わたしの独立開業日誌 #税理士・髙嶋のぞみ


【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。

北海道から東京へ、5つの事務所で学んだ開業への道のり

札幌の幼稚園で11年間、幼稚園教諭として子どもたちと向き合う日々を送っていた私。
結婚を機に東京都八王子市へと居住地を移した後は、多摩地域にある5カ所の税理士事務所で勤務する機会に恵まれました。
それぞれの事務所で、丁寧な顧客対応、効率的な業務運営、専門分野への特化など、異なる運営スタイルを学ぶことができました。

そして2024年4月1日、これまでの経験を糧に八王子市で独立開業を果たしました。
5カ所での勤務経験があったからこそ、「自分はどのような税理士事務所にしたいのか」という明確なビジョンを描くことができたのです。

「他の人にできないこと」が教えてくれた自分の強み

勤務時代、顧客の担当を任されるようになり、相談を受ける中で、ある思いが強くなりました。

「いつでも経理のやり方を確認できる会社独自のマニュアルを作ってあげたい」
「試算表の数字だけでなく、グラフで見える化して社長にもっと理解してもらいたい」

そんな思いから、実際にマニュアルやグラフを作成したところ、所長から「他の人ができないことをしないでくれ」と注意を受けました。

組織である以上、それは仕方のないこと。
しかし同時に気づいたのです。
「他の人にできないこと」こそが、自分の強みなのだと。

自分の思うとおりに顧客をサポートしたい。
その想いが、独立開業への決意を固めました。

安全で快適な環境を求めて〜レンタルオフィスという選択

事務所は自宅ではなく、外部に借りることを最初から決めていました。
女性一人事務所ということで安全性を重視し、レンタルオフィス一択でした。

レンタルオフィスに事務所を構える税理士の先輩方から、「レンタルオフィスは人気だから早めに予約した方がいい」「1人部屋は狭いから2人部屋がオススメ」とアドバイスをいただき、開業予定の9カ月前、2023年7月には空き待ちの申し込みをしました。

運良く開業1カ月前の2024年3月に、BIZcomfort京王八王子の2人部屋が空き、入居することができました。

コンシェルジュさんがいるので、施設はいつも清潔に管理され、ドリンクバーや冷蔵保管対応の宅配ボックスもあり、想像以上に快適で楽しい毎日を送っています!

レンタルオフィスの風景①
レンタルオフィスの風景②(お祝いでいただいた雑貨がたくさん)
予約して使える会議室

「会計がやさしく見えてくる」〜キャッチコピーに込めた想い

開業に向けて、自分を認知してもらうためには、ブランディングが必要だと考えました。
そこで2023年8月、ことばやさん(https://kotobayasan.com/)に、キャッチコピー制作を依頼しました。

面談後、10個のキャッチコピーを提案していただき、周りの人たちにどれが良いか聞いてみることに。ところが、Aさんは1番、Bさんは3番、Cさんは7番と、見事に意見が分かれてしまいました。

最終的に、自分が一番ピンときた「会計がやさしく見えてくる」をキャッチコピーに決めました。
これが、私の想いを一番表現していると感じたからです。

理想のホームページとの出会いから始まった制作秘話

税理士事務所勤務時代、ホームページ担当になることが多く、集客や採用に効果的なホームページを作るため、他の税理士事務所のサイトをたくさん研究していました。

そんな中で出会ったのが、札幌市のこだま税理士・行政書士事務所(https://kodama-tax.jp/)のホームページでした。
親しみやすく温かなイラストが印象的で、まさに私が理想とするホームページだったのです。

思い切って、面識のないこだま先生にSNSでDMを送り、「WEBデザイナーを紹介してほしい」とお願いしました。
すると、実際にお会いする時間を作ってくださり、紹介だけでなく開業のアドバイスまでいただけました。

2023年9月、紹介していただいたWEBデザイナーさんにホームページ制作を依頼。
ことばやさんが考えてくださったキャッチコピーも活かしていただき、私の想いが形になった温かみのあるホームページが誕生しました。

同じイラストで名刺もデザインしていただき、お渡しするたびに「素敵ですね」とお褒めの言葉をいただけるのが、いつも嬉しい瞬間です。

デザインを褒められる名刺

安心できる環境を整えて迎えた開業の日

開業に向けて、業務に欠かせないツールや機器の準備も進めました。

会計ソフトと税務ソフトの選定では、他の税理士さんから「開業時は時間があるから、使ったことのない税務ソフトにチャレンジしてみては?」とアドバイスをいただきました。
しかし、慣れ親しんだMJS(株式会社ミロク情報サービス)の税務ソフトを選択。
パソコンや複合機もMJSで揃えました。

税理士業務にパソコンは欠かせない存在です。
MJSで購入すると保守サービスが付いているため、万一のトラブル時も安心できると考えました。

準備を進める中で、勤務時代は当たり前のように全て揃っていた環境のありがたさを改めて実感しました。

そして2024年4月1日、予定通り開業を迎えました。
前勤務先の税理士事務所から顧問先を少し引き継がせていただき、完全なゼロスタートではなかったことは本当にありがたいことでした。

開業直後は、顧問料の自動支払いサービス契約、事務所名入り封筒の準備、事務所備品(書庫等)の購入など、想像以上に慌ただしい毎日。
そんな中、使い慣れた税務ソフトを選んでおいて正解だったと実感しました。

開業前のスカウトから生まれた経理効率化×財務コンサル

開業前、ある勉強会で知り合った社長から「開業したら、我が社でコンサルをしないか?」とスカウトをいただきました。

その会社の課題は明確でした。
毎月の試算表が出てこないため業績が把握できず、経営の見通しが立たない状況。
さらに経理担当者は毎日残業続きで、業務の無駄を省きたいとのことでした。

既に顧問税理士がいらっしゃったため、一度はお断りしましたが、社長の熱意に押され、経理効率化コンサルタントとして関わることになりました。

まず経理担当者から業務の流れを詳しくヒアリング。
その方の能力を最大限活かしながら効率化する方法を考え、その会社独自の経理マニュアルを作成しました。

結果は期待以上でした。
経理担当者の残業はなくなり、困った時にいつでも相談できる相手ができたと大変喜んでいただいています。
翌月には試算表の提出ができるようになり、社長も業績を把握して問題点を抽出し、改善策を打てるようになりました。

現在では経営支援クラウド『bixid』を活用して、お金の動きや利益をグラフでわかりやすく説明し、財務コンサルタントとしても力を発揮しています。

一人事務所の悩みを解決する税務相談サービス

一人で事務所を運営していて最も大きな悩みは、気軽に相談できる相手が近くにいないことでした。

税務判断で迷う場面は日常的にあります。
先輩税理士や大学院の同期に相談することもありますが、毎回聞くのは迷惑になるでしょうし、経験談は参考になるものの、たまたまその時見過ごされただけかもしれません。

事例によっては微妙な違いで見解が分かれる可能性もあり、自分の判断ミスでお客様に損害を与えてしまうリスクもあります。
何より、確かな根拠が欲しいのです。

開業から半年が経った頃、大学院の同期から以前教えてもらった松嶋税務相談室(https://totaltaxconsulting.com/matsushimataxsoudan/)を思い出し、入会しました。
元国税調査官である松嶋洋先生の見解を即座に聞けるこのサービスは非常にありがたい存在です。

同様のサービスとして、KACHIELの税務相互相談会(https://kachiel.jp/lp/sougo-soudankai/)もあります。こちらも著名な税理士さんが税法ごとに回答してくださいます。

さらに、弁護士法人ピクト法律事務所の永吉啓一郎先生の税理士法律相談会
(https://pct‐law.jp/service/zeirishi-mail/)』にも加入しています。
会社法や民法についての疑問点を質問でき、顧問弁護士を置くことができない中小企業の法務問題についても相談できるため、お客様により幅広いサポートを提供できています。

独立開業で最も心配なのは、判断ミスによる損害賠償リスクです。
こうした専門的な相談サービスを活用することで、そのリスクを軽減し、お客様により良いサービスを提供できると考えています。

さいごに

開業してもうすぐ1年半。
この執筆を機に振り返ってみると、本当にたくさんの先輩税理士さんからアドバイスをいただいていたことを改めて実感しました。

事務所選びから税務ソフトの選定、ホームページ制作まで、一人では決して乗り越えられなかった多くの場面で、温かい手を差し伸べていただきました。
この恩返しとして、今度は私が独立開業を目指している方々の相談に乗れる存在でありたいと思います。

開業して一番良かったことは、「お客様のためにやりたい」と思ったことをすぐに実行に移せることです。
組織にいた頃は難しかった会社独自のマニュアル作成や、グラフを使った分かりやすい説明も、今では自由に提供できます。

そのためにも、常に最新の情報をキャッチすることを心がけています。
懇親会に参加して他の税理士さんと情報交換をしたり、勉強会で新しい知識を学んだり。
そうして得た学びを、一日でも早くお客様に還元していきたいと思っています。

「会計がやさしく見えてくる」

このキャッチコピーに込めた想いを胸に、これからもお客様に寄り添える税理士でありたいと思います。

【執筆者プロフィール】
髙嶋のぞみ(たかしま・のぞみ)


税理士
「会計がやさしく見えてくる」を理念とする髙嶋のぞみ税理士事務所代表。北海道出身。札幌の幼稚園で11年間幼稚園教諭として勤務後、2024年4月に八王子市で独立開業。「わからない」気持ちがわかる税理士として、オーダーメイド会計マニュアルによる経理効率化コンサルや、グラフを活用した財務コンサル、相続税・贈与税申告など、誰にでも理解しやすい会計・税務サービスをクライアントに提供。元幼稚園教諭の温かい人柄で、経営者と経理担当者の両方に寄り添うサポートを心がけている。

ホームページ:https://nontax.jp/

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