🌻夏休みに読みたい! 兎耳山ルカさんがオススメする課題図書📚


【編集部より】
受験生にとっての夏休みが到来しました!  「スキルアップがしたい!」、「キャリアやプライベートで新しい発見がしたい!」と考えている人も多いのではないでしょうか。そこで、本企画では、実務家などの読書愛好家から、会計人コースWeb読者の皆さんにオススメする「夏休みの課題図書」をご紹介いただきました(1日お一人の記事を順不同で掲載します・不定期)。
受験勉強はもちろん、仕事や人生において新しい気づきを与えてくれる書籍がたくさんラインナップされています。ぜひこの機会にお手にとってみてください!
今回の記事では、兎耳山ルカさん(公認会計士)に課題図書をお薦めいただきました!

8月の受験を終えられたみなさん、お疲れ様でした。また、来年以降の受験を控えているみなさん、暑さの厳しい中ですが、勉強頑張ってください。
今回は、夏休みの課題図書として、試験明けや勉強の合間に読むのに適した本を厳選して紹介します。
これらは資格取得や業務に直接役立つ書籍ではありませんが、私の職業人としての人格形成に多大な影響を与えた本です。
みなさんの新たな本との出会いの一助となれば幸いです。

オススメ書籍①『闘う公認会計士』(千代田邦夫、中央経済社)

著者の千代田邦夫先生は、公認会計士・会計学者であり、公認会計士・監査審査会会長を務められました。

私が大学院生のときに、千代田先生の講演を拝聴する機会に恵まれました。千代田先生は当時すでに正規の教授職を定年退任されていましたが、胸になおマグマのように熱い情熱を湛えており、公認会計士という職業の使命について、最前に座る私の顔に息がかかるほど力強くお話される様子に、ただただ圧倒されました。このとき受けた感銘は、私の会計プロフェッショナリズムの原点となっています。

本書はそんな闘魂会計士である千代田先生が米国公認会計士150年の歴史を「闘い」を軸に記したものです。監査対象から報酬を得るという公認会計士の保障業務の構造は、利益相反の虞を孕んでおり、自律と他律の絶妙なバランスによって成立しています。自ずから公認会計士は生まれながら闘い続けることを宿命付けられているプロフェッショナルといえます。先人たちがどのように闘ってきたのか、私たちはどう闘うべきか、考えさせられます。

みなさん、闘う用意はできていますでしょうか。若き会計士たちにぜひ読んでいただきたい1冊です。

オススメ書籍②『簿記の考え方・学び方』(中村 忠、税務経理協会)

『簿記の考え方・学び方』

著者の中村忠先生は、会計学者・簿記教育者であり本書は40年にわたる簿記教育の経験をもとに、学習者に簿記の考え方の手ほどきを与えるものです。

私がこの本に出会ったのは、会計大学院で学んでいた簿記の先生から紹介されたことがきっかけでした。会計士受験生としては簿記にそれほど熱心ではなかった私ですが、中村先生のエッセイ調の軽快な語り口で綴られた「簿記の考え方」に触れ、簿記がとても生き生きとしたものに感じられました。

本来は簿記初学者でも読める内容ですが、やや古い書であるため現行の会計基準や簿記試験の範囲とは異なります。そのため、簿記の基礎を一通り学習した後に読むのが良いでしょう。会計士受験生レベルの簿記上級者が読んでも、現在に通底する簿記の本質について気付きがあるはずです。

中村先生は他にも多くの会計エッセイを執筆されていて、『会計学こぼれ話』、『会計学放浪記』、『会計学つれづれ草』(いずれも白桃書房)などがあります。本書の雰囲気が気に入った方は、これらもぜひお読みください。

*編集部注:オススメ②の書籍は、現在出版社のサイトでは品切れとなっていますので、中古を入手されるか、図書館等でご覧いただければ幸いです。

オススメ書籍③『[私本]会計・監査業務戦後史』(川北博、日本公認会計士協会出版局)

『[私本]会計・監査業務戦後史』

著者の川北博先生は日本公認会計士協会の会長を務められた会計士です。1949年の我が国最初の公認会計士試験2次試験に合格され、公認会計士制度と会計監査制度の発展に大きく貢献されました。まさに会計・監査業務戦後史の証人です。

この書でとくに面白いのは公認会計士制度の黎明期の記述です。戦後の混乱期でもあり、現代では考えられない奇妙なことが多々起こります。一次試験の試験問題が盗難される、覚醒剤を打って試験に臨みぶっ倒れる者がいる、試験委員に嫌がらせの棺桶が送りつけられる……会計士試験が人生をかけた一大事であることは現在と変わりませんが、どこか落語や戯画のような滑稽さがあり、実に愉快です。

本書は、川北先生の師である太田哲三先生(日本初の監査法人である監査法人太田哲三事務所・現EY新日本有限責任監査法人の創設者)の自伝『近代会計側面誌:会計学の六十年』(中央経済社)を併せ読むことで、大正時代から現代に至るまで我が国の会計士の歩みを網羅的に知ることができます。

『側面誌』は1960年代の書であり、なかなか書店で手に入れることは難しいため今回は紹介から外しましたが、商学部がある大学図書館にはある可能性が高いので、アクセスできる方はぜひお読みください。

*編集部注:オススメ③の書籍は、現在出版社のサイトでは品切れとなっていますので、中古を入手されるか、図書館等でご覧いただければ幸いです。

【執筆者紹介】

兎耳山ルカ 

会計修士(専門職)・公認会計士・公認内部監査人(CIA)・公認情報システム監査人(CISA)・税理士
メタバースで会計の魅力を発信する会計Vtuber。会計、ファイナンス、ITシステム、リスク管理領域に専門性を持つ。
大学卒業後、銀行、会計大学院、監査法人を経て独立。現在は会計事務所代表及び事業会社取締役CFOを務める。
・X: @TomiyamaLuca

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