加茂川悠介(税理士・TAC講師)
【編集部より】
8月に行われる税理士試験に向けて、模試や答練が本格化してきました。専門学校を利用されている方はカリキュラムに組み込まれていることが多いようですが、独学の場合は、模試や答練だけでも受けたほうがよいのでしょうか。
そこで、TAC講師の加茂川先生(税理士)に、模試・答練の活用法を伺いました。限られた時間で最大限の効果を得られるように、自分にとってよりよい方法を選ぶヒントにしてください。
Q そもそも、答練や模試は受けた方がよいのでしょうか?
もちろん、受けたほうがよいと思います。
独学でかなりのレベルまで財務諸表論の知識を仕上げている方もいると思いますが、覚えた理論を「限られた時間内にしっかり書けるか」、「その書いた理論が採点者に伝わるか」、「理論問題と計算問題の時間配分は大丈夫か」などを最後に確認するためには、答練や模試は大変効果的です。
また、私のクラスの受講生を見ている限り、成績上位者であればあるほど、「次回の答練や模試でもっと点数を取ってやろう」、「次回は上位10%に入ってやろう」と意気込み、答練等を受ける前にはしっかりと準備をしてきています。
このような積極的な「準備→答練等→確認(見直し)→準備」のサイクルこそが、合格への近道だと思います。
Q 本試験では出題範囲は全くわからないので、答練や模試も出題範囲を見ないで勉強したほうがよいですか?
出題範囲を大いに利用して、答練や模試を受けたほうがよいでしょう。
この直前期においては、1点でも多く取れるように皆さん努力しています。ですからご自身も、出題範囲を利用して1点でも多く得点し、成績上位を狙っていただきたいと思います。
1点の差で順位も大きく異なってきます。当然のことながら、本試験では1点で不合格ということもあります。
練習(答練等)の段階から、「1点」にこだわって勉強したほうがよいでしょう。
Q 答練や模試を受ける前は、どのような勉強をすればよいですか?
先ほども申し上げたように、出題範囲が与えられているのであれば大いに利用して、1点でも多く取れるように準備をしましょう。
計算については、できれば本試験で出題されるような、解答時間80分程度の総合問題を1日1題解くとよいですね。仕事等で難しい場合は、平日は個別問題を何問か解いて、まとまった時間が取れる週末に、総合問題を積極的に解くように心掛けてください。
理論については、出題範囲を大いに利用して、次回の出題範囲を毎日音読するとよいかもしれません。これによって、理論に「慣れる」ことができるでしょう。また、まとまった時間が取れるときには、理論テキスト等を開いて、解説ページなどもざっと目を通しましょう。
目を通していると、少なからず頭の中に残るので、選択肢の問題や難しい論述問題の時に効果的です。私はこれを「覚える」作業と呼んでおり、本試験直前となった今は、毎日の「慣れる」作業とまとまった時間が取れるときに行う「覚える」作業の両方が合格にとって不可欠だと考えています。
Q 答練や模試を受けた後、どのように勉強すればよいですか?
これも計算と理論で少し異なります。
計算は例年、同じような問題(総合問題)が出題されているので、何度も何度も解き直しをしましょう。繰り返し解き直すことで、自分なりの解答方法が身につきますし、解答スピードや計算の正確性も徐々に増してくると思います。
可能であれば、間違えた箇所を解答・解説を見て終わりにするのではなく、計算テキストで該当箇所を確認したほうがよいですね! 間違えたということは、その箇所の周辺知識があやふやになっている可能性が高いです。計算テキストを開いて、「確かにここに書いてあるな」、「どうしたら次は間違えないかな」と自己分析してみてください。
また、受講生には、計算テキストで確認するたびに該当箇所に「日付」を書くことをおすすめしています。そうすると、「日付」がたくさん書かれる箇所は、自分にとって苦手論点だと自ずとわかるからです。
一方、理論については、間違えたところを理論テキストに書き込んで、理論テキストを見返したとき(慣れる作業及び覚える作業)に自分が間違えたところが確認できるようにしておくと効果的です。
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以上のことを心がけて、合格へと突き進んでもらいたいと思います。私が講師を務めるTACでは例年、本試験後に解答・解説会や個別学習相談会を開催しているので、もしよろしければ、そのような機会で本試験の感想を直接、聞かせていただければ幸いです。
体調管理に留意して、頑張ってください!!
【執筆者紹介】
加茂川悠介(かもがわ・ゆうすけ)
税理士、CFP®。中央大学法学部、早稲田大学大学院法学研究科修了後、大手専門学校で教鞭をとる。その後、立命館大学大学院法学研究科で税法を学び、会計事務所勤務や河合塾ライセンススクール講師を経て、財務捜査官採用試験に合格。宮城県警退職後、資格の学校TAC税理士講座で講義を行う。現在、TACのほか芦屋大学や大阪産業大学、近畿大学等でも講義を行い、日々、わかりやすい講義に向けて自己研鑽している。
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