わたしの独立開業日誌 #行政書士・國立大助


【編集部から】
士業の魅力は、独立開業できることにもあります。「将来は独立」を目標に合格を目指している方も多いのではないでしょうか。
そこで、「わたしの独立開業日誌」では、独立した先輩方に事務所開業にまつわるエピソードをリレー形式でお話しいただきます(木曜日の隔週連載)。
登場していただくのは、税理士・会計士をはじめ、業務で連携することの多い士業として司法書士や社労士などの実務家も予定しています。
将来の働き方を考えるヒントがきっと見つかるはずです。

不動産を軸に、中小企業を支援する行政書士として

初めまして。東京都港区で令和元年5月に開業した行政書士の國立大助と申します。

行政書士ではありますが、再生ステージにおける中小企業や経営者に、不動産を起点とした財務支援や法務支援を行っています。「中小企業の身近な、患者目線の医師でありたい」という志のもと、日々活動しています。

取扱業務の性質上、税理士とタッグを組むことも多いです。
仕事に対する取り組み方から実務の面まで、税理士のクライアントに寄り添う姿勢には、隣接士業としてとても刺激を受けています。

少子高齢化・AI化が進み、中小・零細経営環境を取り巻く環境がめまぐるしく変わっています。
クライアントに寄り添う士業が、今ほど求められている時代はないのではないかと思います。

私の開業体験記が、これから開業される皆様のお役に立つことがあれば幸いです。

著者近影

「もっとスムーズに仕事を進めたい」、行政書士取得を決意

行政書士資格取得前は、宅地建物取引士として、「不動産を軸とした経営コンサルタント」をしていました。
例えば、借入が過大な状態にある中小企業に対し、不動産を売却して借入金の元本を減らしたりすることをすすめるなどのコンサルティングをしていたのですが、これが色々とスムーズに行きません。

お客様からは、「なぜ宅建士が法律や財務の説明?」と不思議がられます。
また、お客様の顧問税理士や弁護士からも「不動産屋からの再生スキームの提案なんて…」と色眼鏡をかけて見られます。
結果、とりあってもらえないことも少なくありませんでした。

こうしたボトルネックは、最終的には各関係者から信頼を得ることで乗り越えてきましたが、「これでは効率がよくない」と感じました。
そもそも、支援したい再生ステージの中小・零細企業には、不動産価値以上の担保権が設定され不良債権化している保有物件が多いです。そういった物件は、既に通常の不動産に比べ売却が困難な状態です。
各関係者からの信頼を得るに至るまでの時間がもったいないですし、機会損失が大きいのです。

そこで、法的な検討を行うにしても、また債権者一覧表や金融機関への上申書、経営改善計画書といった各種書面の作成業務を行うにも、非常に相性の良い資格である行政書士を取得することを決意しました。

資格取得でクライアントや関係者の理解が得やすく!

行政書士資格を取得すると、ぐっとクライアントや関係者の理解が得やすくなりました。同じ説明でも、対応が違います。

「物件の売却代金は全て返済に充当されて手元に殆ど入金が無いのに、何故、売る必要があるのか」を所有者に理解してもらうのも楽になりました。さらに、売却実務にあっては「債権者との関係で詐害行為に当たらないのか」等を検討し、また場合によっては「リースバックスキームを組む」必要があるのですが、これらの説明も、「法律家である行政書士の説明」として、ようやく聞き耳を持ってもらえるようになったのです。

資格は、「信用力」というメリットが何より大きいことを実感しました。

許認可などの依頼も来るようになり、悩む

ただ、行政書士を取得すると、クライアントの要望範囲が広がりました。許認可申請や、法人設立に関する業務、M&Aの補助業務、遺言業務など多岐に渡る依頼が入るようになったのです。

事務所経営の視点から見れば、客単価UP・売上拡大のチャンスです。
当初はいろいろ引き受けていました。

しかし、ある日、「元々の本業である不動産を起点とした中小企業の財務支援・法務支援にあてるべき時間と頭の余力が少なくなっている」と気付きました。
「本業も、そして新たに始めた業務も、中途半端になってはいけない」と反省し、「冷静に考えて今の自分のキャパシティでは全ては出来ない。専門である不動産関連の業務や中小企業支援関連の業務以外は、受任しないようにしよう」と決意しました。

このように、受任の判断基準を明確にしてからは、闇雲に依頼を受けていた時よりも、クライアントに対し専門的な知見を提供できるようになりました。

「信用の上に胡坐をかくな」という戒めの言葉は、頭ではわかっているつもりでした。
闇雲に依頼を受けていた時の自分は、「各業務において専門家になる!」というほどの気概も無く、まさに自らの売上の為だけに受任するという、胡坐をかいた状態だったと思います。
幸いにも受任した業務はいずれも順調にこなせましたが、そもそも、この「こなす」という考え自体が中途半端な姿勢であり、いけない考えだったと思います。

士業は「志業」

士業の仕事の本質的な価値は「処理能力」だけではなく、「企画・提案」にこそあると考えています。

資格の取得後も、自らの専門分野を高め、企画や提案の源泉である「知識と経験」のアップデートが必要です。
資格取得を目指すこととなった動機を大事にし、自らが理想とする士業の在り方を忘れることなくクライアントに向き合うこと=「志」を保つこと、が何より重要です。

まさに士業は「志業」です。
資格取得に邁進していたときや、開業したときの、熱い想いを大切にし、クライアントと向き合っていきたいと考えています。

【プロフィール】
くにたて・だいすけ

1974年生まれ。学習院大学法学部卒後、㈱バーミヤン(すかいらーくグループ)に入社。現場店長職を歴任後、地区長に就任し現場職の中で各種オペレーション開発の発案にも携わった。その後、本部企画室に配属され、主に経営企画を担当し、800店規模の予算立案や販促企画を担当した。2003年にバーミヤンを退社し、株式会社湘南プランニングにて専務取締役に就任。再生支援・廃業支援を通して中小企業の再生に取組み、不動産を軸とした財務コンサルや組織論の運用による経営改善を中心に活動している。こうした中、より専門性を高めるために行政書士資格を取得しプロテクト行政書士事務所を開設。不動産法務と中小企業支援法務へと活動範囲を広げている。

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