わたしの独立開業日誌 #社労士・風祭舞子


【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。

義理の母の事務所でのパート社労士からスタート。
現在法人化の準備中!

東京都日野市で社会保険労務士事務所を開業している風祭舞子と申します。

2018年に社労士試験に合格し、当時1歳と3歳だった二児を育てながら、パート勤務から社労士としてのキャリアをスタートさせました。2023年2月には勤務と並行して副業として独立。現在は勤務先の事務所を承継するとともに社会保険労務士法人を設立すべく準備を進めています。

まだまだ未熟な私ですが、社労士を志したきっかけ、試験について、そして社労士としての歩みと展望について綴ることで、なにか参考にしていただけることがあればと筆を執っています。

プロフィール写真

専業主婦だった20代後半

私の地元は和歌山県で、大学進学を機に東京に出てきました。

就職後、夫の転勤で長野県に移り、約5年間専業主婦をしていました。
子どもが生まれたことで忙しい日々を送っていたものの、公認会計士としてキャリアを築く夫の姿が時に眩しく感じ、次第に自分も専門性を持った仕事がしたいと思うようになりました。

なぜ社会保険労務士になったか

なにか資格を取ろうと思い立った私がまず目指したのは税理士でした。
新卒で働いていた生命保険会社の業務で相続について学ぶ機会があり、相続税法に興味があったからです。

しかし、勉強を始めて数ヵ月でその難しさに直面しました。

税法の勉強では数時間集中して問題に取り組まなくてはならないこともあるものの、専業主婦として24時間子育てに追われる中ではまとまった勉強時間の捻出ができなかったのです。

そんなとき、かつてお世話になった上司が社会保険労務士の資格を持っていたことを思い出しました。

年金制度などについてわかりやすく教えてくれたことが印象深く、その当時は社労士がどんな仕事なのかもよく知らなかったのですが、まずは試験に挑戦してみることにしました。

覚悟を持って臨んだ社労士試験

勉強を始めたのは、第二子の出産から間もない時期でした。
学び始めると面白くて、試験までの10ヵ月間はあっという間でした。

新生児と2歳児を育てる生活だったので、相変わらず勉強時間は限られていましたが、税理士試験とは違い記述問題がなく、法律の理解と暗記を問うマークシート形式だったので、スキマ時間を活用した細切れの勉強でも太刀打ちできる感触がありました。

万全の準備で臨んだ試験の結果は「合格」。

試験に受かったことで社労士としての道が開けたことはもちろん、このときに身につけた時間の捻出力やタスクの切り替え術は、現在開業社労士として仕事をする中でとても役立っています。

社労士事務所勤務での学び

合格後、実務経験のなかった私は、将来の開業を視野に入れつつ、まずは勤務社労士として経験を積むことに決めました。

義理の母が社労士で、近所の社労士事務所に勤務していたのですが、最初は一緒に働くことなど考えておらず……

しかし、相談する中で、事務所が自宅から近いことや、所長が義母の友人で信頼できる方であることから、子育てをしながら働くには理想的な環境だと感じ、その事務所でお世話になることに決めました。結果的に、2人の先輩社労士からお客様対応や仕事の進め方を間近で学ぶことができ、短期間で大きく成長できたと思っています。

ここまで恵まれた環境は珍しいかもしれませんが、開業前に勤務経験を積む際は、任せてもらえる裁量の大きさや、所長や先輩との距離感の近さを重視して就職活動を行うと、自身の成長に繋がる職場に出会えるのではないでしょうか。

なぜ開業したか

アットホームな事務所で伸び伸びと仕事をさせてもらう一方、入所当初から「もっと効率的に業務を進められないか」「お客様の手間を減らすために、より良い提案ができないか」といった疑問がありました。時代の変化に対応し、業務の仕組みを変革しなければ、今後10年、20年と事務所を続けていくのは難しいと感じるようになりました。

とはいえ、勤務社労士として担当しているお客様のことを放り出すわけにはいかないので、勤務を続けながら私の理想の事務所を作るべく開業をするという選択に至りました。

開業後の変化

開業したことで、人との出会いが広がりました。

事務所の代表として名刺交換するようになり、お問い合わせや紹介を受ける機会が格段に増えました。

社労士の知名度を上げたいという思いもあり、SNSでは実名で情報発信をしています。
直接仕事に繋がることは少ないですが、SNSを見てくださっていたご近所の税理士さんの紹介で地域の青年会議所(JC)のセミナーに登壇。その後、ご縁があり会員になりました。

JCには様々な評判がありますが、個人的には多くの学びが得られる場所だと思い、楽しんで参加しています。人脈が広がることはもちろん、地域貢献活動を通じて、事務所経営における意思決定力が高まったことも大きなメリットだと感じています。

開業を目指す方はそういった団体・コミュニティに所属してみるのも良いと思います。

JCセミナー登壇時

独立開業していて不安なこと

一番不安なことは、私が働けない状況になることです。
お客様に迷惑をかけてしまうだけでなく、スタッフの働く場を奪ってしまうことになると思い、常に心配がつきまとっています。

そうならないために、もっと盤石な組織化を進めたいというのが今の私にとって一番の課題です。

自分自身が経営者として事務所を良い組織にすることができれば、お客様への提案力も確実に上がると思うので、苦心している最中です。

今後やっていきたいこと

セミナー講師のご依頼をいただくことが増えており、わかりやすいと好評をいただいているので、今後も話す仕事は増やしていきたいと考えています。

就業規則の作成も好きな仕事の1つで、開業当初から専門のソフトを導入して効率的かつ質の高いサービスを提供しています。

また、給与計算は事務所の強みであると考えており、クラウド勤怠の導入支援や税理士との連携を通じて、お客様の手間を減らす工夫をしています。

ニーズがあること、真にお客様のためになることであれば何でもやりたいと思っているので、事務所の組織化を進めながら、日々挑戦していきたいです。

おわりに

士業は、他業種と比べると開業のハードルが比較的低いと感じています。開業後数年を乗り切れるだけの資金と行動力さえあれば、事業を軌道に乗せることができるのではないでしょうか。

ただ、開業すると自由がある分、高い自己管理能力と責任感が求められます。

確固たる理念・信念といったものがなければ、苦しくなってしまうこともあるかもしれません。

それでも開業に夢があることは間違いないですし、開業に限らずとも、せっかく資格を取得したのであれば自分の適性に合った働き方を見つけて前進してほしいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

<プロフィール>
風祭 舞子(かざまつり まいこ)

特定社会保険労務士
ルピナス社労士事務所 代表
早稲田大学卒業後、大手生命保険会社にて、 保険を含め様々な金融商品を取り扱うコンサルティング営業に従事する。
夫の転勤を機に退職、2人の子どもの出産を経て、社会保険労務士試験に合格。
社労士事務所で実務経験を積み、勤務と並行して2023 年にルピナス社労士事務所を開業。
実家が自営業で幼いころから経営者の苦労を身近に感じてきたことから、会社を支える就業規則の提案、労務トラブルの予防・解決に力を入れている。

事務所ホームページ:https://lupinus-office.com/
X:https://x.com/sr_Kazamatsuri

◆他の「独立開業日誌」はコチラから!


関連記事

ページ上部へ戻る