あつまれ!「資格のかけ算」人 第4回 社労士×英語 永井知子


【編集部より】
資格は組み合わせでさらに輝く!『かけ合わせとつながりで稼ぐ資格のかけ算大全』(実務教育出版)が話題です。本連載では、資格の組み合わせで活躍する方々にご登場いただきます。

社会保険労務士×英語・外国人雇用で広がった活動範囲

私が保有している主な資格は、特定社会保険労務士とファイナンシャルプランナー(AFP)ですが、実務では社会保険労務士の業務がメインとなっています。

実は、私の社会保険労務士としての活動の幅を広げてくれたのは、社会保険労務士になる前の短期留学や外資系企業勤務の経験でした。

社会保険労務士×英語

社会保険労務士試験に合格したのは2004年なので、20年以上前になります。

合格当初は「社労士は国内限定の資格だから、英語は趣味として続けるしかないかな」と思っていました。
ところが求人を探してみたところ、外資系企業のクライアントの対応などで、英語のスキルを必要とする求人が意外に多いことに気づきました。

おかげさまで、外資系企業の人事部に常駐して日々外国人労働者と英語でやり取りの仕事を担当することができ、社労士合格前のスキルと経験を活かすことが出来ました。

また、20年前は外資系企業や外国人雇用分野で活動する社会保険労務士は少なかったため、社労士になって比較的間もない頃から外国人雇用関連のテーマでの執筆やセミナー講師のお仕事等を頂くことができました。

その他では、英文就業規則・英文雇用契約書の作成・見直しなどの仕事もしています。
単なる英訳ではなく、外資系企業で一般的によく使われる英語表現などを提案し、外国人に伝わりやすい書類作成を心掛けています。

2024年からは東京都内の雇用労働相談センターの相談員も担当しており、外資系企業の人事担当者や外国人労働者と電話やZoom相談の英語対応も行っています。
日本の労働法について正しい情報を教えてもらえる専門家が周りにいない外国人も多いため、事例を交えてわかりやすい説明をするように心掛けています。

かけ合わせのメリット

社会保険労務士の資格と英語や外資系企業の勤務経験のかけ合わせのメリットは、確実にありました。

会合などでお会いした士業の先生方に自己紹介をすると、業務内容に興味を持って頂けることが多かったですし、雑誌等で取材の依頼を受けたことも何度かありました。

そのせいか、社会保険労務士として、どの領域で頑張っていくかで悩んだ経験はあまりなかったです。とにかくひたすら、外国人雇用等の自分の興味がある分野を勉強し続けること、発信し続けることが自己のブランディングに繋がりました。
方向性で迷うことなくここまで来られたのは、大きなメリットだったと思っています。

かけ合わせのメリットのもう一つは、外国人技能実習制度に深く関われるようになったことです。

もうひとつのメリット 外国人技能実習制度との関わり

前述のように、外国人雇用に関する執筆やセミナー講師を継続的に担当させて頂く中で、外国人技能実習制度の事業に関与している複数の団体から声をかけて頂きました。

業務内容としては、企業や監理団体(外国人技能実習生の受入企業に対して支援や監査を行う団体)の訪問指導、企業や監理団体向けの講習会の講師、外国人技能実習生の受入れを検討している団体向けのコンサルなどです。
その他、外国人技能実習生向けに労働基準法をはじめとした日本の諸法令を説明する講習の講師や、監理団体の外部監査人などの業務も担当しています。

外国人技能実習制度は世間の報道から法令違反や人権侵害が多いと思われがちですが、実際は監理団体による定期監査や外国人技能実習機構による定期的な実地検査が入るため、ある程度の労務管理は出来ており、技能実習生達との関係が良好な企業も多いのです。

技能実習生向けの法定保護講習(日本の諸法令を説明する講習)の講師の仕事では、「技能実習制度の目的は何だかわかりますか?」と聞くと、技能実習生のうち数人が手をあげて「はい、お金を貯めるためです」という言葉がかえって来たりします(正解は、技能技術の本国への移転)。

世間で言われるように、外国人技能実習制度では、本来の目的と実態のギャップはあります。
実習生は、「技能技術の移転」が目的です。
「皆さん、日本で頑張って仕事や日本語を覚えて、帰国した後に本国で活躍してくださいね」などと、前向きに指導するよう心掛けています。

実習生達から質問を受けた時も、単に答えを教えるのではなく、制度や法律が求めることを実習生達にも考えてもらいながら、わかりやすい解説を心がけています。

かけ合わせのデメリット

ここまで書いたように、資格とのかけ合わせのメリットが大きいです。
デメリットについては考えてもあまり思いつきません。

周りの社会保険労務士でも、会社の人事部において長年経験してきた方々ばかりではなく、様々な経歴を持った方々が活躍しています。
その時その時自分なりに一生懸命にやってきたことが、思いがけない形で自分の付加価値に繋がることもあります。

社会保険労務士などの士業を目指す方に対しては、仮に実務経験がなかったとしても、自分だけの強みを作ることは可能なので、是非頑張ってほしいと思います。

これから目指すもの

社会保険労務士試験に合格してから20年以上になります。
20年前とは違って、外国人雇用を専門とする士業が増えたと思います。

外国人雇用のサポートと言っても、様々な分野の知識、例えば、ある程度の在留資格の知識は必須です。
あとは外国人労働者に比較的多い給与計算の事例(国外転出時の所得税や住民税、年末調整等の取扱い等)に詳しいと、企業に適切なアドバイスができます。
その他、外資系企業では英語版の雇用契約書や就業規則を用意していることも多いですし、英語での労務相談などの仕事もありますから、英語のスキルがあるとやはり便利です。

あとは、外国人技能実習制度では現場事情の知識は企業や監理団体にはかないませんから、労働基準法の改正などの社労士本来の専門分野の知識を極めて情報提供する方が喜ばれることもあります。

このように頑張る方向、勉強する分野はたくさんありますから、いくら時間があっても足りないです(笑)。

社会保険労務士の先生は、社労士会の研修の受講等で日々自己研鑽を続けています。

私自身も質の高いアウトプットができるよう、労務関係の勉強は勿論、オンラインの英会話教室の受講も続け、外国人雇用の現場事情の知識や経験もより深めるようにして、今後も頑張りたいと思います。

<プロフィール>
永井知子(ながい・ともこ)

コスモポリタン インターナショナル HRソリューションズ代表
特定社会保険労務士

青山学院大学大学院 法学研究科 ビジネス法務専攻 人事労務コース 修士課程修了(ビジネスロー)
イギリスで語学留学後、外資系企業の人事部やアウトソーシング会社にて10年以上勤務。
主に給与計算・社会保険事務・就業規則見直し・労務相談等の業務を担当。
海外赴任に伴う給与計算・社会保険事務、外国人の労務管理について専門誌で多数執筆。
現在は、一般企業や団体の労務監査、外国人技能実習制度適正化事業の労務監査も行っている。


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