【会計士試験】指定校推薦で勉強法に悩む受験生へ ~第1回:指定校推薦は陸上トラック競技、会計士試験はマラソン!?


平林黎(TAC公認会計士講座講師)

【編集部より】
近年増えている指定校推薦での大学進学。大学受験の経験がないため、会計士試験での勉強法に悩む受験生も多いようです。本連載では、受験生の悩みに日々接する平林先生にアドバイスをいただきました。

第1回 指定校推薦は陸上トラック競技、会計士試験はマラソン!?
第2回 ”漆塗りのお椀”を作るには?受験勉強のコツ
第3回 本試験当日もコツさえ押さえれば大丈夫!

はじめに

公認会計士の先輩方から「学習相談担当講師って?」「昔のTACにはなかった仕組みだよね?」とご質問いただいた際に、試験範囲が急激に拡大していること、「会計士試験が初めての本格的な受験」という受験生が多いことをお伝えして驚かれることがよくあります。
学習の進め方に関する相談ニーズが増えています。

私の場合は…

高校では好きな科目や部活等にばかり取り組み、大学受験は主に現代文・英語の2科目でした。

会計士試験勉強を始めてからは、受験経験が少なく勉強量にもムラがあった結果、体調を崩して学習が頓挫しました。

その時の経験を元に、現在は受講生向けセミナーやサポート体制を整えるフォローチーム主任として働いています。

※失敗談と環境を整えて再チャレンジした際の話は、こちらの記事で書きました
秋からの会計士受験スタートダッシュガイド🍂 | 会計人コースWeb

大学受験の経験がない方のうち…

難関中学・高校受験を経験している方は、受験の要領が掴めているため、会計士試験も比較的スムーズに進むようです。

また、内部進学の場合、会計士に在学中合格している友人からノウハウを入手しやすいようです。

一番苦労されているのは、外部から指定校推薦で入学された方(受験ではなく、高校時代の成績と面接等で志望校へ進学した方)と感じます。
私のケースとは異なり、「勉強量は確保しているのに、なかなか成果が出ない」というご相談を多くいただきます。

指定校推薦の方は、一般論ではありますが、高校1年生から継続して取り組む力があり、勉強習慣が定着しています。
苦手な科目を作らず、定期テストできちんと高得点を取ってきたという実績や、周囲から信頼される誠実さなど、公認会計士としての適性は十分にあると考えられます。

ただし、「受験」の経験が少ないことにより、学習開始から1年を過ぎた頃、壁にぶつかりがちです。

指定校推薦は、陸上トラック競技

指定校推薦に向けた勉強をスポーツに例えると、陸上トラックで100m走や400m走等に繰り返し取り組むイメージです。

1.5~2ヶ月分の講義内容を定期テストに向けて仕上げ、「同じクラス・学年の他の学生に比べて、より高得点を取る」。100点を目指す学習スタイルです。
隠せるマーカー・下敷きなどを使って、語句や年号などを教科書のすみずみまで暗記していた方もいらっしゃるはずです。

クラスのみんなで短期的な全力疾走に取り組むことと、テストの日付が動かせないという特徴があります。

会計士試験は、マラソン

他方、会計士試験も講義時のミニテスト・2ヶ月おきの実力テストなど短期目標は高校時代と同様ですが、常にゴールテープが見える陸上トラック競技とは異なり、マラソンによく例えられます。

特に、通信で取り組むと、どうしても困難さが増します。

相違点① 範囲の広さ

およそ1年から1年半ほどにわたる講義受講・復習を積み重ねた後、答案練習など実践形式の演習を積み重ねます。
そして、膨大な範囲について、短答式試験ではたった1日、論文式では3日間に全6科目のピークを合わせることになります。
体調・メンタル面の管理も、結果に大きく関わってきます。

相違点② 高得点ではなく、合格点を取る

公認会計士試験は、「他の人よりも高得点を」「もっと細かく」という競争試験ではありません。

長期間にわたり、公認会計士として働くための基礎研修を受けているイメージです。
現場に行っても問題ない水準まで達した受験生から、順次実務の世界へ入っていきます。

なお、令和6年5月には短答ボーダーが78%まで上昇しましたが、計算科目を中心に、基礎的な問題が増えたことが主な原因です。些末な知識で他の受験生を「出し抜く」のではなく、「専門家としての常識・思考プロセスが使える」ことを示せば、短答論文ともに合格できます。

相違点③ 通信の場合、定期テストの日付をずらせてしまう

高校では、否応なしに期末テストがやってきます。会計士試験は、通信学習で進めていると「まだ準備ができていないから」「とりあえず講義を進めよう」とテストを受けず、せっかくのセーブポイント・短期/中期目標を失ってしまいがちです(私が通信で一度脱落した際も、ミニテストや実力テストを全く使っていませんでした・・・)。

定期テストで自分の立ち位置や苦手論点を把握できないと、もはやマラソンではなく、沖に向かってゴールのない遠泳をしているような状況になります。
学習の方向性がずれた場合に、勉強量だけではなかなかリカバリーできないという怖さがあります。

予備校の存在価値は…

マラソンにおける給水所や、ゴールとの距離・自分の状態を計るスマートウォッチ、伴走者のような役目と考えています。
試験範囲が広がり続けている中、迷わずゴールに向かうためには軌道修正が必要です。
課題発見や目標設定が適切かフィードバックを受けることで、短期的なゴールが明確な陸上トラック競技の状態に半ば近づけて、合格へ直結する学習に全力で取り組むことができます。

よく伺うお悩み

指定校推薦の方からは、勉強の進め方に関して以下の悩みをよく伺います。

・復習スパンが長く、どんどん忘れてしまう。
・無理な計画を立てて、体調を崩した。
・問題演習で間違えることに、強い抵抗感がある。「理解」していれば全て解けるはず、と考えて講義を受け直してしまう。

皆さん「自分には向いていないんじゃないか」と思い詰めた表情で相談にいらっしゃいますが、ちょっとしたコツをお伝えすると、見違えるほど成績が伸びる方を沢山見てきました。
上位合格する方も多いです。
顔色がよくなり、学習量が成果に繋がり始めたと報告いただくのは講師として最も嬉しい瞬間です。

次回の記事では、お悩みに関連した受験勉強のコツをご紹介します。

【プロフィール】
平林 黎(ひらばやし れい)


TAC公認会計士講座講師(フォローチーム主任、学習相談/学習法セミナー/受講生向け公式LINE/財務会計論-理論質問対応)
1986年東京都多摩市生まれ。国際基督教大学教養学部国際関係学科卒業。体調を崩し、公認会計士試験を一度撤退。
2014年独学で保育士資格取得後、公認会計士を再度志す。
2016年論文式試験に合格し、現職。
2020年以降、オンラインでの相談対応・セミナーを開始。
下記SNSで主に受験生に向けた情報発信を行っている。

◆X(旧Twitter) https://twitter.com/hirabayashi_tac
◆Instagram https://www.instagram.com/hirabayashi_tac/
◆Youtube https://www.youtube.com/@tac1795/videos


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