わたしの独立開業日誌 #行政書士 黒田美千子


【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。

地方局キャスターからの転身

はじめまして。神戸の行政書士の黒田美千子と申します。

大学卒業後、地方テレビ局でキャスターとして活動していました。
その後、結婚、出産を機に退職し、一旦家庭に入りました。

キャリアの再スタートは、結婚披露宴の司会者としての活動でした。
ただ、結婚披露宴なので、土日中心です。
子どもたちと一緒に遊ぶ時間を確保するため、平日昼間の仕事を探すものの、パート労働ではなかなか自分が目指す収入を得ることができません。

そこで、宅建士、キャリアコンサルタント、行政書士等の資格を取得して今に至ります。
ここでは、私の資格取得と独立開業についてお話したいと思います。

プロフィール写真

中学受験に伴走しつつ、自らも勉強を開始!

結婚・出産を機に家庭に入ったものの、「自分で稼げる力をつけたい」という気持ちがありました。
そのために、資格を取りたいと考えました。

ちょうど、息子2人の中学受験がスタートする時期で、「お母さんも受験するね」と一緒に勉強を開始しました。
子供たちに勉強する習慣をつけるために、「勉強しなさい」と口うるさく言うより、母である私が一緒に勉強して背中を見せたほうが効果的なのでは…と思ったのです。

まずは、宅建士試験にチャレンジすることにしました。
初めての法律の学習に戸惑い、テキストを開きたくない日もありましたが、息子達に「一緒に勉強しよう」と誘われたりし、リビングで仲良く勉強することで、続けることができました。
息子達と勉強の苦しさ、楽しさを共有できたのは、かけがえのない思い出です。

結果、息子達はそれぞれ希望の中学に進学し、私は宅建士試験に合格することができました。

中だるみの息子達に喝! 母は勉強を続け、キャリアコンサルタントを取得

めでたく中高一貫校に入学した息子達は、青春を謳歌するあまり、勉強が疎かになる中だるみの時期もありました。

「大学受験を考えて勉強をしなさい」という言葉を吞み込んで、「母として、自らがさらに学ぶ背中を見せよう」と、今度はキャリアコンサルタント試験にチャレンジをすることにしました。

トイレにも風呂場にも暗記のペーパーを貼って必死に勉強する母の様子を見て、息子達は、「お母さんが勉強するならテレビを消すね」とテレビを消してくれました。
そして、「あっ、宿題があった」とか「明日の予習する」と自発的に机に向かってくれるようになりました。

母としては内心「しめしめ」でした。

結果、息子達は京都大学、大阪大学に合格し、私はキャリアコンサルタントの資格を無事に取得することが出来ました(国立大学は学費も安いので助かりました!)。

キャリアコンサルタントとして、仕事の幅が広がる

45歳を過ぎてのキャリアコンサルタント試験のための勉強は、想像以上に大変でした。

大変過ぎて子供の成績に一喜一憂する暇もなく、親子共に精神衛生上とても良かったと思います。

大変だった甲斐があり、新卒採用に関わったり、接遇や関係の研修講師として活動したり、仕事の幅がぐっと広がりました。

まさに、お金を出しても買えない「資格の価値」を実感しました。
資格も学歴も、「努力や知識を客観的に表現するもの」で、リスペクトされる職業人になるためのパスポートのように思えました。
資格があるからこそ通れる道、出来る仕事があるのです。

母、勉強に目覚め、「行政書士」に!

「知識や資格はお金だけを出しても絶対に買えない素晴らしい財産」
「弁護士や税理士などその道のプロに頼るにしても最低限の知識が無いと理解できずに損をする」
と、すっかり、資格の魅力にハマりました。

何より、どれほど高価な車やバッグよりも、勉強時間の長さや模試の成績で評価される受験の世界が好きになりました。
また、勉強を続けたときに急に理解が進む瞬間があり、それがとてつもなく快感でした。

「もっと勉強したい」「さらなる一生モノの資格が欲しい」と、次は行政書士にチャレンジすることにしました。キャリアコンサルタントとして女性の再就職セミナーなどに登壇する中、法的弱者に寄り添いたい、情報提供したいという思いもありました。

3回の不合格も経験しましたが、「不合格でも、再チャレンジもできるし身につけた知識が自分を助ける。絶対に無駄になることはない」と言い聞かせ、4回目で合格しました。

合格後、即開業

「合格しただけでは意味が無い」と思い、合格後はすぐに登録しました。社会貢献やマネタイズを考えると、スモールスタートでもすぐに活動を始めるべきだと思いました。

安く借りられるオフィスを探し、今までの研修講師業や採用業務、司会業で食いつなぎながら3年を目安に行政書士としての業務を増やしていくことにしました。

幸い、司会業や採用業務、研修講師を長く続けてきたことから、経営者やフリーランスの知人が多くいました。登録したことを伝えると、直後から補助金や契約書作成、会社の定款作成等の業務が舞い込んできました。

今は「資格さま! 資格のお陰、資格ありがとう!」と叫びたい気持ちです。
金額は公表できませんが、行政書士としての業務の報酬は大変、有難い金額です。
頑張って勉強したこと、そして専門職として研鑽を積んでいることの対価だと思っています。

おわりに

私は45歳を過ぎてから資格試験に本格的にチャレンジしました。

体力や記憶力は確かに若い頃と比較したら衰えています。しかしながら資格試験の択一問題は経験値による一般常識で解ける問題が一定割合あります。
そういった意味で年を重ねて有利な部分もあります。

行政書士は60歳を過ぎての独立開業する方も多いです。70歳、75歳まで働くのなら十分に元が取れるのではないでしょうか。これまでの人間関係や経験値をフルに生かせる、成熟した年齢の方に向いている資格だと思っています。

<プロフィール>
黒田・美千子(くろだ・みちこ)

行政書士黒田法務事務所代表
契約書や離婚協議書作成、遺言・相続などをメイン業務に活動。また、キャリアコンサルタントとして新卒採用に携わりながら、接遇や就職セミナーの研修講師としても登壇、婚礼司会でも活動中。
保有資格:特定行政書士/キャリアコンサルタント/宅建士/電話応対技能検定指導者級資格/コミュニケーション検定指導者資格/救急救命インストラクター/パワーハラスメント専門家養成講習修了/両立支援コーディネーター基礎講習修了 等

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