【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。
静岡県浜松市で開業して21年!
はじめまして。
静岡県浜松市にあるみらいくグループの代表を務めます、大石惠一と申します。
みらいくは、「みらいを育成する、みらいを育む、みらいへ行く」というところから由来します。
現在、みらいくグループは「人事・労務・法務」のプロである社会保険労務士法人、司法書士部門、人事コンサルティング会社から構成されています。
おかげさまで、2024年で創業21年目を迎えることができました。
ここでは、私のあまり順風満帆ではなかった開業当初のことを書かせていただきます。
これから開業する方の励みになれば幸いです。
社労士を目指した原点
まず、私が社労士資格を取得を目指したきっかけからお話します。
新卒で入社した会社で、親しかった同期がパワハラによって自ら命を絶ったあの日。
深い悲しみと同時に、二度とこのような悲劇を繰り返してはならない、働く人が仕事を通して幸せを感じられる社会を創りたい、という強い思いが芽生えました。
それが、私が社労士を目指した原点です。
独立開業も、工場の夜間勤務で食いつなぐ
社労士の資格を取得後、実務経験ゼロだったため実務を学ぼうと、社労士事務所、会計事務所、一般企業、資格予備校……思い当たる場所に履歴書を送りました。
しかし、全て不採用。
そんな中、知人の紹介で「独立してくれたら契約する」という社長との出会いがありました。
藁にもすがる思いで在職中の会社を退職し(当時は副業という概念が無かったのです)、開業に踏み切りました。
しかし、登録手続きの途中で一方的に破談に。
途方に暮れる中、目先の生活費を稼ぐため、地元の工場で夜間勤務をすることになりました。
(これがのちに、製造業者さんとお取引するようになって、経験が活かされることになるのですが、それがわかるのはずっとあとの話です。)
営業では失敗続きで後悔の日々
今思えば、何ともなりゆき任せの独立開業でした。
営業経験ゼロだったので、何から手をつければいいのか皆目見当もつきません。
インターネットで「新規設立の会社に助成金で営業」という記事を見かけ、法務局で新設会社の情報を収集し、「いざ飛び込み営業!」と意気込んだもののの、直接その新設会社のところまで伺うと怖くなり、結局ポストにDMを入れて帰る始末……。
次に試みたのはFAXDMです。
商工会議所のデータをもとに、テスト的に5件送信したところ、ものすごい剣幕のクレーム電話が来て嫌になってしまい止めてしまいました。
また、地元の知人が商工会青年部に入部していて、その方に誘われて商工会青年部に入会。
地域貢献や人脈形成に期待しましたが、引っ込み思案、人見知りの性格が矯正できず、2ヶ月で幽霊部員になりました。
異業種交流会にも誘われたら参加しましたが、名刺交換しても会話が続かず、自分から声を掛ける勇気も出ずこっそり途中退出する始末です。
この頃は、「自分の性格やタイプからして、独立は合わない。どうして独立してしまったんだろう……」と自分を責める日々でした。
元々勉強していたコーチングからご縁が拡がる
そんな悶々とする日々の中、当時、日本に導入され始めたコーチングに光を見出しました。
もともと教育業界出身で、人の可能性を広げることに関心がありました。
開業前からコーチングの勉強とトレーニングを積んでいました。
これが功を奏し、企業研修や大学などの教育機関でコーチングの研修をさせていただく機会に恵まれたのです。
このコーチングの研修がきっかけで、社労士としての契約をいただいたり、顧問先から社外取締役を委嘱いただくなど、思わぬ展開になりました。
おわりに
営業力に自信がないぶん、ご縁のあった方や顧問先様一件一件それぞれの業界や業種について徹底的に研究し、顧問先への理解を深め、自分の専門性を活かしてどのように貢献できるかを常に考えました。
その結果、非常に時間はかかりましたが、少しずつご紹介先からもご紹介頂いたりと、ご紹介の輪が広がっていきました。
なりゆきで独立開業したあとは、決して平坦な道のりではありませんでした。
もちろん、今も常に何らかの困難と奮闘中です。
とはいえ、多くの方との出会いによって、ここまで歩んでくることができたことを、ありがたく思っています。
これからも、ご縁をいただいた方々への感謝を忘れず、一社一社の課題に寄り添い、共に成長できるよう、精一杯努力していきたいと思っております。
【プロフィール】
大石恵一(おおいし・けいいち)
みらいく社会保険労務士法人 代表社員
幼少期から人の生き方や心に興味を持ち、大学では哲学を専攻。卒業後は教育産業に従事しながらコーチングや心理学、NLP、組織開発などを学び続ける。
現在は、労務リスクの軽減や働きがいのある労働環境の構築に取り組む。ITやクラウドサービスを活用したバックオフィス業務の支援、全国対応型のサービスを提供。
リットリンク https://lit.link/miraiku
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