【USCPA合格体験記】税理士がチャレンジした米国公認会計士試験


林 正和(税理士・USCPA(ワシントン州))

【編集部より】
USCPA(米国公認会計士)試験の受験を検討する人にはさまざまなバックグラウンドがあるそうです。そのため、受験をスタートする時点での経験、受験勉強を続ける環境も人それぞれ。たとえば、簿記・会計の前提知識の有無によっても、試験対策の方法や戦略が変わるでしょう。
そこで、本企画では、異なるバックグラウンドのUSCPA合格者に、受験エピソードを教えて頂きました。これから受験を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
なお、USCPA試験は2024年から新試験制度に移行しました。合格体験記の中には旧制度での合格者もいますのでご留意ください。

税理士試験合格からUSCPA試験の受験を開始するまで

私は2018年に税理士試験に合格し、2023年にUSCPA試験に合格しました。税理士がチャレンジしたUSCPA試験はどのようなものだったか、振り返ってみたいと思います。

大学を卒業後、一般企業に勤めました。その後税理士事務所に転職し、税理士試験の受験を開始しました。受験当初は1年に1科目を合格し、5年程度で5科目合格しようと考えていたのですが、結局11年ほどかかりました。

税理士試験は途中で合格をあきらめてしまう人が非常に多い試験です。11年かかっても合格できたので努力が無駄にならず良かったです。合格した科目は次のとおりです。

・簿記論
・財務諸表論
・法人税法
・所得税法
・相続税法

税理士試験に合格後、税理士として独立しました。その後、3年ほど経過したときにUSCPA試験の受験を開始しました。ちなみに講座は、合格者数の実績からアビタスを選びました。

USCPAの試験制度の変更について

USCPAは2024年から試験制度が変わりました。私は2023年12月に合格したため、旧試験制度での合格です。

旧試験制度では記述問題がありましたが、新試験制度では廃止されました。英語での記述を苦手とする方は多いので、この点は有利な変更になっています。

もし私が新試験制度を受験するなら、選択科目はTCP(Tax Compliance and Planning:税法遵守及び税務計画)を選択してアメリカの税法をより深く学んでいたと思います。

旧試験制度と新試験制度

旧試験制度では次の科目に合格する必要がありました。

・FAR(Financial Accounting and Reporting:財務会計)
・BEC(Business Environment and Concepts:ビジネス環境及び諸概念)
・AUD(Auditing and Attestation:監査及び証明業務)
・REG(Regulation:税法及び商法)

新試験制度では、上記のBECがなくなり、その代わりに次の3科目から1科目を選択する方式に変わりました。

・BAR(Business Analysis and Reporting:ビジネス分析及び報告)
・ISC(Information System and Controls:情報システム及び統制)
・TCP(Tax Compliance and Planning:税法遵守及び税務計画)

USCPA試験の合格にかかった期間

2022年5月にUSCPA試験の受験を開始し、2023年12月に合格しました。
各科目にかかった時間は次のとおりです。

18ヵ月は、おおよそ平均的な受験期間だと思います。

・FARはボリュームが多いため、6ヵ月かかりました。
・AUDは2回不合格になり3回目で合格したため、こちらも6ヵ月かかっています。
・REGは、税理士であったため、日本の税法とアメリカの税法で共通点があり考え方を理解しやすく、比較的短期間で合格できたと思います。

USCPA試験合格までに何時間勉強すればいいか

USCPA試験や税理士試験などの難関試験にチャレンジするときに、私が持っている「勉強時間」に対する心構えがあります。

それは「1日何時間勉強する」ではなく「空いている時間はすべて勉強に充てる」ということです。

空いている時間というのは、例えば1日24時間あるなかで、次の時間を除いた残りの時間です。

・働いている時間
・寝ている時間
・食事の時間
・その他生活に必要不可欠な時間

このような心構えがあったものの、私も受験当時、空いている時間をすべて勉強に充てていたわけではありません。空いている時間をすべて勉強に充てるという心構えはとても大切ですが、実際にそれを長期間行うのは不可能に近いでしょう。たまには息抜きも必要です。
ただし、例えばテレビを1時間見たら、その分合格の可能性が下がるという意識は常に持っていました。

USCPA試験は75点以上で合格です。AUDの2回目の受験のときは74点で不合格でした。
もしかしたら、あのときにテレビを1時間見ないで勉強していれば、2回目で合格していたかもしれません。繰り返しになりますが、難関試験の合格には、空いている時間はすべて勉強に充てるという心構えが大切です。

どのくらいの英語力が必要か

USCPA試験のサイトで、英語が苦手でも合格可能という記事を見たことがあります。これは間違ってはいないでしょう。しかし、英語力があったほうが途中で挫折する可能性が低くなるとは思います。英語が苦手でUSCPA試験にチャレンジしたい人は、英語での学習を無理なく継続できるか事前に慎重に検討することをおすすめします。

私がUSCPA試験の受験を開始したときの英語力はTOEIC 930でした。2006年~2007年にオーストラリアで会計学を2年間学んでいたことがあります。オーストラリアから日本に帰国した後にTOEICを受験したところ上記のスコアでした。

この英語力でUSCPA試験の学習中に問題文の読解に苦労するということはありませんでしたが、知らない英単語はよく出てきました。知らない単語がでてきても、推測で文章の意味がわかることが多かったです。ただし、重要な英単語がテキストの巻末にまとめてあったので、それを最低限覚えるようにしました。

税理士試験を合格していたことによるメリット

USCPA試験と税理士試験は共通する論点があります。

相互に共通する論点がある科目

USCPA試験税理士試験
FAR簿記論、財務諸表論
REG法人税法、所得税法、相続税法

FARは財務会計の科目のため、「簿記論」「財務諸表論」と共通する論点があります。FARはボリュームが大きい科目ですが、簿記をある程度わかっている方は、取り組みやすい科目です。

REGは税法と商法の科目のため、「法人税法」「所得税法」「相続税法」と共通する論点があります。日本の税法とアメリカの税法の共通点や相違点を念頭において学習を進めることにより、効率よく学習を進めることができました。

このように、税理士試験合格者はある程度スムーズにUSCPA試験の学習を進められると思います。 USCPA試験合格後に、日本とアメリカの税法の違いを、いくつか自身のサイトにまとめました(「日本とアメリカの税法の比較」)。

上述のFAR、REGに対して、AUDは税理士試験にはない科目です。そのため、USCPA試験で一番苦労しました。FAR、BEC、REGはそれぞれ1回目の受験で合格しましたが、AUDは3回目の受験で合格しました。

勉強方法

私はアビタスの通信で学習をしていました。学習は次のことを毎日繰り返していました。

解説動画を視聴する
テキストを見ながら、解説動画を視聴します。このとき、再生速度を早くして、時間の短縮をしていました。

問題集を解く
問題集を解きます。問題集は5回~8回繰り返していました。このくらいやると問題と解答が記憶に残ります。
アビタスの場合、本を開いて左ページに問題が英語で記載されていて、右ページに解説が日本語で記載されています。かつ、追加で解説動画があります。
当初は解説動画も見ていたのですが、途中から問題集の解説で理解できたものは解説動画を見るのをやめました。解説動画まで見ると、かなり時間がかかります。ただし、AUDは2回不合格となったため、解説動画もすべて視聴しました。

アビタスの模擬試験
問題集をある程度繰り返した後に、アビタスの模擬試験を受けました。模擬試験も解き直して記憶に定着させる必要があるため、本試験の2週間~1ヵ月前に受けていました。

USCPA試験の過去問題を解く
USCPA試験の過去問題は一部公開されています。これも時間が許す限り繰り返します。過去3年~5年程度を繰り返し解いていました。

USCPAと税理士のダブルライセンス

USCPAと税理士のダブルライセンスに興味がある場合は、自身のサイトに「税理士試験とUSCPA試験の比較とダブルライセンスについて」の記事があります。参考にして頂けると幸いです。

最後に

USCPAを目指す方は、英語が得意な方や好きな方、または国際的な仕事がしたい方が多いのではないでしょうか。USCPAを取得すれば英語での会計を理解している証明となり、国際的な仕事に従事できる可能性が高まります。

働きながら受験する場合、昼は仕事、夜は勉強と大変忙しい日々が続きます。しかし、その先に今よりも充実した毎日が待っていることを楽しみに合格を目指しましょう。

<執筆者紹介>

林 正和(はやし まさかず)

・税理士、USCPA(ワシントン州)
・日本の大学を卒業後、オーストラリアへ留学し会計学を2年間学ぶ
・税理士、USCPAの立場から情報を発信している
・一般社団法人parkrun Japan 監事
・ホームページ:https://www.hayashi-taxacct.com/


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