ZENTA
【編集部より】
働きながら合格を目指す税理士受験生の場合、受験時代に転職を考えたり、実際に職場を変えたりする人もいます。仕事と受験勉強のバランスをとるためにはどういった視点で職場選びをするとよいでしょうか。
そこで、今回は、働きながら官報合格した方々に、経験を踏まえてアドバイスをいただきました。就職・転職活動を考えている人はぜひ参考にしてください!
早期合格のためには職場選びが重要
私は、会計2科目合格後、(少し間は空くのですが)税理士になる、と決めて地方の税理士法人に転職しました。そこでの勤務中に税法3科目に合格し、現在は都内の大手税理士法人(いわゆるBig4)に転職して現在に至ります。
地方(いわゆる中小)の税理士法人と大手税理士法人の両方を経験している立場から、「税理士受験生の転職・職場選び」というテーマについてお話させていただきます。
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社会人受験生は、学生や専念の受験生と比べて自由時間が少ないため、勉強時間の確保は難しいです。これはつまり、試験合格を見据えてしっかり職場を選ばないと、税理士試験合格の道が非常に遠のいてしまうということです。
これはあくまで私の経験に基づく主観的意見ですが、「早期に合格するための職場選び」を検討するにあたって必要な要素は以下の3つと考えています。
- 会計事務所に勤めること
- 所長又は所属部長が官報合格者であること
- 働きすぎないこと
会計事務所に勤めること
まず職種ですが、やはり会計事務所勤務が良いと思います。理由は2つあり、1つは試験に直結する知識が実務で身に付くこと、また会計事務所での勤務期間は税理士登録のための実務経験にカウントできることです。
会計科目は実務寄りの内容があまり出ないので、会計事務所勤務でなくても合格は可能と思います。ただし、税法となると話は別です。特に理論暗記に関しては、実務と結びつけながら覚えないとイメージができないので、理論のべた書きであればまだしも、事例問題などに対応するのは非常に難しいと感じます。私は事業会社の経験がありませんが、事業会社出身の知人の話を聞く限りでは、会計事務所に勤めるのが最短距離ではないかと思います。
また、どのくらいの規模の会計事務所に勤めるのがいいのか、という問題もあります。これについては、自分が試験休暇などで抜けざるをえないときに他の人にカバーしてもらえるという意味では、やはり規模の大きい事務所のほうがよいと思います。
Big4などは基本複数名のプロジェクトベースで動いており、あらかじめ休暇を取りたい期間を上司に伝えておけばそれを考慮してアサインしてくれるので、クライアントに迷惑をかけるようなことはありません(Big4はその分、日常業務がかなり忙しいですが…)。
あと、大きい会計事務所のほうが、扱う論点も多岐にわたるので、勉強した内容と実務がリンクする機会が多いです。私の経験でいうと、法人税法で「留保金課税」という論点がありますが、地方税理士法人時代はほとんど扱うことがありませんでした。しかし、大手法人では普通に出てきますので、「受験生時代にこの論点に出会っていれば、実務と結びつけて覚えることができたのになぁ」と思ったことがあります。
所長又は所属部長が官報合格者であること
個人的には3つの中でもこの要件が一番重要だと考えています。言われてみれば当たり前ですが、受験生の苦しみは受験生でないとわかりません。私の場合、直属の上司が資格を持っていない(勉強もしたことない)方だったので、やはり試験関連の話はコミュニケーションしづらいと感じたことがよくありました。所長は公認会計士でしたが、社会人受験生の経験はなかったので、我々がいかに時間がないか、というのはイメージしづらかったかもしれません。
自分の上司や所長が社会人受験生を経験していれば、その大変さを身をもって知っているので、頑張っている人を見るとやはり応援したくなると思いますし、痒い所に手が届くアドバイスもしてもらえるはずです。現に今の職場は、同僚も上司もほぼ全員税理士試験合格者ですのでコミュニケーションも取りやすいですし、試験休暇申請や受験相談などもしやすい環境にあります(私もたまに相談を受けます)。
要は自分のことを相談できる管理職の方に、社会人受験生目線での話ができる方がいるか(同じ経験をしている方がいるか)が大事ということです。
やはり会計事務所のトップである所長が官報合格者であることは個人的にはマストだと思います。これはHPなどで容易に確認可能ですね。
働きすぎないこと
税理士試験突破を見据えて転職したのに、大量の仕事を振られてしまって勉強する時間が取れないようでは意味がありません。第一印象で「働かないヤツ」と思われてしまうと後がやりにくいので、最初のうちは頑張って働くのもいいかもしれませんが、そのペースをずっと続けるのはおすすめしません。
この業界は、頑張って働けば働くほど仕事が回ってきますので、割り切りと断る勇気が大事です。試験勉強が終われば時間ができるので、好きなだけ働けます。今は修行の時と割り切って、無理しないようにしましょう。
これは、入所前にあらかじめ「試験勉強中であり、勤務時間中はしっかり働くが、一方でできるだけ勉強時間も確保したい」旨を伝えておけばいいと思います。上記の要素を満たす職場であれば、きちんと配慮してくれるはずです。
今年度の試験も終わり、自己採点結果や講師等との相談を経て、次年度に向けての動き方が決まってきている頃かと思います。このあたりで一度立ち止まり、「税理士試験合格という観点から見て、現在の職場はどうなのか」という目線で少し考えてみるのもいいかもしれませんね。
【執筆者紹介】
ZENTA
税理士・大手税理士法人勤務
税理士試験簿記論(2011年)、財務諸表論(2013年)に合格後は、海外赴任などで試験から遠ざかっていたが、2019年1月に勉強を再開。その後、国税徴収法(2019年)、消費税法(2020年)、法人税法(2021年)の税法科目に一発合格。2022年税理士登録。
官報合格後、地方税理士法人から都内の大手税理士法人へ転職し、現在に至る。
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