活躍している女性ってどんな女性がいるか、思い浮かびますか?
日本では女性公認会計士は全体の約20%にとどまっていますが、台湾では主要な会計事務所での女性従業員比率は約70%にも達しています。そのため、女性が活躍するEY台湾でのインタビューがこの問いに答えを与えてくれるのではないかと考えました。
実は、日本における専門職での女性比率の低さは、公認会計士に限った話ではありません。
たとえば、日本の弁護士の女性割合は18.8%、医師は21.9%、不動産鑑定士は10%程度にすぎません。つまり、公認会計士だけが特別に女性比率が低いわけではないのです。
しかし、この状況をそのまま放置してよいのでしょうか? 女性公認会計士が増えることには、多くのメリットがあるといえます。
そこで私たちは、女性が公認会計士として働くメリットと、インタビューをもとに活躍する”女性像”についてまとめました。
女性公認会計士のメリットとは?
まず、公認会計士の仕事で欠かせないのは、クライアントとのコミュニケーションです。クライアント側の担当者が女性のとき、同性同士の方がより円滑なコミュニケーションができることも多いでしょう。
次に、男女の異なる価値観や視点が、監査やコンサルティングの場に持ち込まれることで、多角的な分析やバランスの取れた判断が可能になります。
これは業務の質を高め、組織にとっても大きな強みとなります。このような理由から、日本でも女性公認会計士の割合を増やすことは効果的だと考えています。
ただし、重要なのは単なる女性の優遇ではなく、男女を問わず実力を正しく評価する平等な制度の下で推進していくことでしょう。
“女性7割”の台湾に学ぶ! 公認会計士が輝く職場とは?
本題に入る前に、私たちはもう1つ疑問に思ったことがあります。それは、日本では女性の公認会計士の数が非常に少ないのに、なぜ台湾では女性の割合が約70%と圧倒的に多いのか、ということです。
この点について、EYの台湾事務所で公認会計士として働いている橋本先生と川口先生にお話を伺いました。お二人によると、台湾では共働き家庭が多いことが背景にあるとのことです。
ここで、台湾女性の特徴をいくつか挙げて台湾EYの秘密を洗い出していきます!
【台湾女性の特徴】
●我慢強い
●スタッフやマネージャーといった役職に向いていると評価されている
⇒自然と女性の割合が高くなっている可能性がある
一方で、
パートナーなど上位の役職に就いている人は男性が多い
=日本と同様の課題を抱えている
つまり、人数としては女性が多いものの、キャリアの上位層における男女差はまだ解消されていないということです。
では、”日本で女性公認会計士の割合を増やす”にはどうすればよいのでしょうか。
答えの1つは、「働きやすい環境づくり」にあると考えます。台湾では共働きが一般的なので、女性の就業率が高く、それが公認会計士の高い女性比率につながっています。日本でも、女性が働きやすい環境整備が不可欠だといえます。特に、出産や育児と仕事を両立できる制度の充実が重要でしょう。
実際、EY新日本では、社員が安心してキャリアを継続できるよう、さまざまな制度を導入しています。
たとえば——
・育児休暇は子供が最長2歳になるまで取得可能。2回に分けて利用することもできます。
・保育園に入れなかった場合でも退職せずに働くことができる制度があり、待機児童問題に対応。
・配偶者出産休暇(有給5日+無給5日)や、出生後8週間以内に最大4週間の育児休暇も利用できます。
・育児コンシェルジュによる相談サービスや、ベビーシッター費用の全額補助など、きめ細かいサポートも。
こうした取り組みが広がれば、日本でも女性公認会計士の数は自然と増えていくと考えられます。
また、EY新日本の男性育児休暇取得率はなんと85%! 女性だけでなく、男性も育児休暇を取っていることから、男性にとっても育児と仕事を両立しやすい制度だと考えられます。

オススメ!!女性×公認会計士
次に、女性公認会計士として働く魅力4つをまとめました。
1.公認会計士は国家資格に基づく安定した職業である
2.働き方の柔軟性
3.キャリアの幅広さ
4.女性ならではの強みを発揮できる
まず、1から見ていきましょう。公認会計士は景気の影響を受けにくく、専門家としての信頼性が高いため、結婚や出産といったライフイベントを経ても資格を活かして働き続けることができます。
次に、働き方の柔軟性を見てみます。近年は監査法人やコンサルティング会社では、リモートワークや時短勤務が広がっています。また、独立開業すれば、自分のライフスタイルに合わせて働くことも可能です。
そしてキャリアの幅広さも重要です。監査や税務にとどまらず、コンサルティング業務や企業内会計士として経理や経営企画に携わることもできます。さらに、将来的にはCFOといった経営層に進む道も開かれています。
最後の、女性ならではの強みを発揮できる点も見逃せません。クライアントとの円滑なコミュニケーション能力や、チーム内の調整力は、多くの現場で高く評価されています。多様性が求められる今の時代には、女性会計士の存在そのものが組織の競争力を高めるといえます。
まとめ
公認会計士はその業務により「企業の信頼を守る」という社会的に重要な役割を担っています。いまだ日本では少ない女性の活躍が広がることで業界全体のイメージも刷新され、次世代のロールモデルとして社会に貢献できると考えます。
つまり、公認会計士は「安定性」「柔軟性」「キャリアの幅」「女性の強み」「社会的意義」といった様々な要素を兼ね備え、女性にとって大きな可能性を持つ職業だといえます。
今後、日本においても女性が働きやすい環境を整えることが、男女比率の改善につながるとともに、社会全体にとっても大きな利益をもたらすはずです。
研修を終えて
井上:私は将来、公認会計士として海外で仕事をすることを見据えて今回のプログラムに参加しました。海外は日本と置かれている環境が異なるため業務のみならず働き方も異なっていることがわかりました。台湾事務所で働いていらっしゃるお三方はそういった現地の環境に適応し、ご活躍されていることに深く感動し私もそのようになりたいと考えています。
永城:今回のPBLで、日本と台湾では働いている女性の比率が正反対ということを知り、とても驚きましたが、どちらの国でも企業の制度による働きやすい環境づくりが大切だとわかりました。今回の研修で学んだことを活かし1人の女性として、私は将来社会で働く際、誰もが自分の力を発揮出来て過ごしやすい環境を作ることに貢献していきたいです。
松本:今回の研修では、直接働く環境について学ぶことで、自分の将来を改めて見つめ直す貴重な機会となりました。特に、インタビューでいただいた「さまざまな知識や人とのつながりに触れることが大切であり、それが自分の価値となる」という言葉は強く印象に残っています。この言葉を胸に、会計の学習にとどまらず、幅広い知識や経験を積み重ねていきたいです。
山田:私がこのPBLに参加する以前は、正直、台湾へ学びに行くって日本じゃできないことなのかと考えていました。もちろん公認会計士を目指して勉強されている方も多くいらっしゃいましたが、私と同じように将来やりたいこと、なりたい職業を探すために参加している人も多かったです。EY台湾の方たちとたくさんお話できたのはもちろん、観光も十分に楽しめて充実した5日間でした。
吉田:今回のPBLでは、日本と台湾で女性の公認会計士の割合に大きな違いがあることを知り、とても興味を持ちました。私は男性の公認会計士試験の受験生ですが、同じ業界を目指す者として、女性が働きやすい環境をつくることは自分にも関係のある大切なテーマだと感じました。研修を通して、職場にはさまざまな考え方や価値観を持つ人がいることが大切だと改めて感じました。
文責:井上ブラザーズ(井上 聡・永城 美夢・松本 陽葵・山田 愛純・吉田 穣央)

おわりに
濵村です。いかがだったでしょうか。EY台湾のお三人とお話しする時間は、私にとっても刺激的な時間でした。組織の中の多様性は、組織を良い方向に導く可能性があります。そのため、今回扱ったような男女比率の改善は重要なテーマだと考えられます。
台湾EYでの研修から、ただただ比率を改善するだけでなく、女性が活躍できる場を作ることも大事だと学びました。今、公認会計士を目指して勉強している人たちも、自分が働き始めたあと、組織を動かしていくことになります。そのときの参考に、少しでもなればいいなと思います。











