合格発表後の就職活動どうする? 税理士受験生のためのキャリア相談


【編集部より】
11月30日(木)に令和5年度税理士試験合格発表が行われました。例年、税理士業界では本試験の後と合格発表の後に採用活動が活発化します。最近では通年採用も増え、以前に比べると集中度合いは緩和されつつあるものの、それでも合格発表後の動きは受験生なら気になるところ。
そこで、受験生への情報発信も活発なアンパサンド税理士法人の山田典正先生(税理士)に、業界の動向やキャリアの考え方などについてインタビューを行いました!

interview:山田典正先生(アンパサンド税理士法人・税理士)

受験生のための法人・事務所選び

―税理士試験の合格発表後から就職説明会や採用活動が活発化するといわれます。まずは、受験生が情報収集する方法として、何をチェックしておくとよいでしょうか。

山田先生 一般的には、大手専門学校が開催する合同就職説明会や専門学校が作成する情報冊子が一番身近な情報源になると思います。それから、法人や事務所のウェブサイトですね。
最近だとSNSで興味のある税理士や会計事務所・税理士事務所を見つけて、その事務所のホームページにアクセスして情報をキャッチアップするケースもあります。

私が就職活動をしていた頃は、もう15年以上前になりますが、今よりも採用時期がより限られていました。採用シーズンは本試験後の8月と合格発表後の12月に集中していて、それ以外の時期は応募をしても、面接まで進むことは難しい時代でした。
私自身、本試験後に就活するかをかなり迷い、8月下旬に「やっぱり就職しよう」と思ったのですが、すでに募集を終了した事務所ばかりになってしまったので、合格発表後まで待つことにしました。

「次の就活シーズンには早めに動こう」と思い、興味のある法人のホームページをこまめにチェックしていると、事務所独自に開催している説明会の情報がアップされたので、一番目の説明会に申し込んで参加し、入社することができました。

今は当時に比べると事務所や法人の採用時期はさらに多様化しているので、だからこそ「早めに動く」のがいいだろうと思います。

また、採用シーズンに合わせて入社すると「同期ができやすい」という面もあります。最近は春の新卒採用をする法人も多いですが、本試験後の8月応募であれば9月入社、合格発表後の12月応募であれば1月入社が多いです。やはり、同期がいると、ちょっとした仕事の相談もしやすく、お互いに助け合えるので、心強いですよね。

山田先生は受験生時代にどういう事務所で働きたいと考えていましたか。

山田先生 私自身は、スタッフ50〜100人、200人くらいの規模がある事務所で働きたいと思っていたのと、経営コンサルにも興味があったのでその分野に強い所を探していました。

−個人事務所を念頭に置いていなかった理由は何かありますか。

山田先生 実は、母が税理士で個人事務所を運営していて、大学時代にアルバイトしていた経験もあり、どちらかというと、「折角だから規模があって組織化している規模の事務所で働きたい」と考えていました。

受験生の方も、もし「キャリアアップしたい、給与も実務の経験値も高めたい」と考えているのであれば、基本的には組織化している事務所や法人で経験を積むといいと思います。
というのも、そういった事務所は大抵の場合、業務の仕組み化や人材教育も含めたマネジメントが構築されていて、さらに社会人としての基礎となる一般的なマナーを含めたソフトスキルから学ぶことができるからです。
その上で、専門性を高めたい分野があれば、たとえばその分野に関する書籍を出している先生の事務所に入れば、より高度な経験を積めるでしょう。

実は専門性は後からでも学べます。最初はいわゆるハードスキルよりもソフトスキルがきちんと学べる環境を選ぶことを私はオススメします。

採用側が見るポイント・受験生が見るポイント

税理士受験生の場合、平均年齢が高いと一般的にいわれますが、採用側として応募者の年齢は気になりますか。

山田先生 正直、年齢は見ます。でもそれ以上に、「どんな経験していたか」を結構見ています。

あくまで一例ですが、例えば「飲食店や居酒屋で何年間かアルバイトしていました」という人は私にとってはポイントが高いです。というのも、飲食店などの仕事では、お客さんとのコミュニケーション能力、複数のオーダーを同時にスピーディーにこなすマルチタスク能力が求められます。
しかも、サービス業なので基本的には誰にでも笑顔で対応しなければいけません。これは仕事柄、当たり前のことかもしれませんが、すごく大変なことですよね。

税理士の仕事も多様なお客様を相手に対応をすることが求められますし、同じような要素があるので、飲食店などである程度仕事を続けた経験がある人だと、私の場合は興味をもって見ています。

もし税理士業界未経験の人でも、「他業界のアルバイト経験だから履歴書に書いても意味ないかな」と思わず、しっかりとアピールしたほうがいいんですね。

山田先生 そう思います。その経験を通して「何を学び、それをどう受け止めているか」はすごく大事です。税理士である私たちは法律を守る仕事なので、新しく採用したスタッフが入社した後に最低限のルールを守れる人でないと、事務所のマネジメントとしても機能しなくなってしまいます。そういった意味でも、過去にどんな経験をしてきたかは知りたいですね。

一方で、受験生自身も就活を通して法人を選ぶ側になりますが、たとえば就職説明会ではどういったポイントを見るとよいでしょうか。

山田先生 合同就職説明会に参加するメリットは、いろんな会計事務所や法人の話を直接聞くことができる点です。ウェブやパンフレットのような文字情報だけでは法人のカラーや違いはつかみにくく、入社してからミスマッチを感じる面もないわけではありません。

直接、「こういう仕事はどれくらいあるんですか」「どういう制度がありますか」などを聞いて、いろいろな事務所を見てみることをオススメします。

実は今度、私も「成長税理士法人 合同就職説明会」を2023年12月9日(土)に開催します。この説明会の面白いところは、各税理士法人の代表が一社ずつ、受験生向けにプレゼンをして、法人の特徴などを直接伝える時間を設けています。その後に、各法人のブースに分かれて個別に直接話を聞けるようにしているので、それぞれのカラーや違いをより感じていただけると思います。

このような説明会の個別ブースでお話しした受験生で印象に残る人もいますか。

山田先生 けっこう覚えていますし、後から直接連絡を取った人もいます。
なぜ私がいいなと思って後から連絡したかというと、ブースでお話をすると、大抵は、勤務場所や勤務時間、業務のことなど、ハード面に関する質問を受けることが多いのですが、その人は「今すぐに転職は考えていないのですが…」と前置きをしつつ、「事務所の考え方や雰囲気、スタンスに共感した」と仰ってくださったのです。

一般的な就活でも同じだと思いますが、会社の考え方や取り組みに興味を持ってくれる人は相性がよい場合が多いので印象にも残ります。

今すぐは考えていない人でも、「税理士業界にどんな法人があるか、経営者が何を考えているか」を知るためというくらいのスタンスで参加してもよさそうですね。

山田先生 それくらいの温度感の人にもぜひ参加していただきたいですね。そのほうが、これから受験勉強して過ごすにしても、その間にキャッチアップする情報の解像度も高まると思います。

税理士資格を取ることも大事ですが、それがゴールではありません。「勉強したことを活かして実務の現場で活躍すること」がゴールであり、さらにいえばその先にもゴールはまだまだあります。
自分が本当に求めている仕事やそれが実現できる会計事務所はどこなのかを考えるきっかけとして、ぜひより多くの事務所や法人の話を聞いていただきたいです。

自分の個性を活かしてオリジナルの税理士像を作り上げよう

どこの業界も人手不足といわれますが、税理士業界における受験生へのニーズはどのように捉えていらっしゃいますか。

山田先生 税理士試験自体がとてもハードなものなので、簿・財の科目合格を乗り越えて、税法を少なくとも一科目合格していると大きな関門をひとまず越えたと評価されます。合格のような「やり切る力」があれば、この業界は向いているはずです。

正直、仕事も大変なことが多いので、軽い気持ちでは挑戦できませんが、お客さんから頼られる意義のある仕事なので、かなり多くのことを学べます。もし仮に他業界に移ったとしても、重宝される高いスキルが身につけられるのではないでしょうか。

税理士登録者数や年齢などの数字で見ると、年配の税理士もまだまだ多いと言われますが、一方で、「よい税理士さんが見つからない」という人もすごく多く、感覚的には税理士業界は人が足りていない状況です。

大手税理士法人でも「こういう仕事は受けない」と明言するところも増えてきていて、逆に言うと、空白のジャンルやパイがどんどん出てきています。

税理士法人の多くの経営者が今共通して言っていることが、「お客さんよりもスタッフを採るほうが圧倒的に難しい」ということです。これは人材教育まで含めた話で、私の感覚的には10倍以上難しいと思っています。

せっかく入社したスタッフがそのまま働き続けてくれるような環境を作っていかなければいけないとすると、事務所としても仕事は選んでいく必要があると捉えています。

過去の話ですが、仕事を選ばずになんでも受けて、結果としてスタッフが大量に辞めていくという事務所も少なくないです。ある意味でまだまだ未熟な業界なので、だからこそ、可能性が大きいと思っています。

最後に税理士受験生にメッセージをいただけますか。

山田先生 税理士の仕事は、税という個人・法人問わず皆が関わるもので、しかも毎年税制改正がされて高度な知識のアップデートが求められる中で、「自分という個性をどう活かすか」が重要な仕事です。

例えば、アスリート経験のある税理士なら、アスリートのお客さんからの共感が得られやすく、自分の個性がそのまま武器になるでしょう。そのように、自分の個性とキャリアの掛け算がしやすい資格だと思います。

また、税理士には仕事好きが多く、仕事がそのままライフワークになるような資格なのではないかと常々感じています。

私が税理士を目指すきっかけになったのは、税理士である母の話を聞いたときに、顧問先の経営に関する相談はもちろん、個人のお金、家、子ども、家族、老後、相続というあらゆるライフステージにおける相談を受け、人の人生にも、自分の人生にも深く関わるとてもやりがいのある仕事だと思ったからです。

ぜひ、皆さんにも「自分ならではの税理士像」を作り上げていただきたいです。

ありがとうございました!

<山田典正先生からのお知らせ>
「成長税理士法人 合同就職説明会」開催!
令和5年12月9日 (土)、税理士法人への就職・転職希望者のためのイベント『成長税理士法人 合同就職説明会』を開催します。
本イベントではベンチャーマインドの強い11社の税理士法人が一堂に会し、全法人の代表が登壇したプレゼンや質問コーナー、個別ブース形式で各社の採用担当者から直接リアルな話を聞くことができます。
上記インタビュー記事中でも触れたように「今すぐは考えていないけど、業界のことを知りたい」、「どんな法人があるか、成長する税理士法人の経営者が何を考えているか知りたい」という方こそ、ぜひお越しください!
◆詳細・申込はコチラ

<お話を聞いた人>

山田 典正(やまだ・のりまさ)先生

アンパサンド税理士法人代表
税理士

法政大学を卒業後、都内大手税理士法人での経験を経て、平成27年1月に独立開業。現在はアンパサンド税理士法人の代表を務める。中小同族会社から大手上場企業まで幅広いクライアントに対して、税務・経営周りの相談対応はもちろん、事業計画の策定、補助金・融資の支援など幅広いサービスを提供。
経営心理士・性格診断アドバイザーと言った資格を持ち、心理面からも相談者様に寄り添って、ヒアリングから目的・課題を明確にしたうえで、目的を達成・課題を解決するために最適な手段を提案。


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