山本庸介(税理士)
【編集部より】
税理士講座の多くが9月から本格開講し、税理士受験生は新年度を迎えました。「どうしたら短期合格できるのか」は誰もが気になることのはず。実際に短期合格者はどのような心構えや姿勢で受験勉強に臨んでいたのでしょうか。
そこで、1年9か月で官報合格した山本庸介先生(税理士)にその秘訣を忖度なしで伝授していただきます。
きっと税理士受験に対する本気度がグンと上がり、これからの勉強に対する取り組み方にも良い影響を与えるはずです!
はじめに―閲覧注意!
福井県大野市で税理士事務所を経営している山本庸介と申します。以前、会計人コースwebに「わたしの独立開業日誌」を寄稿しました。その後に、税理士受験の勉強法について、編集部から執筆依頼が来ました。
当初はお断りしようと思っていました。私には特殊な勉強法とか試験攻略法とかそういう類のものがあるわけではありません。ただがむしゃらにやっただけなのです。
読者の皆さんに伝えられることなんてないと考えていました。しかし、一つアイディアが思い浮かびました。
それは、早期合格した人の受験に対する心構えや精神面を伝えること。
もともと、「税理士受験生は保守的な人が多いな、もっとチャレンジすればいいのに」と思っていました。精神面であれば早く合格する方法をお伝えできるかもしれません。
私は約1年9か月で税理士試験5科目(簿・財・消・法・相)に合格しました。その内5か月は無職で受験専念でした。それ以外は働きながら勉強です。1年目に4科目(簿・財・消・相)を受験し、3科目合格、相続税法に不合格。2年目に2科目(法・相)合格しています。
なお、弊所HPにコラム「税理士受験記」を掲載しているのでよければご覧ください。
私の受験歴を知ると、周りからはバケモノ扱いされます(笑)。バケモノかどうかは本人にはわかりませんが、ここからはバケモノと呼ばれた男の「最速で合格するためのマインド」をお伝えします。
過激なことを書きますので閲覧注意です。人によっては気分を害すると思います。
特に、下記に該当するような方はさっとこの画面を閉じたほうがよいでしょう。
・できない理由が次から次へと口から出てくる人
・勉強時間を最低でも年間1,000時間確保できそうにない人
・仕事、家族、趣味など税理士試験以外に優先することが数多くある人
また、注意事項をお伝えします。
・この記事は税理士試験を2年や3年で早期合格したい人向けの記事です。
・10年、20年かかって税理士試験に合格した方を卑下する意図はありません。
・5科目合格、大学院免除、合格科目の内訳など、税理士のなりかたは何でもいいと思っています。税理士になってからが本番です。
・勉強するということを学問的に学んだことはなく、自身の経験則から感じていることを書いています。
大丈夫ですか? 引き返すなら今のうちですよ。
それでは、覚悟が決まった人は続きをご覧ください。
言い訳するな!
税理士になると心に決めて、試験勉強を始める。受験生は同じスタートラインに立ってよーいドンで始めるわけではありません。実質、税理士試験は相対評価なので、他の受験生との競争です。
人間みな平等ではありません。地頭がいい、物覚えが悪い、数字が苦手、それぞれ人には個性があります。親の遺伝の影響もあるでしょう。家庭の経済状況にも左右されます。
そんなこと言っていても、合格に必要な知識は身につきません。税理士になると覚悟を決めたのであれば、現状を受け入れて持てる武器で戦う必要があります。
私の場合、税理士試験を受ける約8年前に日商簿記1級を取得しています。時間は経過していたものの、簿記論、財務諸表論を受験する上では、だいぶ有利だったと思います。
センター試験は数学2科目、物理、化学全て100点満点でした。計算問題は得意でしたし、解くスピードも速かったです。その反面、国語は不得意で暗記はめちゃめちゃ嫌いですし、苦手です。
税理士試験は35歳からスタートしました。年齢的にも単純な暗記力は落ちています。自分の特性を理解した上で、私は計算問題で差をつける、理論は一言一句暗記できなくても大枠を捉えるということを目指しました。
○○だからできない、〇〇さんとは条件が違う。言い訳し出したらきりがありません。大抵の言い訳は「定数」です、「所与の条件」です、「管理不能費」です。自分の力では変更できません。泣いたって喚いたって変わりません。できない理由を探す時間があったら、できる方法を考えましょう。
「でも…」、「だって…」が口癖になっている人は要注意。言いたくなるのをぐっと飲みこんで、プラスの表現を考えてみましょう。プラスの表現が出なかったとしても、ぐっと言い訳を我慢してみてはいかがでしょうか。
勉強する時間を確保せよ!
2年や3年で合格するために最も大切なこと、それは「勉強時間をいかに確保するか」です。当たり前だと思いますよね。当たり前なのです。
近道があるとか抜け道があるとか思っていないで、当たり前のことを当たり前にやるのです。
合格レベルに達するには、「勉強時間」×「時間あたりの効率性」をいかに高いレベルにもっていくかです。「効率性」のところばかり気になって受験テクニックの情報収集する人をみかけますが、大概の場合、勉強時間の絶対量が足りていません。
早く合格したいなら複数科目受験は当たり前ですし、少なくとも1,000時間ぐらいは確保したいところ。1,000時間は平均すると週20時間ぐらいです。平日2時間、休日5時間勉強すればクリアできます。
移動時間、休憩時間、余暇時間、睡眠時間を見直せば、よほどのブラック労働でない限り年間1,000時間は捻出できると思います。勉強時間は1,000時間と言わず、あればあるだけいいです。
私の場合は、勤務先から徒歩3分ぐらいところにアパートを借りました。元の自宅からだと片道1時間ぐらいかかります。家賃4万円と交換で1日2時間の勉強可能時間を作りました。
アパートには布団、机、PC以外に何も置きませんでした。テレビも冷蔵庫も洗濯機もありません。食事は外食かコンビニです。洗濯はコインランドリーで、その時間は勉強です。
巷によくある税理士事務所に勤務していましたので残業もかなりありました。それでも週50時間を目標に勉強時間を確保しようと行動していました。
それぞれの状況によるでしょうが、勉強時間の確保を最優先で考えて、自分が置かれた状況でどんな方法がとれるか考えてください。私の中での最低ラインは、働きながらだと年間1,000時間、専念できる人は4,000時間です。
(後編へつづく)
<執筆者紹介>
山本庸介(やまもと・ようすけ)
税理士法人ウィズ総合事務所 代表税理士
税理士、行政書士、米国公認会計士(Guam)、薬剤師
大阪大学薬学部同大学院卒業、慶應義塾大学経済学部(通信教育課程)卒業。国内外大手製薬メーカーで10年勤務した後に35歳で地元福井県にUターン。2年弱で税理士試験5科目合格(簿・財・法・相・消)。年間売上1,000万円以下から数百億円規模まで幅広い顧問先を担当。2021年7月人口3万人の大野市で山本総合会計事務所を開所。開業1年強でクライアント100社、開業2年でグループ売上1億円越え。2022年マネーフォワードクラウドアワードを北陸地域で初めて受賞。2023年9月税理士法人ウィズ総合事務所を設立。
税理士法人ウィズ総合事務所HP
Xアカウント(@wizyamamoto)
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