まさるはん
(会計事務所職員、45歳)
<受験情報>
・合格科目:財務諸表論(2023年、受験3回)、簿記論(2022年、受験2回)、税法3科目免除(2003年)
・学習スタイル:
財務諸表論:資格の大原(通学講座、2021年~2023年)・ネットスクール(通信講座、2023年)
簿記論:資格の大原(通学講座、2021年~2022年)
▶トップ画像は使用していた教材のタワー(本人提供)
税理士をめざしたきっかけ
「計量士」だった祖父の影響
県庁の技術職だった祖父。定年退職後、企業のはかりが適正に使用されているかどうかを検査する「計量士」という資格を持ち、関与先を定期的に訪問・指導をする仕事をしていました。
税理士と分野は違いますが、事務所を構え個人事業主として働く祖父と身近に接してきたことで、士業に興味を持ちました。
相続税の申告依頼と大学院進学
大学生の頃、その祖父が他界。父が相続税の申告を地元の税理士さんに依頼しました。その際のやりとりを見たことで、税理士という職業を知りました。
大学3年生の頃、就職活動の途中、「大学院進学による税理士試験免除」に関する書籍を読み、大学院進学を決意。そして、神戸商科大学大学院(現・兵庫県立大学)の経済学研究科に進学しました。
「所得税と在職老齢年金の減額による税負担の影響」を研究テーマとして修士論文を執筆し、税法の3科目免除の認定(当時)を受けました。
この時は、会計事務所には就職せず、会計ソフト会社(㈱TKC)のプログラマーとして新卒で就職をしました。
会計事務所への転職と所長の引退
プログラマーを4年経験し、ベンチャー企業での経理財務職を経た後、現在も在籍する公認会計士・税理士事務所に転職しました。当時、30代で未経験でしたが所長の指導のもと、一般企業の他、宗教法人や病院、幼稚園などの多様な業種を経験しました。周囲の期待をよそに、私の簿記論と財務諸表論の勉強ははかどらず、恥ずかしながら数年後には勉強をやめてしまいました。
それから10年の月日を経て、所長も齢70歳を超え、引退を意識されるようになりました、事務所に有資格者は他におらず、お付き合いのあった公認会計士にお声がけし、事務所の合併・継承を模索されました。しかし、方向性の違いにより事務所の継承が直前で破談となってしまいました。
お客さまに迷惑をかけず、事務所を存続していくには、「私が会計科目2科目に合格するのが最善だ」ということで、いよいよ真剣に受験と向き合うことを決意しました。
2年7ヵ月の軌跡
1回目(2021年)
実務の経験を過大に自己評価し、資格の大原 税理士講座 簿記論の1月開講・経験者コースから受験勉強を開始しました。当然、簿記の学習は実務とは異なります。受験経験者向けのコースのため進度も早く、学習のブランクもあり、日々の単元の個別問題を消化するのがやっとでした。
財務諸表論の通信講座も申込みましたが、こちらはほとんど学習できませんでした。学習や内容の難度が上がる答練期、ちょうどGWの頃にここで一度気持ちが切れてしまいました。
その後、答練が続きますが、成績は合格圏内とされる上位30%には届きません。出題範囲の個別問題と答練の解き直しをするのがやっとでした。
財表はほぼ手つかずのまま本試験を迎えます。結果は、惨敗でした。7ヵ月で初学から2科目を仕上げるのは私には無謀な挑戦でした。
2回目(2022年)
受験後、担当講師との面談を経て、今度は9月開講の簿記論初学者コース一本に絞ることにしました。この時の悔しい思いが学習の動機となったこと、不十分ながらも本試験まで学習を継続したことで、私に「歩留まり」が発生しました。
既に理解が十分な場合は、講義時間中でも問題集を黙々と解きました。また、個別問題集については、複数回解いたあと、担当講師と相談して、通常よりも少し先にテキストと問題集を出してもらいました。月末にある実力テストでは結果も良好で99点を2回とりました。年内成績は上位5%にも食い込みました。
この結果に気をよくして、1月開講の財務諸表論初学者コースを追加しました。計算については、重複個所も多く学習もスムーズに進みましたが、理論学習・暗記に苦戦します。授業のペースに暗記教材(要点チェックノート)の理論暗記が追い付きません。結果、財表の理論学習と暗記に時間と労力を取られることになりました
そして、突入する答練期。簿記論をメインとしながらも財表への対応を優先した結果、簿記論の成績は下降します。合格圏内とされる成績上位30%ぎりぎりの成績でした。財務諸表論は、暗記のペースがあがらず上位40%にも入れません。
毎週の答練準備・復習の中、1冊の本に出会います。それが、穂坂治宏先生の『つながる会計理論』(ネットスクール出版)です。たくさんの文章の丸暗記に苦戦していた私には、この本が助け船となりました。6月以降、本試験まで理論の丸暗記をやめて、この本を中心に理論の学習を進めることになります。
過去問や答練の解きなおしを繰り返す直前期に入り、ここでようやく自分の学習スタイルが確立してきました。平日は午前5時起床。7時まで2時間の学習。通勤や仕事の空き時間に理論の学習です。つながる会計理論の音読をスマートフォンで繰り返し聞いたりしました。
また、問題部分のアプリ「ノウン」も活用しました。帰宅後、午後9~11時まで2時間の学習。これで、平日最低4時間の学習時間を確保することができました。
2科目受験のため、基本学習は1日おきに科目を変更しました。朝に答練・過去問を解き、夜に間違いをノートにまとめます。2科目の場合、正直、4時間では足りないと思うこともありました。休日も基本的にはこのスタイルでした。プラス数時間といったところでした。
迎えた本試験。
簿記論は手ごたえあり。財表は理論が少し弱かった印象でした。自己採点では、簿記論が合格ボーダー+4点、財務諸表論は合格ボーダー△1点でした。
結果は、簿記論は合格。財務諸表論は53点で落ちました。
3回目(2023年)
結果が判明するまでは、通学はお休みし、財務諸表論の独学のみ続けました。『エッセンシャル財務会計』(中央経済社)の精読や『つながる会計理論』の基本部分の読書や書き写しの繰り返し、週1回の総合計算問題による学習の継続をしました。
試験の結果を受けて、大原の1月開講・経験者コースの通学受講を開始しました。また、財表の理論学習のためには、穂坂先生が講師をされているネットスクールの財務諸表論の上級コースを受講することにしました。計算は大原、理論はネットスクールのWスクールです。お金は余分にかかりましたが、計算と理論の良いとこ取りを狙いました。
平日1日4時間の学習を継続したことで、大原での模試の成績は上位20%に乗りました。しかし、大原の教材をつかわずに理論暗記を進めているため、理論の点数が伸びない時もありました。その時は上位30%を下回るときもありました。
目先の点数をあげるため、再び大原の理論暗記の教材を手に取る誘惑にかられましたが、昨年の受験経験からそこはぐっとこらえて、穂坂先生の教材で学習を継続しました。
さて、3回目の本試験、自己採点の結果、理論は29点、計算41点の70点で合格確実ラインに乗りました。合格発表まで不安な日もありましたが、会計2科目の合格を勝ち取ることができました。
受験生へのメッセージ
長々と受験体験を記載しましたが、皆さんに特にお伝えしたい点は以下の2点です。
- 勉強を続けるためのしっかりとした動機付け
- 学習習慣・スタイルの確立と定着
これらがしっかりしていれば合格は近いと思います。頑張ってください。
近年、財務諸表論の本試験の傾向に理論のべた書き丸暗記ではうまく対応できないと感じています。よく取れても25点/50点位ではないでしょうか。理論の中でも計算問題が出題されること、ベタ書きの丸暗記でうまく解答できないことを2回の本試験で実感しました。
丸暗記を推奨する学校の模試で点数が伸びないジレンマもありましたが、結果的には理論の丸暗記を捨てたことで6割近い得点がとれたと考えています。実際、合格できましたので、財務諸表論の理論学習で大量の文章の暗記に苦戦されている方は参考にしていただければと思います。
結局、税理士試験合格に40半ばまでかかってしまいましたが、十分な実務経験と豊かな人間関係と家族にも恵まれたため、後悔はありません。
これまでのご縁を大切に税理士として精進していきたいです。ありがとうございました。
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